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最初は、ネタとして確立した「二人の掛け合い」を羨ましく感じていたことがきっかけだったと思う。アイドルのカップリングなんて、一番分かりやすいファンサだし、そのポジションを二人に取られたことに、「してやられた」感が強かった。
それがいつからか、羨ましさから嫉妬へと感情が変わったのは、メンバーで過ごす時間が増えていく中で二人の掛け合いが決してフリではないことに気がついた時からだった。
メンバーの誰も気がついていない。
おそらく二人とも認識していない。
自分だけが知ってしまった真実。
「まーた可愛いことしてるわ、まじやめろって仁人〜」
「してねーわ!もぉ、まじでやだ、この人」
いつものようにYoutubeの撮影は進んでいく。さのじんを期待しているファンに向かって、思う存分ネタを提供する二人。需要があるのも知っているし、仕事として受け入れなくてはいけないのも分かってはいるが、俺は何とかその二人だけの空気を壊そうと試みる。
「ほんま、仁ちゃん可愛すぎるわぁ、俺にだったらそんなんいくらやってもええんやで?」
「黙れよ、お前も!」
よし。
俺は、二人の視線が自分に向いたことで満足する。
勇ちゃんのことは兄のように慕っているし、仁ちゃんのことは頼れるリーダーとして尊敬している。
でもこの二人が絡むのは嫌だ。なんとかして自分をその輪に捩じ込んで、二人の世界を消し去りたい。
そんな想いが日に日に強くなってきている。
「はい、撮影終了でーす」
スタッフの声で、撮影は無事に終了した。メンバーから、おのおの仕事モードが消えていく。
「なぁーこの後飯行かない?」
「あーオレはパス」
「仁人まっじで来ないよね、他のみんなはー?」
勇ちゃんの呼びかけに次々とメンバーの手が上がる。
「なぁー仁人も来いって。なんなら俺ん家でみんなで飯作らん?」
「いや、それ不安でしかないって」
「え?お前がメインで作るんだけど?」
「はぁ?なんでもう行くことになってんだよ!」
ほら、また始まった。
絶対にこの一対一の会話にいつもなる。
目線でわかるって。
互いの距離感に安心してることも、会話のテンポが1番心地いいってことを確認し合ってることも。無意識のうちに感情を飛ばしあっていることに気づいてないみたいけど、わかるって。
イライラに近い感情が湧き上がってくるのを感じる。
「そしたら車出すので、準備できたら降りてきてくださいね」
マネージャーはそう言って部屋から出て行った。
その言葉にメンバーが次々と身支度を整えていく。いつものように仁ちゃんは誰よりも早く支度を終え、扉へ向かう。
「なー、仁ちゃん」
「なに、舜太?」
「ダンスのことで相談したいことあるんやけどちょっといい?」
「おーいいよ」
皆先いっといて。
仁ちゃんが勇ちゃんの目を見ながら言った。
「皆」ちゃうやん。
またイライラが増していく。
「じゃあ先行っとくわ。ゆっくりでいいよ」
普段通りに優しい勇ちゃん。
でも、目には本人でも気づいてない嫉妬が混じってる。いつも俺が二人の空気を壊すことに、本能的に警戒している。そのことに俺はほんの少しの優越感を覚える。
バタバタとメンバーが出ていった部屋に、仁ちゃんと二人きり。
末っ子の相談を聞いてくれようと暖かな空気を纏ってる様子を見て、俺はこれから自分がやろうとしていることを想像してはちくりと胸が痛んだ。
本当はそのままの仁ちゃんがいい。
勇ちゃんに安心しきって可愛く甘えている、いつもの仁ちゃんでいてほしい。
同時に、そのぬるま湯みたいな安定から引きづり出して、思いっきり困らせたくなる。そんな二律背反、自分でも抱えきれなくなっている。
「で、相談ってなに?」
無防備に近づいてくる仁ちゃんを上から見下ろして、むくむくと湧き上がる感情のままに行動する。
「ごめん、仁ちゃん。ダンスの相談っていうのは嘘で」
「え?」
「仁ちゃんって、勇ちゃんと付き合ってるん?」
仁ちゃんが息を飲む。
大きな目を一段と見開いて、俺の言葉を頭で繰り返してる様子。
無自覚だったもんね、人から言われて色々と頭の整理が追いつかないよね。
一歩、華奢な体に近づいた。
びくりと反応する。
これ以上、感情を暴かないでくれと、大きな瞳で見つめ返される。
「な、、はぁ?突然なに?なわけねーだろ、、」
みるみる耳まで赤くして見てられない。
「勇ちゃんも仁ちゃんのこと大事そうやし、付き合ってるんかと思った」
また一歩近づく。
今度は後退りで返される。本能的な恐怖を感じているのがわかる。
「たぶん勇ちゃん、仁ちゃんのこと好きやと思う」
何を聞かされるのかと、瞳が不安そうに揺れた。その顔もたまらなく感情を揺さぶられる。
俺は、仁ちゃんの心に土足で入り込んで、名前を付けていく。
「仁ちゃんも、好きやろ?」
時が止まった。
仁ちゃんは動揺を隠しきれずに、声にならない声が小さく開いた口から漏れていった。
その間にも頬は赤く染まり、目は左右に泳いでいる。
その顔をさせられるのが勇ちゃんだけだってことに、本当にイライラする。
「気づいちゃった?」
次は白い手首を掴む。
驚いて見上げた瞳とやっと交わった。
固まっている指をこじ開けて、指を絡ませる。
「しゅ、った…?」
喉に言葉がつっかかって、仁ちゃんは俺の名前を呼びきれなかった。
「無自覚な仁ちゃんも可愛かったけど、俺嫌やねん、、仁ちゃんが勇ちゃんのこと目で追うたびに壊したくなる」
「しゅんt、、!?」
優しいキスではない。
赤い唇に噛み付いた。
「や、め、、!はなっ…!」
仁ちゃんが反射的に手を突っ張って抵抗してくる。距離を置こうと揺れる体からいつもの香りがフワリと鼻腔を掠めた。
ねぇ、仁ちゃん、身長差が1番ある二人だって知ってる?
分からせるように、手首を掴む腕と反対の腕で、覆い被さるように抱きしめた。ぐっと力を込める。
体格差に、もしくは気迫に押されて、体を強張らせて抵抗が止まった。その代わり、眉毛が垂れて、今にも泣きそうな顔。息継ぎさえも出来ずに苦しそうにしながら、俺を拒否しきれずに、じわりと瞳を濡らし始める。
「…勇ちゃんのこと好きなのに、俺に襲われる気分はどう?」
「な、んで、、」
ポロリと綺麗に雫が落ちた。
きっと思考が追いついてないよね。ごめんね、仁ちゃん。
「なん、で、こんなことすんだよ…!」
綺麗な顔が歪んでいく。
白い肌に赤く染まった唇が煽情的。
俺の中に答えを見つけるように、意図を確かめるように、元の関係に戻れる可能性が潜んでないか探るように、様々な感情が入り混じった顔。
この顔は、俺にだけ見せる顔。
仁ちゃんの瞳に、今は俺だけが映ってる。
このまま仁ちゃんの世界に俺を入れてよ。
仁ちゃんの体を抑え込んでいた腕を解いた。代わりに少し後ろにあった壁に一気に押しつけた。
困惑の表情で見つめ返される。
「しゅん、」
「勇ちゃんともしたことないやろ、?」
「…っ!」
いよいよ涙が止まらないようで、大きな瞳から次々と大粒の涙が溢れ出した。
「いやだ、、やだ、、やめろ、よ…!」
「…」
「ほんとに、、やめて、、舜太、、」
「仁ちゃん…」
ごめん
小さく呟いた俺の囁きに、目を大きく見開いた。懇願が通じないことを悟り、身を守るように膝から崩れ落ちた。
「ほら、仁ちゃん」
「いやだ、、っやだ…」
「脱いで」
「やだっ…やめろぉ…もぉやだよぉ、、勇人ぉ、、」
「…っ」
「!!」
無意識に勇ちゃんを呼んだ。
俺の動きが一瞬止まったことに、「しまった」と仁ちゃんが身をすくめる。
それがまた俺の感情を逆撫でる。
乱暴にズボンのベルトを引き抜いた。
手をかける時に見た仁ちゃんの顔は、絶望で溢れていた。
感情のままに仁ちゃんを抱いている間、可哀想に、泣きながら何度も勇ちゃんの名前を呼んでいた。掠れてしまった弱々しい声と、許しを乞うような瞳で行為をやめてくれるよう懇願され、その度にその期待を踏み躙って欲望をぶつけた。
俺は、ごめんなごめんな、と何に対してかわからない謝罪を繰り返していた。
それでも、仁ちゃんの中に、紛れもなく自分を刻み込めたことに、言い知れぬ満ち足りた想いが広がっていた。
その後の勇ちゃん家でのご飯会には、俺と仁ちゃんは行かなかった。
この二人があのタイミングで同時に連絡を入れたことに勇ちゃんはどう思っただろう。きっと気づいたよね?
それでもいいよ。
二人だけの世界にはさせないから。
コメント
3件

設定含めめちゃくちゃ最高でした(;;)

さのじん前提のそのじんおいしすぎました(;;)よかったら続きも見たいです!待ってます☺️
うわ〜〜〜!!!これめっちゃ重い…!!😭💔 でもめっちゃ引き込まれた…「仁ちゃん」の無自覚な可愛さと、嫉妬に狂う舜太の独占欲、どっちもリアルでやばい…特に「ごめん」って言いながら止まらないとこ、胸がギュッてなった…。 お互いの感情が全然すれ違ってて、切なすぎる…次の展開が気になりすぎるよ〜!!😣💕