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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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食事や買い物を一通り楽しんだネフテリア達は、ショッピングモールを出る直前に視線を交わし、この後にやるべき事をそれぞれ頭の中で整理する。


「準備は…大丈夫?」

「はいっ」

(うん、可愛いけど不安……)


自信満々に木の板を掲げるアリエッタを見て、ネフテリアは不安でいっぱいになった。

隣では、パフィとムームーがげんなりしている。


「アリエッタは賢いのよ。そんなに心配する事無いのよ」

「言葉が通じさえすれば、もう仕事出来そうなくらい頭良いよね」

「もう服の絵描いて仕事してるのよ」

「そうだった……」

「その辺のシーカーより稼いでるわよねぇ」

「……ほっといて欲しいのよ」


保護者を見てニヤニヤし、なんとなく不安を払ったネフテリア。ちゃんと練習したから大丈夫だと、内心自分に言い聞かせている。

向かったのは、先程ラクスと出会った場所。そして、停止中のラクスが、ツインテール派の仲間の攻防に囲まれている場所。


「なんで守ってるのよ? 何から守ってるのよ?」

「あ~……」(なんとなく分かったかも)


数名が、槍や槌のようなアーマメントで鍔迫り合いをしたり、バリアを張っている相手に銃型のアーマメントを向け、なにやら怒りの形相で話している。

そんなツインテール派を見て困っている人物が、ネフテリア達を見て近づいてきた。


「あら、ハーガリアンさん」

「あー、ご機嫌麗しゅう、王女殿下」


慣れない堅苦しい言葉遣いで、話しかけてきた。実はノベルで覚えた王族への対応である。


「そんな無理しなくても……。で、これはどういう事ですか?」

「なんともお恥ずかしい。話せば長くなりますが、実はラクスを巡って小競り合い中で……」


ハーガリアンが言うには、全く動かなくなったラクスに何が起こったのか調査しようと、下心丸出しで手を伸ばした男と、それを迎撃したラクスの友達が発端だった。

その瞬間から、ラクスを狙っていた男女がラクスに手を伸ばし始め、そんなセクハラは許さないという者達と対立を始めたのである。

それが2刻以上前の話。ネフテリア達が食事を終え、あまり買い物はしていないがショッピングを楽しんでいた頃には、既に争っていたという。


(えっ、テリア様が練習する前からずっとこんな感じ? この人達何やってんの?)


話の途中から、既にムームーがジト目になっている。

ネフテリアはいつの間にか、アリエッタを抱っこして話を聞いていた。

話が終わり、王女様からの有難いお言葉が、ハーガリアンに贈られた。


「バッカじゃないの?」

「うぐっ♡ あ、ありがたき幸せ!」

(あっ、このオッサン危ない人なのよ)


昨日の事もあり、総司令ハーガリアンの評価がしっかり低めに固定された。これでもうアリエッタに近づく事は、パフィによって力ずくで阻止されるだろう。


「つまり、ラクスさんを中心とした身内のセクハラ攻防戦って事ね」

「あっ、言いづらいから遠まわしに説明したのに……」


ラクスのワガママボディを巡る者達の中には、ソルジャーギア隊員もいる。そんな身内の恥を出来るだけ言わないようにしていた努力は、王女によって無下にされた。

そんな容赦ないネフテリアは、パフィとムームーにどうするか相談を持ち掛ける。


「どうする? ラクスさんがセクハラされるまで待つ?」

「いやいやいやいや!」

「どっちでも良いのよ」


ムームーは反対だが、王妃からセクハラされる事もあるパフィはどちらでもいい様子。

ネフテリアも、普段からミューゼにセクハラを仕掛ける方なので、ラクスがどう触られようがミューゼの仲間が出来たくらいにしか思わない。

しかし、今回は一旦ラクスを助ける事にした。その理由とは、


「まぁアリエッタちゃんに、こんな穢れた大人達を見せ続けるのもねぇ」

「それもそうなのよ」

(アリエッタちゃんいなかったら助けなかったのか……)


少女の健全な教育の為だった。


「んじゃ、ラクスさん動かすから……ハーガリアンさん、ラクスさんの近くに」

「は、はい……?」(魔法か? 魔法なのか?)


疑問を感じつつも、王女には逆らえない……というより逆らう気が全くない総司令は、魔法が見られるというワクワクを隠しながら、言われた通りにラクスの所へと向かった。途中にいる1組の鍔迫り合いを張り倒しながら。

近くに自分達しかいない事を確認し、ネフテリアは小声でアリエッタに話しかけた。


「よし、近くで見られないから、バレる事もないでしょ。いくよアリエッタちゃん」

「はいっ」


よく分かっていないアリエッタの声は大きい。それも仕方ないと流しつつ、ネフテリアは抱っこしているアリエッタに木のリモコンを手渡した。


(む、アレをやるのか)


それだけで、これからやる事を理解するアリエッタ。ネフテリアの指に注目し、リモコンを胸元で構えて指差した方向を見る。


(あ、あの人さっき止めた人だ。って事は……)


何をしたいのか、その時ハッキリと理解した。その次の瞬間、ネフテリアが言葉を紡ぐ。


「【プレイ】!」

「ん」(ぽちっと)


わざと大きくしたネフテリアの声に合わせて、リモコンの再生ボタンの絵を押した。


「──かし! ツインテールこそ世界そのもの!」


突如動き出したラクスが、離れた所で危ない主張の続きを叫ぶ。

どうやら恍惚とした顔でネフテリアを洗脳しようとしたラクスには、周りの急な変化が見えていないようだ。目の前にいる上司ハーガリアンにはまだ気づいていない。

争いの中心になっていた人物が動き出した事で、周囲のセクハラ攻防戦は突如停止した。気まずいセクハラ側は大人しくなり、静かにアーマメントを収め、少し後退して明後日の方向を見てとぼけ始める。もちろんラクスを守っていた側からは、冷え切った視線が突き刺さる。

周囲が静かになった時、ラクスが周囲の異変に気が付いた。そして、目の前にいるハーガリアンを見上げて首を傾げる。


「あれ? 王女様、いきなりどうしたんですか? 臭そうなオッサンに変身する魔法でも使いました? ダメですよ、王女様とあろう方が、汚らわしい見た目になるなんて。……それにしても、総司令そっくりですね?」


なんと本人に向かって凄い事を言い始めた。直接至近距離で見たというのにまだ気づいていない。

ハーガリアンはうっすらと頬を染めながら呆れ、その人物が総司令だと知っているツインテール派の面々は、目を点にしながらガタガタ震えている。

少し経って、ラクスは遠くにいるネフテリアを偶然見つけてしまった。


「ん?」


何かの見間違いかと、瞬きを数回。チラリと正面の人物の顔を見てから、慌てて視線をネフテリアに戻す。


「んん??」


突然の変化に思考が追い付かない。しかし今の自分の行動は覚えているので、全身から汗が噴き出る。顔色も悪くなってきた。


(どゆこと!? なんでここに総司令が!? 今の一瞬で一体何が!?)


ようやく思考がまとまってきた。同時に現状のまずさを把握。

恐る恐る視線を正面に戻すと、そこにはニコニコ笑顔のハーガリアン総司令。

哀れにも、ラクスはそのまま動けず固まってしまうのだった。


「あ。自力で止まったのよ」

「あれは怖いねぇ……」


離れて見ていたパフィ達も、これには苦笑するしかない。


「よしよし。アリエッタちゃん、偉い偉い~」

「にへへ~」


作戦成功したネフテリアとアリエッタは上機嫌である。

実はツインテール派がセクハラ攻防戦している間、ショッピングモールで人がいない場所を見つけたネフテリアは、アリエッタに任意でリモコンを使ってもらう方法を編み出していたのだ。

アリエッタに「これなぁに?」と聞くと、ちゃんと答えが返ってくる。それでリモコンについてあれこれ聞き、本体の『リモコン』と、『プレイ』『ポーズ』のボタン名である事を知った。

そこからは、とりあえずパフィとムームーを指差して、「ポーズ」と言ってみると、少し考えたアリエッタは実際にパフィに向かって一時停止ポーズを押した。後はしっかり褒めて、その行動が正解である事を教えていく。

そうして出来上がった指示形態わざが、【ポーズ】と【プレイ】の2つ。

こうする事で、ラクスを止めたり動かしたりしたのが、ネフテリアの魔法の力だと思わせる作戦である。


「おーよしよし~いい子だねー」

「にゃはっ、きゃはははは」


可愛がりがちょっとエスカレートしてきたので、パフィがネフテリアの頬を引っ張って止めた。


「えーっと、それじゃあ本題に入りません?」

「あ、うん。任せて」


我に返ったネフテリア達が、ラクスの方へと向かった。リモコンはアリエッタのポーチの中に仕舞ってある。


「おーいラクスさーん」


しかし返事がない。立ったまま気絶しているようだ。


「ん-、ハーガリアンさん。今回はお咎めなしって事で。わたくしの責任でもありますし」

「分かりました。おいラクス。王女様からお許しの命令が下った。この件では不問とするぞ。そろそろ息しろ」

「はっひっ!?」

「あ、動いたのよ」


ラクスは息を吹き返した。


「うえぇぇん、怖かった、怖かったよぉぉぉぉ」


ついでに泣き出した。


「それで王女様。何かご用がありましたかな?」

「うーん、そうねぇ。ちょっと言いたい事があってね。せっかくだから、ここの全員に聞いてもらいましょう。【空跳躍スカイリープ】」

『うおおおおっ』


演説の為に、ネフテリアは空中に魔力の足場を作り、少し高い位置に立った。サイロバクラム人達にとって、その姿はバーニアの力を使わずに空中に浮かぶ、まさに魔法という現象だった。

羨望の眼差しを一身に受けて、ちょっといい気分になった魔法の世界の王女様は、かるく咳払いをして話をした。


「さて、ツインテールが好きな皆さん。わたくしは魔法のリージョン『ファナリア』から来たエインデルという国の王女です」


自己紹介で区切ると、拍手が起こった。しかしすぐに言葉を続ける。

まずは少しだけサイロバクラムへの感想を言い、すぐに今回の目的を伝えた。


「そこのラクスさんからお誘いを頂きましたが、わたくしはポニーテール派なのです!」


その言葉と同時に後頭部を見せて、中心から伸びる2本の束と先端の縦ロールの髪を揺らした。


「そ、そんな……」

「なら我々は一体なんの為に生きてきたんだ……」

(えっ、そこまで絶望するような事なの?)


聞こえてきた呟きに、色々と心配になるムームー。

さらにネフテリアは言葉を続ける。


「まぁ貴方がたはツインテールがお好きなようなので、わたくしとは合わないかと思います。派閥は違えどお友達に──」

「なりますっ! ぜひ王女様のお友達にぃっ! むしろ仕えさせてくださいぃっ!」


ネフテリアの言葉を遮り、興奮した様子で手を挙げたのは、なんと先程ネフテリアに救われたラクスだった。


宣教師アンタが真っ先に行くなあぁぁっ!!』


その場にいるツインテール派の全員が叫んでいた。

からふるシーカーズ

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