テラーノベル
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私は震える足で、大晴くんの部屋に入った。ドアを閉めると同時に、部屋の空気が重く沈んでいるのが分かった。
大晴くんはベッドの端に座り、目は真っ赤に腫れていた。
私が一歩踏み込むと、彼は弾かれたように立ち上がり……
{如月ちゃん、ホンマにごめん!俺、勝手に嫉妬して……頭ぐちゃぐちゃになって……如月ちゃんのこと傷つけてしもうた……。謝っても、許してもらえへんかもしれへんって思ってるけど……どうしても言わなアカンって思って……ホンマに、ごめん!}
勢いのまま深々と頭を下げた。
背中が震えていて、その姿は見ていて胸が痛くなるほどだった。
「……大晴くん、頭上げて。」
私はゆっくりと言った。
顔を上げた大晴くんの瞳は、涙で濡れていた。
「私は……大晴くんのこと、嫌いになったりしないよ。」
その一言に、大晴くんはハッと息を飲んだように見えた。
私は続ける。
「私こそ、ごめんね。私、恋とかよく分からなくて……。“好き”って言葉を簡単に言ってた。そのせいで、みんなの気持ちをかき乱したのかもしれない。」
ゆっくりと胸に手を当てる。
「でもね……ちゃんと分かったの。大晴くんが私に抱いてた“好き”と、私が感じてた“大晴くんへの好き”は違ってたって。」
大晴くんは唇を噛んだまま、私の言葉を静かに聞いていた。
「だから……ごめんね。そして……好きになってくれてありがとう。そして私が本当に好きなのは……誠也くんなんだ。」
小さな声だった。
でも、その言葉に嘘はなかった。
しばらく沈黙が落ち……
やがて、大晴くんはふっと笑った。
{……そっか。なら、俺こそありがとうやな。俺を振ってくれて。これで……ちゃんと如月ちゃんのこと諦めれる。}
少し寂しそうで、それでも優しい笑顔だった。
{誠也くんと……幸せになってな。如月ちゃん。}
その言葉は温かくて、胸がじんとした。
「……うん。ありがとう、大晴くん。ちゃんと……幸せになるよ。」
そう言った時、ようやく部屋の空気が少しだけ軽くなった気がした。
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