テラーノベル
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珠李
176
HARUKA
2,207
【其の三:黄昏(クレプスコ)の歪み】そんな下っ端たちの横を、コツ、コツ、と鋭い軍靴の音を立てて、一人の少年兵が通り過ぎていく。クレプスコ二等准尉。若くして天才的な魔導剣技を持ち、軍の上層部からも「将来の将軍候補」と期待されている、きっちりとした軍服を着こなす優等生だ。しかし、彼の視線は、レノヴォたちが先ほどまでいたクロノの執務室のドアに、狂おしいほど釘付けになっていた。その青い瞳にあるのは、純粋すぎて歪みきった、強烈な「憧れ」。(クロノ様……。あなたこそが、この世界で唯一絶対の正義、僕の神だ。いつか、僕があなたの隣に立つにふさわしい最強の兵士になってみせる……!)クレプスコは拳を強く握りしめ、胸の高鳴りを抑えようとした。だが、その瞬間、彼の脳裏の、最も暗い底から、ドロリとした冷酷な「声」が響き渡った。『――ククク、相変わらず吐き気のする綺麗な憧れだなぁ、クレプスコ。神だと? 笑わせるな。あの男は、俺が引きずり下ろして殺す獲物だ。お前のような弱虫の精神(からだ)では、いつまで経っても届かないぞ』(黙れ……! 出てくるな、オスクロ……!)クレプスコは頭を激しく抑え、激痛に耐えるように顔を歪めた。彼の内側には、もう一つの人格――己の命(寿命)を燃料に、禁忌の闇の力を操る最強最悪の裏人格「暗闇(オスクロ)」が潜んでいる。かつて、軍の合同演習の際、オスクロは暴走し、絶対最強のクロノを「あと一歩」というところまで追い詰めたという、驚愕の過去を持っていた。もちろん、それでもクロノには勝てなかったのだが、オスクロにとってはそれが「人生最大の執着」となり、クロノを殺して自分が最強になることだけを求めて、クレプスコの命の灯火を内側から蝕み続けているのだ。「昼」から「夜」へと移り変わる時間、黄昏(クレプスコ)。彼がどれほど光を望もうとも、夕暮れが深まる時、世界は最も深い闇(オスクロ)に支配される。
コメント
1件
うわ……第3話、重い……!! クレプスコのクロノ様への崇拝が完璧で綺麗すぎる分、裏人格オスクロのドロっとした執着がめっちゃ際立ってた。同じ身体で「憧れ」と「殺意」が同居してるの、熱いし苦しい……💦 「黄昏」と「暗闇」の言葉遊びも効いてるし、人格交代の瞬間がちゃんとビジュアルで浮かんだよ。 次、オスクロが出るタイミングがいつか、もう気になって仕方ない…!!🌙