『なるほどな…… いやご指摘に感謝するぞ聖女よ! 次の機会の参考にさせて貰おう、それはそれとして…… 第三問! ジャカジャンっ!』
「「ええー」」
コユキとカイムの非難の声も無視してクイズ、というよりなぞなぞレベルの質疑応答は続くのであった。
『鬼がいつも握っているものは? 一体なーんだ?』
「おにぎりって言いたい所だけど引っ掛けでしょ? 鬼が寝る時も食べる時も手放さないのは金棒や刀、槍やアンタが持ってるみたいな鎌、つまり金属器よ! オーク(オルクス)もオルガ(オルクス)もオレク(オルクス)も日本の鬼(オルクス)だって皆そうでしょ? いち早く鋳造技術を手に入れたか、それらを持っていた者達を隷属(れいぞく)させたかした強固な部族、なかでも淘汰(とうた)された古き強い者達を鬼と称し蔑んだ(さげすんだ)、数を減らし権力の中心から遠く離され更には討伐の対象に貶(おとし)められた鬼達は唯一縋(すが)れる物、金属器を手放さなかった…… 悲しい事だけどこれが答えよ、どう? 間違っているかしら?」
『正解、だ…… くっ! コノコノコノっ! んん~! ……で、では、第四問! ジャカジャンっ! 人間は何故争うのでしょうか? 戦争が無くならないのは何故でしょーか?』
いきなりレベルというか問題の本質自体が変わったようだ、何とでも言えるし何を答えようとも打ち消し可能なハメ技だとも言える…… はなから正解なんて無い種類の問い掛けではないかと思えた、恐らくだが手段を選ばないで勝ちに来た貞光はこちらを値踏みするかのようにジッと見つめたままだ、いやらしい。
若(も)しかしたら端(はな)からこういった問いを投げ掛けようとしていたのかもしれない。
だがしかし、口喧嘩無敗を誇るコユキは難題に向かって果敢にも口を開くのであった。
「それは…… 言葉の違いとかさぁ? 価値観の違いだとかかな? 宗教観や死生観の違い、食習慣の違いも有るのかもね、ほら鯨とか犬とかね? えっと、後は…… 先行した文化を持つものが後進の台頭に対する脅威(きょうい)論とか? 自分だけ良ければ良いってエゴや、国民を守護の為だとか? 理想? 未来を俺が考えた一番良い方法で導いてやるとかいう妄執(もうしゅう)とか、かな? 自己顕示欲? 狭小な価値観に捕らわれた自分勝手な倫理観とか…… そう言っちゃうと人間自身の愚かさかな? 馬鹿なのに賢いつもりで話すから間違っちゃうのかな? 若しかして戦闘本能とかかも知れないわね、法律や罰則で殺人なんて何処の国でも厳しく禁止してるでしょう? んでも戦争や内紛なんかで敵、これも同じ人間なんだけど一杯殺しても大量殺人鬼じゃなくて英雄って呼ばれたりするじゃない? やってることは同じなんだけどね、だから、人類って殺人自体は良いとも悪いとも定義していないのよ…… 平時で平和な世の中で殺したら『犯罪者』、こちらを殺そうとして来た『犯罪者』を殺したんなら世を救う『英雄』だもんね…… えっと、これじゃ答えにならないよね…… うーん……」
真面目は真面目なんだよな、コユキってさ、こうしている間も一所懸命、はっちゃけーはっちゃけーとか言って頭を悩ましている。
答えを待つ貞光は、柔和な笑みを浮かべてコユキの考え込む姿を見続けていた。
コユキの足元に佇(たたず)んでいたキンキラキンのカイムが大きな口ばしに手を入れて、中からライターオイルとマッチ箱を取り出しながらコユキに話し掛けるのであった。
「コユキ様、コレを! 私に油をかけて火を着けて下さいませ! キョロロン!」
「はっちゃけ~! はっちゃ! ええっ? カイムちゃん! そんな事して大丈夫なのん? 熱いでしょ?」
「そりゃ熱いよぉ! んでも身も魂さえも燃え盛る炎の中でしか答えてあげられないんだよ、私って! 遠慮なくやってね♪ ヨユー! ポロッポー! んで、小僧! たかだか九百年程度で分かったような事をするな! 直(すぐ)に答えを教えてやるぞ、この数百万年を経た真なる魔王種がなぁ~! ヨユー! んじゃ燃やしてください! コユキ様! ポロッポー」
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