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ご本人様とは全く関係ありません
3話目。いむくん回。今回は少し短めです。
「ないちゃん見て見て!」
クリスマス当日。
いむは、はしゃぎながら、
イルミネーションに照らされた街を
駆け抜けていく。
「クリスマスっていいよね!
サンタさんに、プレゼントに、ケーキ!
僕の好きなものしかないんだもん!」
振り返って笑うその笑顔は、
無邪気で、屈託がなくて。
まるで子供みたいだった。
ふと、いむの足が止まった。
「りうちゃんも、
いたらよかったのに……」
寂しそうに、それでも笑って言うから、
俺は、そうだね、としか返せなかった。
「去年のクリスマス、
みんなでプレゼント交換したよね!」
イルミネーションによって輝いている
クリスマスツリーを眺めながら、
いむが楽しそうに話し始める。
「ないちゃんは……腕時計、だったっけ?
それで、香水もらってたよね!
僕は、スノードームとこれ!」
そう言って、
水色のブレスレットを指差して
にこやかに笑う。
その顔を、
俺は正面から直接見ることができなかった。
「どうしたの?」
うつむいていた俺に気づいたのか、
いむは心配そうに声をかけた。
「いや……、確かに去年クリスマスは
3人で過ごしたと思うけど……
プレゼント交換なんて、したっけ……?」
いむの言っていた香水も
どこにあるかもわからない。
そう告げると
「部屋の引き出しの中入れてなかった?」
とあっさり言われた。
それに、
「……そのブレスレットさ、
なんで紫のワンポイントが付いてるの?」
俺たち3人のなかに
誰も紫がイメージな人いない。
そう続けると、いむは一瞬言葉を失った。
「確かに……」
さっきまで楽しそうだった表情が、
今は何とも言えない表情で固まった。
りうらの時は、
夢に異変が起きてから、
現実のりうらにも異変が起きた。
だから、少し油断していた。
今回はもっと早い――
そんな嫌な予感が、
頭の奥から離れなかった。
家に帰り、いむが言っていた場所を探す。
「……あった」
どうして、今まで気づかなかったのだろう。
自分の部屋なのに。
香水を手首に一吹きして、
そっとなじませる。
ふわりと立ちのぼる香りは
シャボン玉のように淡く、
どこか懐かしかった。
「……これ、夢のなかと一緒だ」
口に出した瞬間、
懐かしく感じた理由が
ストンと腑に落ちた。
そうだ。
あの場所――
大きな月と桜の木の下。
いつも名前を呼んでいた誰か。
そのそばに、この匂いがあった。
思い出そうとしたわけじゃない。
香りが記憶を引きずり出してくる。
とろん、と
まぶたが急に重くなった。
まぶたの裏には、
あの淡い光が静かに広がっている。
やばい、崩れ落ちる――
そう思った時には、
足元の感覚が、
音もなく抜け落ちていく。
気づけば俺は、
抗う間もなく、
夢の世界へ引き戻されていた。
次に目を開けると、
大きな月と桜。
理由はわからない。
けれど、
〝帰ってきた〟
そんな感覚がした。
「ないこ」
声をした方を見ると
そこにいる誰かが
今夜はいつもより近くにいた。
そして、その奥には
いむと
見覚えのないもう1人が並び
いむの手に持ったスノードームを
一緒に覗き込んでいた。
けれど、その光景が長くは続かないことを
りうらのこともあって、
俺はもう知っていた。
つまり、
〝いむもいなくなってしまう〟
ということだ。
そう思って手を伸ばしても
指先は空を切るだけ。
「……なんで……」
気づけば、
ぽろぽろと涙がこぼれていた。
「泣かないで、ないちゃん」
顔を上げると奥にいたはずのいむが
いつの間にか目の前にいた。
「僕、思い出したんだ。大事なこと。
きっと、また会えるから。
……逆に会えなかったから怒るからね!?」
だから、ないちゃんは今を生きて。
絶対、約束だよ?
いむはそう言って
優しく笑う。
そして、隣にいた誰かの手をとった。
2人の手首には
水色と紫のブレスレット。
顔を見合わせ、嬉しそうに笑ったかと思うと
また月明かりに
2人の輪郭は静かに溶け込んでいった。
夢から覚め、
俺は、何もなくなった自分の手を見る。
りうらは、少しずつ違和感を覚えていった。
けれど、いむは、本当に突然だった。
いむまで消えてしまったという事実に
心が、どうしても追いつかない。
りうらも、いむも、
たしかにそこにいたはずなのに。
なんで、2人そろって消えてしまったんだ。
目の前で2人が消えていくのを
見たのにも関わらず、
それでもなお、信じきれない自分が
胸の奥にのこっていた。
いむに連絡を取ろう。
その考えが、何度も頭をよぎった。
けれど。
もし、つながらなかったら。
その瞬間、
いむはもうこの世界にいないのだと
その現実を認めなければならなくなる。
その未来が、あまりにも鮮明に
目に浮かんでしまって、
俺は、スマホに伸ばしていたその手を
そっと引っ込めた。
これからどうしよう。
そう考えたところで、
時間は進んでいく。
たとえ心が追いついていなかったとしても
大学に、行かなければならない。
決められた手順をなぞるように
席について、ふと思う。
この席も前までは3人で
座っていたはずなのに。
何気なく視線を動かした時に、
いむがいつも座っている席の上に、
何か置かれていることに気づいた。
「スノードーム……?」
そのスノードームは、
いむが夢のなかで持っていたものと
よく似ている気がした。
触れてもないのに、
中の雪は、逆回転している。
持ち上げた瞬間、台座の裏に
付箋が貼っていることに気づいた。
〝またね!〟
これは……
「……いむの字だ……」
『僕はいなくならないよ』
あの言葉通り、
いむは姿を消しても、
確かに、近くにいる。
そう思えたんだ。
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