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翌朝
美波の高級マンションの寝室に、突き刺さるような通知音が響いた。
重い頭をもたげ、美波が枕元のスマートフォンを手に取る。
画面に表示された送り主の名を見て、彼女の指先が凍りついた。
『愛華』
数日前にビルから転落し、昨日葬儀を終えたばかりの、あの愛華だ。
「今日の夜、いつもの場所で待ってるね。エリカも一緒だよ。三人で、またあの時みたいに楽しくお喋りしよう」
「ひっ……!」
美波は悲鳴を上げ、スマホをベッドに投げ出した。
死者からの誘い。
そんなはずはない、誰かの悪質な悪戯だ。
エリカか?
昨日、マンションから追い出した腹いせに、愛華のスマホを盗んで送ってきたのか?
「……あいつ、マジで殺してやる」
美波が毒づきながら身支度を整え、リビングへ向かう。
しかし、玄関の扉を開けた瞬間、彼女の動きが止まった。
「おはよう。顔色が悪いね、美波さん」
そこには、壁に背を預けて立っている九条刑事がいた。
昨日の葬儀会場と同じ、温度のない目。
「不法侵入よ。出て行って」
「いや、正式な手続きを踏んで来ているんだ。……これの件でね」
九条がビニール袋に入った「あのハンカチ」を取り出す。
昨日の葬儀で、美波のバッグから転げ落ちた、血塗れのハンカチだ。
「鑑定の結果が出た。付着していたのは人間の血液。そして、このハンカチの繊維からは、10年前の事件に関わる『ある成分』が検出されたんだ」
「……美波さん、君、10年前に熱湯でクラスメイトの喉を焼いたようだね」
美波の顔から、一気に血の気が引く。
「……何のこと?証拠でもあるの?」
「証拠なら、これから君が作ってくれるさ」
九条は不敵に笑い、美波のスマホを指差した。
「死んだ愛華さんから、LINEが来たんだろう?警察の技術なら、その送信元がどこか、すぐに特定できる」
美波は九条を突き飛ばすようにして、マンションを飛び出した。
彼女が向かったのは、10年前に私を「処刑」した、あの廃校になった中学の旧校舎。
そこが、彼女たちの「いつもの場所」だった。
旧校舎の屋上。
そこには、傘も差さずに雨に濡れたまま立ち尽くす、エリカの姿があった。
そしてその横には、私の姿も。
「……やっぱり、あんたたちね」
美波が肩で息をしながら、エリカを睨みつける。
「愛華のスマホを盗んで、こんな悪趣味なことして……! エリカ、あんた正気?警察が嗅ぎ回ってるのよ!」
「正気?……ふふ、あはははは!」
エリカが狂ったように笑い出す。
「美波、あんたが私の旦那に告げ口したんでしょ?私を一番に裏切ったのは、あんたじゃない!」
「は?私がそんなことするわけ——」
言いかけた美波の言葉を、エリカが遮った。
エリカの手には、鋭く光るカッターナイフが握られていた。
それは、10年前に私のノートや制服を切り刻むために、美波たちが使っていたものと同じモデル。
「美波、死ぬのはあんたよ。……愛華が、下で待ってるって」
エリカが美波に襲いかかる。
私はその光景を、スマートフォンのカメラで静かに記録し始めた。
画面の端には、『パンドラ』からのメッセージが流れる。
【ライブ配信開始】
視聴者:九条刑事、および美波のフォロワー100万人。
女王の没落を、全世界に届けましょう。
深冬芽以