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ゆあ
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ありんす
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お疲れさま、百はな🍑さん!今回もめちゃくちゃ読み応えあったよ…。芣婭の不安とか、コンラットの「当たり前だろ」って優しさにじんわり来た。ルカリオ王子の執着っぷりが正直ゾッとするんだけど、ぼいんちゃん登場で空気一気に変わったのすごい好き。芣婭がコンラットの背中に隠れるシーン、心臓ぎゅってなった。お兄ちゃんがくれたかったものを異世界で貰えるって、切なくて、でもちょっと温かいね🌙
時間昼間に遡って、甘野芣婭達はカーディアック家を出て中部街の屋台市場に訪れていた。
「お、アンタはギルベルト様の!また来てくれたのか!」
「今度は黒騎士団達と来てくれたんだね、また来てくれて嬉しいよ!」
「おいおい、距離が近すぎる。嬉しのは分かるが、少しは落ち着けって」
「お、団長が珍しい事言うじゃねーか!」
中部街の市民達とコンラットが話す中、甘野芣婭の表情は暗いままで、ギルベルトとのやり取りを思い出しては溜息を吐く。
甘野芣婭の溜息を聞いたコンラットはすぐに、甘野芣婭の元に戻り声をかける。
「芣婭、どうした?具合悪いか?」
「わっ!?びっくりした。さっきまで街の人と話してたのに、いつの間に芣婭の前まで来たの?」
「溜息が聞こえたから、すぐに戻って来たんだ。体調が悪いなら、帰るか?」
「体調は悪くない、逆に何か食べたい気分なんだけど…」
「けど?」
コンラットは言葉を詰まらす甘野芣婭の顔を覗き込み、様子を伺う。
シエサやニックス、レヴァリオの3人が市民をしている中で、ケルベロスの2人は少し離れた距離で甘野芣婭とコンラットを見ていた。
「こっちの世界で楽しんでて良いのかなって思って」
「それは向こうで待ってる家族に対して、悪いと思ってるという事か?」
「すごい、コンラット!芣婭の言葉を聞いただけで、ここまで推理ができるとは!芣婭認定試験に合格できちゃうね」
「本当にその試験があるなら、受けさせてほしいよ。急にそんな事を思い出したのは、どうしてなんだ?君の家族は君対して、酷い事をしてきたんだろ」
「お兄ちゃんだけは芣婭に優しくしてくれたの」
甘野芣婭は視線を下に落としたまま、コンラットの顔を見ずに話を続ける。
「芣婭の事をいつも気にかけてくれたのは、家族の中でお兄ちゃんだけ。きっと、今も芣婭の事を探してる。あっちの世界だと、芣婭は行方不明って事になるでしょ?探し回ってると思う」
「ちゃんと守りきれてないじゃないか、妹である芣婭の事を」
「え?」
「こんな事、芣婭は聞きたくないと思う。もっと、ちゃんと芣婭の事を守れた筈だ。兄なら妹の事を気にかけるのは当然だ、妹を守るのが兄の役目だから。芣婭は傷付く前に、どうにかするべきだろ」
コンラットの言葉を聞いた甘野芣婭は、一瞬驚いた後、コンラットの肩を叩きながら笑い出す。
「あははは!コンラットったら、お兄ちゃん以上に芣婭のお兄ちゃんみたいっ。コンラットが芣婭のお兄ちゃんだったら、すぐ守ってくれ…」
「お前がどこに居ても、俺はお前を守るよ。そんなの当たり前じゃないか」
コンラットのレッドピンク色の瞳から、力強い意志を
感じられる強い眼差しが甘野芣婭に向けられた。
自分と同じ色の瞳を持った人を甘野芣婭は、元の世界で1人も見た事がなく、この異世界でたった1人と出会うとも思ってなかった。
彼の言葉を聞いて胸が高まるが、この感情が恋かと言われれば少し違う感情かもしれない。
ただ、甘野芣婭が自身の兄から欲しかった言葉を、異
世界人であるコンラットが当たり前のように言ってくれた事は嬉しかったのは事実。
「当たり前とか、お兄ちゃんにも言われた事ないからっ、なんかはずいっ。芣婭が元の世界に帰ったとしても?守ってくれるのー?なんて」
「行くよ」
「行くよって…、行き方も知らないのに、どうやって来る気?あ、魔法で来れたりするのか」
「芣婭、行き方ならどんな方法を使ってでも探し出す。不安になる事はないぞ、必ず俺が助けに行くんだから」
「コンラットはどうして、芣婭に優しくしてくれるの?他の世界の人なのに」
甘野芣婭はコンラットが赤の他人である自分に、どうしてこんな事を言ってくれるのか分からなかった。
不安を取り除く言葉もくれる事も、何かを訴えるような眼差しも、甘野芣婭はコンラットが何を伝えたいのか分からないこそ困惑してしまう。
バンッ!!!
勢いよく扉が開かれる音が聞こえ、甘野芣婭達が視線を向けると、ルカリオに手を乱暴に掴まれているロザリアの姿が見えた。
「皇太子殿下、ロザリアに何をする気ですか!?おやめください!」
「マイヤ・モーガナークと言ったか?君の名前は。伯爵家の令嬢の分際で、僕に意見をする気か」
「っ…、ですが、私はロザリアの親友です。ロザリアの事を連れて行こうとするのは…」
「殺されたいのか?お前」
マイヤの言葉を聞いたルカリオの目付きが変わり、同行していた白騎士団達が剣を抜く。
「ママッ!!!」
「待て、芣婭!1人で行くな」
「「芣婭様!?団長!?」
その瞬間、走り出す甘野芣婭と追い掛けるコンラットの姿を見て、ニックスとレヴァリオの2人も走り出す。
「ママッ」
「芣婭!貴方、ギルベルト様の所に行ってたんじゃ…」
「ギルベルト君、お仕事が入ったみたいで…。ママに何してるの、王子様」
「会いたかったよ、芣婭」
甘野芣婭の姿を見たルカリオの表情はまた変わり、恋を覚えた14歳の少年のような表情に変わる。
コンラットの姿を見た白騎士団
達の表情は曇って行き、マイヤに向けていた剣を下ろしてしまう。
「お前等、白騎士団は婦人にまで剣を向けるのか?王宮騎士が聞いて呆れるな」
「コンラットさん…、そ、そのっ」
「情けないな、お前等」
コンラットは現皇帝にも認められる剣の腕を持ち、白騎士団の剣の稽古をつける事もあり、白騎士団にとってコンラットは自分達の団長と同じ位の人物なのだ。
「ママに何したの、王子様」
「芣婭が考えているような事は何もしていないさ、君との見合いをする事に許可を貰いたかったんだ」
「お見合いって…」
「マダムロザリアがね、君は大公子と良い仲だと言う
んだ。僕との見合いの話を断ろうとしてきた」
そう言って、ルカリオはロザリアの事を睨みつけた。
***
数分前、ルカリオに甘野芣婭と見合いの話を持ち出されたロザリアはすぐに見合いの話を断ったのだ。
「皇太子殿下、うちの娘は既に大公子様と見合いをしておりまして、2人は良い感じなんです。お話は嬉しいのですが、娘は大公子様の事を好いております。母として、娘の幸せを守る義務がありますわ」
ロザリアの予想外の言葉を聞き、ルカリオと同行していた白騎士団は目を見開いて驚く。
まさか、公爵夫人が皇太子殿下に意見するとは誰も思
っておらず、本人ですら思ってもいなかった。
「既に相手がいる女性に見合いの話を持ち出す事は、ルナ帝国の法律の中にありますわ。流石の皇太子殿下であろうとも、法律を破る事は出来ませんよね?」
「性格がキツイ女は嫌だな、すぐに足元を掬おうとしてくる」
ルナ帝国の法律の1つである『相手がいる男女に、見合いの話を持ち出す事は禁止する』と言うものがある。
皇族であろうと、相手がいる男女に見合いの話を持ち出すのは禁止されていて、側室に入っている女性は勿論の事、未婚の女性だ。
法律の話を持ち出されれば、皇太子殿下であろうとこれ以上は何も言えなくなる状況をロザリアは作り上げた。
その事をルカリオはすぐに察しがつき、ギルベルトが先に甘野芣婭に手を出していた事が一番気に入らなかった。
「マダムロザリア、皇族がどれだけ法律を真面目に守っていると思う?」
「え?」
「カーディアック家は真面目に、初代皇帝が決めた方針を守っているけれど、皇族の血を引く者が全員守っているかは別の話。現に、歴代皇帝は旦那が居る婦人の事を略奪していたし、奪ったご婦人を自分の側室に入れていた話もある。この世の中に馬鹿みたいに真面目な人間が何人いると思う?」
そう言って、ルカリオは不敵な笑みを浮かべてロザリアの顔を覗き込む。
ロザリア自身の耳にも皇族の悪い噂は何度か入ってきた事があり、ルカリオが言ったように略奪に関しての噂が殆どだ。
「婚約はしていないのだろう?それなら、僕が芣婭を取ったとしてもどうとでもなる。奴には芣婭は勿体ない」
「皇太子殿下は何故、うちの娘にそこまで惹かれるのですか?」
「そこまで惹かれる?惹かれるのに理由なんて要らないだろう?芣婭が大公子の事を好きだろうが関係ない、彼女は僕のモノだ」
「ルカリオ様、兄弟の気配がします」
黒髪のショートの女の子の言葉を聞いたルカリオはニヤッと笑い、ロザリアの手を掴んで立ち上がる。
ガタッ。
「な、何をすんですか!?皇太子殿下!」
「良いから、黙ってついて来い」
「痛っ」
ルカリオはロザリアの手を強く掴んだまま、客室を出て店内に戻ると、物音を聞いたマイヤが作業部屋から慌てて出て来た。
「ロザリアッ!!!どこに連れて行く気ですか、皇太子殿下っ」
「マダムの周りに居る女は皆、貴方みたいに気が強い女性が多いのか?全く、気が強い女は嫌いなんだよ。男の力に勝てない癖に、生意気な言葉を使う」
言葉を吐き捨てながら乱暴に店の扉を開けて外に出ると、離れた場所で甘野芣婭とコンラットが話している姿が見える。
仲睦まじい2人の姿を見て、ロザリアの手を握る力が強くなり、怒りの炎がメラメラと燃え出す。
だが、その様子を後方から黙っている人物が居た事に、この時のルカリオは気付いていなかった。
***
甘野芣婭 (17歳)
何で、王子様は芣婭とお見合いがしたいだけで、ママに乱暴な事をしたのが信じられなかった。
そもそも、芣婭達は1回しか会った事がないのに。
この人、ニックとレヴァさん達にも酷い態度をとってたよね?
やだなー、めちゃくちゃ嫌な奴じゃん。
見た目が王子様なだけで、中身は全然王子様じゃないじゃん!?
「分かっているのかな?マダム。君達は公爵家で、僕はこの国の皇太子。本来なら、僕に口答えをした時点で、その首は刎ねれるんだよ」
王子様がそう言うと、ママに向けて騎士達が剣を向ける。
芣婭はママを庇うように前に立ち、ママに怪我させないように王子様を睨んだ。
「奥様、芣婭様!」
シーちゃんはすぐにママの側に駈け寄り、腰に下げていた剣を抜き、芣婭の隣に立つ。
「おい、女!皇太子殿下に対して、その目付きは何だ!?」
「ふん!おじが睨んできたって怖くないもんね!女の子に怒鳴るってさ、マジで最低。これじゃあ、モテないわ」
「な、なんだと!?」
「うちのママに酷い事したら許さないんだから!今すぐ剣を下ろしてよね、おじ」
「この小娘がっ、調子に乗るなよ!?」
怒ったおじが剣を振るおうとした時、コンラットが思いっきりおじの顔を殴りつけた。
ドカッ!!!
「ゴフッ!?」
地面に倒れそうになったおじの腹に蹴りを入れ、おじをボコボコにし始める。
「ちょ、コンラットさん?」
おいおい、いつもの穏やかなコンラットはどこに行った?
「やべー、本気で怒ってるモードに入っちまった」
「え?ガチギレって事?」
「そのガチギレ?ってヤツだ。団長があそこまで怒ると、誰にも手が付けられなくなんだ」
ニックは青い顔をしながら、おじを殴り続けているコンラットに視線を送っていた。
芣婭が見た事がないコンラットが目の前に居て、返り血を浴びたコンラットを見て騎士達が怯えまくってる。
そりゃそうだ、今のコンラットはガチで怖い。
「フッ、死んだな、あのおやじ」
「芣婭を傷付けようとしようとしたんですから、死んで当然ですよ」
狼の姿になったベロちゃんとケロちゃんが、いつの間にか芣婭の左右足元に寄ってきていた。
2人がおじがボコボコにされている姿を見て、何故か楽しそうにしてる。
この2人、芣婭以外には性格悪いよなぁ…。
「コンラット、自分が何をしたのか分かってるのか?白騎士団の団員に重症を負わせて」
「皇太子殿下、貴方の命を守る白騎士団の教育に私が関わっている事は御存じではないようですね。貴方の御父上が、私に役職を与えてくれたんですよ。白騎士団の団長と言う役職を。団員の躾ですよ、騎士なら誰もが上官から殴られた事がありますよ。温室育ちの王子様には、縁のない世界でしょうが」
コンラットの言葉を聞いた王子様の表情が歪み、その様子からして王子様はコンラットが白騎士団の団長の役職を貰ってる事を知らないようだ。
え、コンラットってめちゃくちゃ凄い人なのでは?
「お前が団長だと?父上め、また僕に言い忘れたようだな。お前が団長の立場だとしても関係ない、ぽ前よりも僕の方が立場は上だ」
「芣婭、怪我はないか?」
王子様の言葉を無視して、コンラットは眉毛を下げて芣婭の肩に優しく触れる。
コンラットが怪我をした訳ではないのに、痛くて辛そうな表情をしてるのは何で?
「芣婭は怪我してないけど…」
「本当か?嘘ついてないか?」
「本当だって!コンラット心配し過ぎ」
「そりゃ、心配するだろ…」
「ほら、血拭いてあげる」
芣婭がコンラットの頬についた血をハンカチで拭こうとした時、王子様がコンラットの肩を掴み、後ろに顔を向けさせた瞬間に頬を叩いたのだ。
パシッ!!!
「「あっ!?」」
芣婭とニックの声が重なり、頬を叩かれた衝撃でコンラットの唇が切れてしまっている。
コンラットの目付きが冷たいものにかわり、口の中に溜まった血を吐き出し、王子様の視界に芣婭が入らないようにしてくれた。
「何、芣婭に血を拭いて貰おうとしてるんだ?お前。さっきから目障りな動きばかりして」
「貴方の気に障る行動はしていませんよ、貴方が私に気に障る行動はしていますが」
「ほう?僕がいつ、お前如きに気に障る行動をしたんだ?」
シュッ!!!
キィィンッ!!!
どこからともなく飛ばされてきた数本の短剣を、コンラットは腰に下げていた剣を抜いて素早く弾く。
弾かれた短剣はコンラットの足元に落ち、王子様はコンラットに拍手をする。
「流石は、カーディアック家の犬だな。この程度じゃ、怪我もしないか。さてと、芣婭」
「えっ、芣婭?」
「君の事を怖がらせるつもりはないんだよ、見合いが嫌ならお茶を飲むだけでも良い。芣婭は甘い物が好きだろ?キャラメルとか」
「何で、王子様が芣婭の好きな物を知ってるの?」
「お前の事なら何でも、好きな色も好きな匂いも、好きな…」
途中から王子様の話が耳に入ってこなかった、小さく手が震え、王子様の事が怖くてしかたがなかった。
魔法省で会った時も、初対面の芣婭に対して必要以上に絡んできて、正直怖かったし。
好きな色も好きな匂いも知っているって、ほんとなんなの?
マジで、王子様ってヤバイ人なんじゃないの!?
思わずコンラットの背中にしがみつき、王子様の視界に絶対に入らないように隠れる。
すると、コンラットが剣を持っていない方の手を後ろ
に回し、芣婭の背中をポンポンッと優しく叩く。
「大丈夫だ、お前は俺の後ろにいろ」
コンラットが優しいトーンで声をかけてくれるだけで、芣婭の事を安心させてくれた。
「皇太子殿下、今日の所はお引き取り下さい」
「お前に言われる筋合いは…」
「ハッキリ言わないと分からないか、芣婭が怖がってるから帰れって言ってるんだ」
「「っ!!?」」
王子様に対してハッキリと言ったコンラットの方に、皆が一斉に視線を向ける。
ニックとレヴァさんも前に出ようとするが、コンラットが視だけで2人の動きを止めさせた。
ケロちゃんとベロちゃんが王子様に対して、「ガルルッ」と唸り声をあげ牙を剥き出しにする。
黒髪のショートへが似合う可愛い女の子が王子様の前に立ち、一瞬で分厚い本を出し、今にも攻撃をしてきそうな空気になった時。
カツカツカツ。
ヒールの鳴る音が聞こえ、視線を向けるとぼいんちゃんとイケメン執事が芣婭達の方に歩いてくるのが見える。
キャラメル色の巻き髪ロングを靡かせ、パッツン前髪は少し左側に流され、長い睫毛から綺麗なアメジスト色のが覗き、煌びやかなアクセサリーに露出度の高いドレス。
とにかくおっぱいが大きい、Fカップはあるのではないか?
芣婭はCカップしかないから、ぼいんちゃんが羨ましい限りです。
ネイビー色のサラサラな髪に少し長めの前髪は右側に分け目があり、透き通た鼻に切れ長のグリーンの瞳、執事服を上品に着こなしている。
イケメン執事がぼいんちゃんをエスコートしていた。
「今日は賑やかですわね?皇太子殿下」
「何故、君が西のエリアに居るんだ。イーヴェル家は東のエリアが担当だろ」
「頼んでいたドレスを取りに来ましたのよ、皇太子殿下こそ中部街にいらっしゃるなんて珍しいですわね」
ぼいんちゃんが現れた事により、王子様の様子が少しおかしい。
焦っていると言った方が良いかな、ぼいんちゃんは何者なんだ?
「ふふ、皇太子殿下が我を忘れる程、この子に夢中なんですね?ですが、女性を怖がらせるのは、紳士がする事ではないですわね」
「…、君の言う通りだな。僕とした事が冷静さを欠けていたようだ。今日の所はここで失礼するよ」
「その方が宜しいですわ」
「芣婭、お茶会の件は考えておいてくれ。怖がらしてごめんね」
王子様はそう言って、騎士達を連れて芣婭達に背を向けて歩き出したのを見て、心の底からほっとした。
ハッと我に返り、コンラットの前に移動して王子様に叩かれた頬に触れる。
「コンラット、大丈夫!?めちゃ腫れてる…、これは大丈夫じゃないよね。どうしよう、冷やした方が…」
「いたたっ、平気だ」
「ほ、本当?コンラットが痛みに強いだけじゃない?唇も切れてるし…」
「フッ、こんなに芣婭に心配されるなら殴られた甲斐があるな」
コンラットの予想外の言葉を聞き、思わず「はぁ?」と変な声が出てしまった。
「な、何言ってるの?芣婭が真面目に心配してるのにっ!」
「ごめんごめん」
「あ、本気で悪いと思ってない謝り方してる!」
「本当に悪いと思ってる」
ギルベルト君もそうだけど、この2人は芣婭が怒ってるのを見て喜んでる気がするんだけど…。
もしかして、芣婭の話し方が怒ってる風に聞こえていないのでは?
「団長、生きた心地がしませんでしたよ!?」
「皇太子殿下に強気に出た時は驚きましたよ、正直スカッとしましたけどね」
「まぁ、そこはレヴァリオと同感ですけどね。うちのお姫様を怖がらせて、必要以上に絡んできてましたし。芣婭ちゃん大丈夫?怖かったよな」
「うん、コンラットが守ってくれたから大丈夫」
ニックスとレヴァさんの2人が芣婭の左右に立ち、物凄く心配してくれる。
「フォンクライス卿、私の魔法で簡易的ですが氷嚢を作らせて頂きました。宜しければ、お使い下さい」
イケメン執事が氷を包んでいるハンカチをコンラットに渡していると、ぼいんちゃんが芣婭に急接近してきていた。
ケロちゃんとベロちゃんもぼいんちゃんの事を警戒していたが、ぼいんちゃんの言葉を聞いて警戒を解く。
「はぁー、すっごく可愛い!私の好みど真ん中」
「へ?」
「お嬢様、興奮し過ぎです。そちらのお嬢様が驚いています」
執事の言葉を聞いたぼいんちゃんは芣婭の表情を見て、すぐに謝ってきた。
「ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったの。私、ヴィオレット・イーヴェルよ、中部街の東エリアを統治してるの。こっちは、私の執事のオスカー」
「イーヴェル家に仕えています、オスカー・ブランと申します」
ぼいんちゃんに紹介されたイケメン執事が丁寧に自己紹介してくれる。
「バンビちゃんのお名前は?」
「バンビちゃん?それって、芣婭の事?」
「芣婭って言うのね?名前まで可愛らしいのね、バンビちゃんは」
「あ、バンビちゃんで確定なのね?」
「直接会えて良かった、貴方に会いたかったの」
芣婭に会いたかったって、どう言う意味なのかな…。
なんか意味深な感じがするんだけども。
「うちのお母様が大公に頼まれて、ギルベルトの未来について占ったの。そしたら、水晶に薄っすらだけど貴方が写ったのよ」
「ギルベルト君の事を呼び捨て!?ぼいんちゃんは何者!?」
「あははは!ぼいんちゃんって何?バンビちゃんって不思議な子なのね。ギルベルトとは友人よ、バンビちゃんが思っているような関係じゃないわ」
「そうなんだ、良かったぁ」
安心しているとぼいんちゃんが芣婭の手を握ってきて、満面の笑みを浮かべながら口を開く。
「ねぇ、これからうちに来ない?」
「え?ぼいんちゃんのお家に?」
「うん、駄目かしら?」
ぼいんちゃんはそう言って、捨てられた子犬のような目を芣婭に向けて来た。