玲央はそれから数日間、ゼノの研究に積極的に関わった。最初はただの観察だったが、次第に自身の音感を活かして、実験の手助けをするようになった。
ある日の研究室
ゼノ「玲央、君の耳は実に興味深い。普通の人間には聴き取れない音の違いを即座に判断し、適切な調整ができる。」
ゼノは珍しく感心したような表情を見せた。
玲央「まあ、ノってきたらこっちのもんだからねぇ。」
助手たちが驚いた顔をする。玲央の調整によって、ゼノの実験は以前よりも効率的に進んでいたのだ。
しかし、玲央には別の目的があった。ゼノの研究を深く知ることで、ここから脱出するための手段を探ること。
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脱出のための情報収集
玲央はゼノの研究を手伝う傍ら、アメリカの基地の構造や設備を密かに探っていた。
ある夜、玲央は研究室の資料庫に忍び込んだ。
(……ゼノたちが持ってる技術の詳細を知る必要があるねぇ。)
机の上には、ゼノがまとめた設計図がいくつか置かれていた。
玲央がざっと目を通すと、その中に”通信設備”に関する資料があった。
(これだねぇ……千空たちと連絡を取れるかもしれない。)
玲央は慎重に資料を戻し、何食わぬ顔で研究室を出た。
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ゼノの信頼を得るための賭け
翌日、ゼノの実験で問題が発生した。
振動を利用した実験装置が思うように動かず、データが不安定になっていた。
助手「周波数の調整が難しく、安定しません。」
ゼノが腕を組んで考え込む。
玲央は装置に近づき、耳を澄ませた。
(……音の”流れ”が悪いねぇ。)
玲央は機材のダイヤルを調整しながら、リズムを刻むように細かく周波数を変えていく。
すると、装置の振動が安定し、実験が成功した。
ゼノ「……ふむ、やはり君の感覚は天才的だな。」
ゼノは満足そうに微笑んだ。
ゼノ「玲央、君はこれからも私の研究を手伝うといい。」
玲央は軽く肩をすくめた。
玲央「まあ、悪くないねぇ。」
玲央の目は鋭く光っていた。
(……これで、ゼノの信頼は得た。あとはどうやって千空たちと合流するか、だねぇ。)
玲央の脱出計画が、ついに動き出そうとしていた——。
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