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「白川さん、今日の放課後……良いかな」
「例の物、ですよね……」
翌日の放課後、黒沢君と二人揃ってコソコソしながら教室を抜け出した。
両者揃って通学用のバッグを胸に抱え、周囲から隠す様な動作をしながら。
いや、私は今こんな事する必要無いんだけど。
でも、受け渡されるブツがブツなのだ。
なので周囲に見られないような場所じゃないと不味い。
という事で私達がやって来たのは……なんとカラオケ。
凄い、初めて入った。
などと感動しているのも束の間。
受付は黒沢君がやってくれたが、向こうもあまり慣れていないのか。
会員登録がどうとか言われて、何やら手間取っている御様子。
そうか、カラオケというのはお金を払えば入れる場所じゃないのか……。
高校生は皆、事あるごとにカラオケに遊びに行くものだという認識があったので、こんなにもセキュリティが厳重だとは思わなかった。
後学の為に、というかガンサバでもしもこういう建物に入ってしまった場合の為に。
構造とかをよく覚えておかないと……などとやりつつキョロキョロしている内に、受付作業は終了。
歌うつもりは無いけど、何やら色々渡された彼と共に、指定された部屋へと向かってみれば。
「す、凄いです……カラオケって初めて入りました」
「俺も、あんまり慣れてる訳じゃないんだけど……まぁ、ここなら大丈夫かな?」
そんな事を言いつつも、二人揃ってソファーに腰を下ろした。
そして、無駄にキョロキョロして周囲を確認してから。
「これが、その……昨日言っていた、代物です」
「わ、わぁ……こうして見ると、凄く大きいですね」
黒沢君がバッグを開いてみれば、そこにあったのは……ゲーム内で見た、ショットガン。
更に更に、本物みたいな見た目の弾丸までゴロゴロ出て来るではないか。
いやコレ、もはや本物でしょ。
完全に銃取引の現場だよ。
とか何とか、変な方向で興奮してしまいそうになったけども。
「ガンサバで使ったのなら、扱いはほぼ一緒だね。こうやって真ん中から折って、ここにショットシェルを入れる。リロードの練習とかなら、これを繰り返すだけかな」
「凄い凄い凄い、こんなにしっかり作られてるんですね……ちょ、ちょっと手に取ってみても良いですか?」
「もちろん。というか、これから弄り回す訳だから。今の内にいっぱい触って、分からない所は遠慮なく聞いて?」
そんな訳で、恐る恐る問題の子に触れてみると。
意外と重い! あとリアルの私が持つと無駄にでっかい!
6keyなら片手でも扱えたのに、今の状態でそんな事をしたらプルプルしそう!
「で、でもコレ……凄く、大切な物なんですよね? 私が練習程度に使ってしまっても、良いんでしょうか……」
ここまでしてもらって、今更断る方が失礼だという事は分かってはいるのだが。
なんかもう物凄く大事に使ってるんだろうなぁって分かるくらいに、綺麗なのだ。
だからこそ、プルプルしながらソッとテーブルの上に銃を置いてみると。
「昨日も言ったけど、俺が好きな物を他の人が好きになってくれるのって、凄く嬉しいからさ。もうガンガン使っちゃって? 普通に使ってて壊しちゃった、とかなら全然気にしないし」
「ぜ、絶対壊さない様にします! というか傷付けない様にします!」
とても良い笑顔でそんな事を言われてしまい、此方としては更に気が引き締まった思いだ。
絶対に雑に扱ったりは出来ないぞぉ……コレは。
お兄ちゃんに貰ったハンドガンだって、マグチェンジの練習中にマガジン落としちゃったりした事もあったけど。
床にガツンッていって、マガジンがぁー! というか家がぁー!? と、ヒーヒー言った事だってある。
そんなの、絶対許されないと思った方が良さそうだ。
とはいえショットシェルだから、排莢の際にはポイッて捨てる感じになるんだが……ベッドの上か、練習する所には新しいマットを敷いておこう。
無ければタオルとか服とか敷き詰めよう。
これは絶対傷付けちゃ駄目なヤツだ。
という事で人生初のカラオケで、無事……無事?
私達は銃取引を終えるのであった。
施設の使い方は絶対間違ってるけど。
◆
「よしっ!」
家に帰ってから勉強と家事を爆速で終わらせ、絶対に銃と弾を傷付けない様に床に色々敷いた。
結果。
ブランケットだったりタオルだったり、私の服なんかが敷かれていたり。
物凄く散らかっている様な見た目になってしまったが……まぁ、良いか。
という事で、ネットの動画でリアルの銃を撃つレクチャー動画みたいなのを見ながら、此方も黒沢君に借りたショットガンを弄り回す。
リアルの私だと結構扱い辛くて、最初こそかなり苦戦したが。
何度も練習している内に、結構すんなり銃弾を補充出来る様になって来た。
この感覚を掴んで、6keyでも同じようにすれば……多分、問題ない。
身体のサイズは違おうと、無意識の動作を刷り込ませるのが大事なのだ。
それにゲームの時なら“アバター自体に馴染む”のは得意だ。
だからこそ、私その者がリアルでこの感覚を覚えれば良いだけ。
そうすれば6keyで出来ないなんて事は絶対にない。
ゲーム内のアバターが、私の身体能力以下の部分なんて一つも存在しないのだから。
今でこそこんなに気を張りながら練習しているけど、他の事をやりながらでもすぐ手を伸ばせる位置にコレがあれば……きっと。
なんて、ひたすらリロードの練習を繰り返していると。
「っ! あぁぁっ!?」
とんでもないミスをしている事に気付き、思わず悲鳴を上げてしまった。
何度も何度も弾の補充動作をしていたせいで……ショットガンの弾と、それを突っ込むバレル部分。
なんか、傷付いてる?
銃本体はもしかしたら借りた時からなのかもしれないけど、弾の方は間違いなく私だ。
というかこれは、オモチャなのだ。
弾の方も当然それっぽく印刷されたシールとか貼ってある訳で、本物みたいに使い捨ての消耗品という訳では無い。
なのに、それが思いっ切り削れてしまっているではないか。
もはや完全にテンパり、とにかく黒沢君に謝らないと! というか弁償しないと!
なんて思って、何も考えずビデオ通話を掛けてしまった。
そして、相手が通話に出た瞬間。
「黒沢君っ! す、すみません! 練習していたら……ここ、ココがぁ! なんか、凄く削れちゃいました! 本当にすみません! バレルの傷も、私がぶつけたせいですかね!? ほんっとうにごめんなさい! 弁償します!」
向こうが何かを喋る前に、思いっきり謝罪の言葉を放った。
更には、相手にも確かめてもらう為に銃と弾をカメラに映していたのだが……。
『あ、あの……白川さん? 落ち着いて? 大丈夫、そういうのが擦れるのは、良くある事。弾に関しては単体で売ってるし、俺もショットシェルはそこまで大事に使ってた~って訳じゃないから。それに銃の方も、平気。ガッツンガッツンぶつける事もあったから、傷とか普通につくから。気にせず使って? ね? でも、そっちじゃなくて……えぇと、映っちゃいけない物とか、映ってる……かなぁ……って』
「……え?」
なんかもう慌て過ぎて、完全に銃しか見ていなかったのだが。
よく考えたら、今私……練習の為に、色々床に敷いてました。
広い所はタオルとか、ブランケットだったけど。
銃自体を落としちゃっても、絶対に傷付けない様に~って。
私の私服を、それはもう豪快に。
それこそ、家の中でしか着ない様などう見てもダサイやつまで。
というかお家スタイルの、ダルンダルンになっているパーカーを着ている私まで、中途半端に映っているんですが。
「す、すみません! お見苦しい物をお見せしました!」
『いや、いやぁ!? そんな事ないと思うというか、えぇと!』
「違うんですよ!? 普段からこんな散らかしているという訳では無く! とにかく違うんです!」
『白川さん落ち着いて! 部屋! 今度は部屋全体が映っちゃってる!』
などと、二人してバタバタしながらも。
どうにかカメラを停止させてから、何度も相手に謝罪。
その結果、問題無いからそのまま使ってて良いよ~というお言葉を頂き、一安心。
一安心? いや、これは流石に買って返さないと不味いでしょう。
銃は売っているのかすら不明だけど、弾は買えるって言ってたし……。
とか何とか色々あったが、とりあえず私が恥ずかしい思いをしただけで終わった。
傷付けちゃった事に対しての謝罪と弁償もそうだけど、それでも貸して貰えたんだからちゃんとお礼を考えないと……。
そんな事を思いつつも、とりあえず練習は続行するのであった。
チームの練習が始まる前に可能な限り繰り返して、6keyでもログインしてからおさらいしておかないと。
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