「……べつに、怒ってねーし」
ソファの隅っこでむすっとしながら丸まってる虎杖悠仁。
目も合わせないし、顔も赤いし、拗ねてるのはバレバレだった。
「へぇ〜? じゃあその顔、なんなの?」
五条悟はニヤニヤしながら悠仁の隣に腰を下ろす。
ちょっと体を寄せただけで、悠仁はびくっとして、
「ちょっ、近い!!」
「近くないと見えないじゃん、悠仁の“可愛いお顔”が」
「ふざけんなバカ!!」
ぷんすかしてたけど、
そのあと五条の指が髪をくしゃって撫でてきた瞬間──
「……っ」
体がびくん、と跳ねた。
そのまま、何も言えなくなった。
五条の手が、髪をやさしくなぞって、
首筋をかるくつかんで、引き寄せられるように抱きしめられる。
「……どうしたの? ぎゅー、嫌?」
「……っ、嫌じゃない、けど……」
「あら、素直でよろしい♡」
ぎゅう、と抱きしめられた瞬間、
ぷつん、と中で張ってた何かが切れた。
「……さっきまでずっと……会いたかったし……」
「ん?」
「ほんとはずっと、ぎゅーしてほしくて……」
「うんうん?」
「チューもしたかったし……俺のこと、好きって言ってほしかったし……」
「……あらあら♡」
五条が笑うたびに、悠仁の声はどんどん小さくなって、
そのぶん、ぎゅーっと五条にしがみつく腕の力が強くなる。
「……だいすき……好きすぎてバカになりそう……」
「わぁ、溶けてるね?」
「だって、先生が全部悪い……。俺のことこんなに好きにさせたくせに……」
「そんなこと言われたら、僕もバカになるけど?」
耳元でささやかれて、びくんと体が震える。
でももう離れたくなくて、ぎゅってしたまま、顔をうずめて。
「……もう一回チューして」
「うん、何回でもするよ」
「好きって言って……」
「好き。悠仁、好き」
「……ふふ、俺も。先生しか好きじゃない……」
もうすっかり、ツンツンなんてどこへやら。
腕の中でとろけた悠仁は、甘ったるい声で何度も「好き」と呟いた。
「……ん〜〜悠仁、甘えんぼすぎない?」
「だって……会えなかったぶん、今ぎゅーしてもらわなきゃ足りない」
五条の胸元に抱きついたまま、虎杖悠仁はもそもそと顔をうずめる。
髪を撫でてもらって、背中をさすってもらって、声をかけてもらって、
それだけで全部がとろけてしまいそうなほど、幸せだった。
「も〜〜、甘やかしすぎるとダメになるぞぉ?」
「もうとっくにダメだもん……」
「なにそれ。かわいいんだけど……」
五条がクスクス笑いながらほっぺを撫でてきて、
悠仁はその手をふいに掴んだ。
「……先生」
「ん?」
「ちょっと、目つぶって」
「なになに? 急にどうしたの〜?」
「……いいから。お願い」
首を傾げながらも目を閉じた五条に、
悠仁はそっと手を添えて、ゆっくりと──唇を重ねた。
一瞬、五条の肩がぴくっと跳ねる。
そのまま、悠仁は勢いをつけて、
ごろんとソファの上に五条を押し倒してしまった。
「……悠仁?」
「もう……がまんできない。ずっと先生のこと見てたの、俺だけだったから……」
低く押し殺した声が耳元に落ちる。
抱きしめていた腕は、いまは五条の体を押さえるように強くなっていて。
子犬のようだった悠仁の瞳が、今は少し熱を持って揺れていた。
「好き、先生。……好き。好き……」
「……あのさ、悠仁」
「なに」
「……ちょっと本気出すの早くない?(焦)」
「先生が……俺のこと、甘やかしすぎたからでしょ」
言いながら、頬を赤くしてる悠仁。
でもその目は真剣で、まっすぐだった。
「……責任、取ってよね」
「……うわ。かわいすぎるのになんかドキドキする。どうしよう……」
「俺、もうずっと好きだったんだよ? チューだってしたいし、ぎゅーも……それ以上もしたい」
「……待って? 悠仁、それはちょっと待って。心の準備が……」
「待たない。先生のせい」
唇を重ねられて、もう何も言えなくなった悟。
さっきまで子犬だった悠仁が、いつのまにか甘噛みする小悪魔に変わっていた。