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リアルでの練習と、ゲームでの戦闘訓練。
これをひたすら繰り返し、またしばらく経ってから。
「さて、いよいよ第一戦目だ。皆、準備は良いな?」
イベント当日がやって来て、私達五人は会場となるステージに揃ってログイン。
ガレージの様な場所で、開催時間まで待機。
今回は様々な所から私達の動きが撮影され、ギャラリーとなるプレイヤーには随時映像が見られている状態になるらしい。
対戦相手にリアルタイムで情報が筒抜けになる、みたいな事は無いみたいだけど。
初のチーム対抗戦となる為、可能な限り私達の情報をお届けする様だ。
つまり常に誰かに見られているという事、だから余計に変な事は出来ない。
6keyなら表情トレースはカットしてあるので、情けない顔は見せなくて済むけども。
行動に関しては、アワアワして情けない姿を晒せば一発でアウト。
明日からシックスは情けない子、なんて呼ばれたらしばらくログインする勇気すら無くなるかもしれない。
という事で、より一層気を引き締めながらイベント開始時間を待っていれば。
「ほんじゃ、思いっきり暴れますか~! 一発目は最初に決めたベースの動きで良いんだよね? 可能な限りプランA~」
こっちに抱き着いて来るsevenが、普段通り気楽な声を上げてみると。
4cardは静かに頷き、グッと親指を立てる555。
「基本的に俺が装甲マシマシの改造車で囮役、フォーは常に車両からサポート兼全体指示。状況に応じて、シックスとセブンに端末を預けて裏道からショートカット。ナインは単独行動で遠距離から援護射撃、っすね! バイクも車も、新作用意しましたよぉ~!」
「悪いな、俺だけいつも通りに動かせてもらって。スナイパーだと、他に出来る事も少ないが」
普段同様静かな様子の9Kも、物凄く落ち着いた雰囲気で会話している。
それぞれそんな言葉を洩らしながらも、気合は十分の御様子だ。
これは本当に、私も頑張らないと……。
今確認したベースの作戦なら、私は基本的にsevenと行動を共にする事になる。
だからこそ、ソロになってヒーヒー言う心配はなさそうだけど。
だからと言って、足を引っ張ってしまえば全部失敗する可能性だってあるのだから。
「が、頑張ります!」
此方も気合を入れて、フンスッと両手の拳を握ってみたが。
腰にくっ付いているsevenはワシャワシャと頭を擦りつけて来て、4cardがフッと笑ってから此方の肩に手を乗せて来た。
「気楽に気楽に~! ゲームなんだから、私達も楽しまなきゃ」
「セブンの言う通りだ、シックス。それに、ここ数日で驚く程連携も射撃も上手くなっている。自信を持て」
二人から励ましのお言葉を頂き、早くも泣きそうになって来たんですが。
「だぁ~いじょぶっすよ! なんかあっても、相手が逃げ切る前に車両で追っかけまわして取り戻せば良いだけっす! 時間とフィールド全部使って、思いっきり暴れてやりましょ!」
「あまり気負うなよ、シックス。大丈夫だ、お前は強い」
残る二人からもそんな事を言ってもらえて、イベントが始まる前から本気でグスグス言いそうになってしまいましたけども。
そんな私を待ってくれる筈もなく、無情にもイベント開始時刻が来てアラームが響き渡った。
そして……目の前にあったシャッターが開くと同時に、夜の街のステージが視界に飛び込んで来る。
さぁ、始めよう。
賞金首としてのお仕事、そして今回はチーム戦。
私達が相手するのは複数のチームだが、こちらはたった五人でこれらを搔い潜らないといけない。
相も変わらずとんでもない難易度のお仕事を用意してくれる訳だが……それでも、やるしかないんだ。
私達はガンサバイブオンラインにおいて、“賞金首”という“特別”な名を貰っているのだから。
「時間だな……全員、車両に乗り込め!」
4cardの指示の下、私達は555の改造車の中へ。
練習の時より大きい車両の御様子で、なんと9Kが使うバイクは車の中に積んであるではないか。
そんでもって、何と言ってもどっちもゴツイ。
外装なんて、分厚い鉄板がくっ付いている程だ。
なんかもう、既に色々と呆気に取られてしまいそうな状況だが……気合を入れろ、私。
既にギャラリーからは見られているのだから、格好悪い姿を晒す訳にはいかないぞ。
「予定通り、まずはAパターンの経路で進む! ファイブ、出せ!」
「がってん!」
指揮官と運転手の声と共に、ほぼ装甲車みたいな大型車両は急加速して夜の街へと飛び出していく。
あとは、やる事をやるだけ。
だからこそ……集中! なんて、思っていたんだけど。
「ちょっとファイブ! この車煩すぎ! 何この……排気音? エンジン音? よく分かんないけどウルサーイ!」
「ぶははははっ! とんでもないブツを無理やり積み込みましたからねぇ!? 車検なんて絶対通らないっすよぉー!」
「こ、これでは声が通らんな……もうバイクで外に出て良いか?」
「いやまぁ、頼もしい事に変わりはないんだが……確かに、音がデカイな。いったい何を乗せたらこんな事になるんだ……」
皆言ってるけど……この車、ウルサッ!? あと振動が凄い!
◆
「今宵、我が二丁拳銃は血に飢えている! 行くぞ! “グレー”と“クロ”!」
「“出っ歯”、相変わらず煩いよー?」
「さーて、どうっすかー」
今回はチーム戦、そしてプレイヤー同士の戦闘で勝ち残らないとそもそも参加出来ないイベント。
なのだが、それでは本当に強者しか楽しめないからこその救済措置……なのだろうけど。
抽選で“運の良かった”当選チームは参加出来る、というオマケ枠が結構用意されていたのだ。
そんでもって、運良く当選した俺達三人。
ハッキリ言って、賞金首のチームと戦えるだけの実力があるかと言われると……無いんだけどね。
でも、当たったからには全力でやらないと。
なんて、何度も気合を入れたのだが。
「はぁ……こっちは三人だけだし。やっぱりシロさんは参加しなかったみたいだし……」
「クロー、貴様~。最近リアルで白か……じゃないじゃない。シロさんと仲良いからって調子に乗りおって、こんな時まで色ボケかぁー? 気合を入れろ気合を、今は戦場ぞ?」
「うっさい中二病はいいとして、一応出っ歯の言う通りだぞー? いつまでもクヨクヨしてないで、集中なー? 抽選枠が何も役に立たねぇなんて言われたら、俺等立場無いぞー?」
二人から注意されてしまい、思わず溜息が零れてしまった。
でも確かに、その通りだ。
だからこそ、グッと拳を握り締めてから……三人のゲーム内マネーをつぎ込んで買った、今回の装備を準備して……大型バイクに跨った。
とはいえ、スクーターなんだけど。
「よしっ、行こうか。それじゃ作戦通り、俺達はゴール地点付近で待機。最後の最後でラッキーパンチを狙う、で良いよね? 多分戦力的にも人数的にも、そんでもって機動力的な意味でも、道中で襲撃を掛けようとしても無理だ」
「うむっ! 行こうか、我等が“ユニコーン号”!」
「ユニコーンが好むのは穢れ無き乙女なー? 童貞が三人乗っても、言う事聞いてくれねぇぞー?」
「真面目にやれって言った二人の方が不真面目じゃん! 全然気合入らないんだけど!?」
とか何とか意味のない事を叫び合いながら、三人揃って一台のバイクへ。
わはは、警察に見つかったら絶対止められるヤツ。
ガンサバ内でも、交通違反で捕まるのかは知らないけど。
スピード違反とか、車ぶつけたりすると捕まるのは知っているが……路駐とかバイクの三人乗りでも捕まるのかな?
そんでもって、俺等のアバターはそれぞれ成人男性の姿なのだ。
大の男が三人。
しかも俺はスナイパーの為、デカい武器ボックスを背負ってるし。
グレーに関しては元々重装備、今回の為に用意した追加武装が入ったバッグも持っている。
あとは中二病が一人。
コイツは比較的軽装だが、今回は馬鹿みたいに長いロングコートを着て来たので、とりあえず邪魔。
という訳で、唯一二輪の運転免許を持っている俺がハンドルを掴み、三人乗りでクッソ狭い思いをしながら走り出してみたのだが。
「おっっそ!?」
「三人乗りで、しかも俺は重装備だからな~。まぁ、予想はしてた」
「ふはははっ! 進め進めユニコーン号! 今回で活躍して、もう一度“ナナ”さんと遊ぶキッカケを作るぞ! 野郎ども、気合いを入れろぉぉ!」
流石に重量オーバー過ぎて、ものっ凄く遅い二輪車で移動開始。
プレイヤー達が乗っているであろう、かっ飛ばしている車両どころか……そこらのNPCが乗っている車にすら抜かされる。
というか、クラクションとか鳴らされるし。
あぁ~不味い。
これ、俺等がゴール地点に辿り着く前に、賞金首チームの方が先に到着しちゃうんじゃない?
などと、早くも絶望の色を浮かべていれば。
『前のバイク、止まりなさーい。道の脇に寄って、全員降りなさーい』
不味い、後ろからパトカーが追っかけて来た。
賞金首イベントに参加しておいて、なにやってんの俺等。
まさかこのまま逮捕されて、解放される前にイベント終了とかになったら……洒落にならないぞ。
見ているギャラリーからも、そんな事になったらバッシングの嵐だろう。
もぉぉぉ! 今回の対戦には兄貴も参加してるのに!
スナイプ対決とかして、ちょっとくらい白川さんに格好良い所見せようと思ったのに!
今の俺等、ダサ過ぎるってぇぇぇ!?
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