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「この子なんだけどさ?…誰?」
と真風菜(まふな)がアルバムの写真の1枚に真風菜の隣に写る
眉毛が「へ」の形をした黒髪の小さな男の子を指指す。
「北海道行ったときは遊んでもらってたみたいでね。…名前なんて言ったっけ…」
「…もしかして平野(への)?」
「そうそう!平野(ひらの)って書いて平野(への)なのよね!真風菜よく覚えてたわね」
「うん…。まあ、ね」
という母とのやり取りが頭の中を反芻する真風菜。
まさか子どもの頃に会ってたとは…
と思いながらいつも通りの通学路を歩く真風菜。
いつもの通学路なのに、頭の中がいつもじゃないせいか、気づいたら学校の前についていた。
考え事をしていたせいで、時間が経つのが早かったのだ。
下駄箱で上履きに履き替え、教室に向かう。開きっぱなしの出入り口から教室に入る。
「マジで。球技大会ってさ?割とハンデ戦よな」
教室では空楽王(そらお)が鏡、時守、礼王(れお)に向かって話していた。
「なんで?」
と礼王が聞く。
「いや、体育祭と違って、クラス対抗なわけじゃん?
1年が3年と戦うってなったら部活で言ったら2年経験が違うわけじゃん?」
「あぁ〜。そうだね」
「不公平でね?」
「まあたしかに。でも逆に言うと、1年は3年に比べると2歳若いってことになるけど」
と言う礼王。
「たしかに。いや、でもさ?高校の2歳なんてなんでもなくね?
育ち盛りの2個上なんて、逆にレベルが2個上みたいなもんでしょ。
育ち盛りのときなんてパラメーターRPGよ。1歳歳取ったら1レベル上がって
体力とかの最大値も上がって、経験値も蓄えて、スキルも手に入れて。
ヤバいよ?レベル2個上はエグ強(つよ)よ?」
と力説する空楽王に
「たしかに」
と静かに納得する鏡。
「だしょ?」
「ま、でもそれで勝ったら超カッコいいけどね」
と言う礼王に
「…」
固まり、少し斜め上を向いて考え
「…たしかに」
納得するチョロい空楽王。そんなみんなの話を聞きながら笑う時守(ときもり)。
そんな時守を見ながら着席する真風菜。
平野くんは私のこと、あの写真のときのこと覚えているのだろうか…
と思う。
いや、私も、あんな、北海道で隣の家の子と遊んでたこと自体覚えてなかったしな…
そもそも割と小さい頃だから覚えてないだろうな…。てか覚えてるわけないか。
ま、北海道行ったって記憶はあるけど…。私が覚えてないってことは平野くんも覚えてないだろうな…
と思っていると
「…な?…ふな?…真風菜?真風菜ぁ〜」
という声で我に返る。
「ん?ん?」
「どしたの?ボーっとして」
と聞く子那恋(しなこ)。
「ん?ううん?ごめん、なに?」
「いや、テストも終わったことだし、4人で遊び行かないかなぁ〜って話。
優佳絵(ゆかえ)と華音(はなお)と真風菜と私の4人で」
「あぁ〜。うん!いいんじゃない?」
「よっしゃ〜。じゃあ昼どこ行くとか決めよぉ〜」
「うん。だね」
担任の渋谷先生が入ってきてみんな自分の席に戻る。時守も自分の席、真風菜の隣の席に戻る。
「おはよ、大鍵芸常(タケゲツ)さん」
と時守が挨拶する。
「おっ、おはよう、平野くん」
いつもの感じじゃなくなる真風菜。
「どしたの?」
いつもの感じじゃない真風菜の様子に不思議に思う時守。
「う、ううん?なんでもないよ?」
「そお?体調悪いとかなら無理しないほうが」
「全然全然!元気元気!」
と言う真風菜にクスッっと笑う時守。
その笑顔が、真風菜のアルバムにあった写真の子と重なる。そんな風に話していると
「えぇ〜…じゃあ、ホームルームを始めます」
と渋谷先生がホームルームを始めたので、教室は静かになる。
真風菜も先生に視線は向けつつも、頭の中では別のことを考えていた。
真風菜の幼少期の写真が貼られたアルバムの1枚には
眉毛がへの字に曲がった黒髪の男の子と真風菜が映っていた。
そしてそのことを母に聞いたら、その男の子の苗字が「平野(への)」だということがわかった。
特徴的な眉毛と「平野(ひらの)」と書いて「平野(への)」という特徴的な苗字。
こんなに特徴が一致していたら、十中八九、あの写真に写っていた男の子は時守だろう。そう考えていた。
髪の毛は染めれば変わるし、鼻の絆創膏だって、怪我すれば…
…え。怪我にしては長ない?
と思って思わず隣の時守を見る真風菜。時守のスッっと通った鼻の中央には絆創膏が貼られている。
それは2年生になってすぐ、時守が転校してきてから
中間テストが終わって今の今まで、ずっと絆創膏をしている。
怪我にしては絆創膏の中央のガーゼの部分に血は滲んでないし
なんにしても4月始めから、5月終わりまで、約2ヶ月という期間は切り傷などの怪我にしては長すぎる。
仮に鼻を骨折しているとしたら絆創膏では治らない。
激厨二病とか?
厨二病と聞いてよくイメージするのは
「左眼に宿し漆黒渦ノ龍(ブラックホールドラゴン)が目を覚ましてしまう…」
と眼帯をした左眼を手で抑えたりするものだが
それはマンガやアニメの世界でなどでキャラを濃く見せるためのものであり
実際世に潜む厨二病は、怪我もしていないのに絆創膏をしていたり
自分が作ったファンタジーストーリーの設定に沿って生活していたり
ハマっているマンガやアニメ(主に異世界転生ものやファンタジーもの
バトル系、異能力系など)のセリフを吐いたり
周りとは違うんだと言わんばかりに、スカした態度で過ごしたり
無理して無糖コーヒーを見せつけるように飲んだり
周りを嘲笑うような、そんな発言をしたりする人が厨二病とされている。
なので怪我をしてもいないのに絆創膏をしている場合
厨二病か、もしくは独特なファッションかのだいたい2択に絞られる。
時守の横顔を見てから、正面に向き直って、どこを見るわけでもなく考える。
…まあ、厨二病だとしても、発症するのはだいたい小学生の高学年くらいからだし。
ま、遅れて厨二病を発症する人もいなくはないけど…。平野くんそんな感じしないし…。
ファッションでつけてるにしても、ファッションなんて、そのとき好きなスタイルだってあるから
小さい頃と今では変わってて当然だと思うし、それにファッションに関しては流行り廃りもあるから…。
ま、絆創膏つけるファッションが流行った記憶はないけど…
と思う真風菜。そんなことを考えていたら朝のホームルームが終わった。
みんなそれぞれ1時間目の授業の準備をし、1時間目の授業が始まった。
真風菜は授業においては真面目なほうだが、真面目な“ほう”というだけで真面目ではない。
授業中にスマホを触ったりもする。何気なく、別に音楽を聴いたりゲームをしたりする目的ではなく
何気なく画面をつけると、時守からのLIMEのメッセージの通知があった。「ん?」と思い見る。
時守「熱烈な視線を感じたんだけど…」
時守がスタンプを送信しました。
と2つ通知が来ていた。
バレてたか…
と思い返信を
正直に鼻の絆創膏の話する?…いや、気にしていたらあれだし…
といろいろ考えてからする。
真風菜「いや、鼻高いなぁ〜。羨ましいなぁ〜と思いまして…」
猫が「すいません」と謝っているスタンプを送った。
しばらくしてから時守はスマホをつける。真風菜からのメッセージが来ており確認する。
そして真風菜からのメッセージを読んで
鼻?
と思いながら自分の鼻筋を触る。
そんな鼻高いか?
と心の中で笑いながら返信をする。真風菜もしばらくしてからスマホを見る。
すると時守からのメッセージが届いていて
それを確認して返信するというのが4時間目の授業が終わるまで続いた。
時守「鼻?そんな高いかな?」
真風菜「高いよ。スッって通ってる」
時守「大鍵芸常さんも鼻通ってんじゃんw」
真風菜「え?そおかな?そうでもないでしょ」
時守「それを言うならオレもじゃない?w」
真風菜「いや、平野くんは鼻通ってる」
時守「頑固だねぇ〜w」
真風菜「そこは譲らないw」
時守「ありがたく受け取っておきますw」
真風菜「受け取っといてw」
と送った後、やり取りを眺めて
中身ねぇ〜
とクスッっと笑った真風菜。4時間目までの授業が終わり
購買組は購買にお昼ご飯を買いに行って、女子は女子、男子は男子で固まってお昼ご飯を食べた。
「優佳絵さー?部活ないときみんなで遊び行こうよ」
「ん?別にいいけど?」
「華音もいけるでしょ?」
「うん〜…バイトが入ってない日なら」
「そっかぁ〜!華音バイトしてるんだ。めっちゃ忘れてた」
と天井に向かって嘆く子那恋。
「まあ忘れるよな。わかる」
と言いながらお弁当を食べる優佳絵。
「じゃ、日程合わせよ」
と子那恋がスマホを取り出して「じゃあこの日は?」とスケジュールを決め始めた。
「ヤダァ〜…補習やだぁ〜…」
と空楽王がイスの背もたれに、これでもかってくらいに寄りかかる。
「補習なにしてんの?」
「ん?なんかプリント配られてー、それを埋めて提出」
「そんだけ?」
「そんだけ」
「めっちゃ楽じゃん」
「楽だけどさぁ〜…。時間取られんの嫌」
「じゃあ赤取らないように勉強してください」
と笑いながら言う礼王。礼王はたまにメガネの位置を直す。
メガネのつるを曲げる部分、メガネの両端を中指と親指で持って位置を直す。
その仕草を見て時守が思い出して喋り出す。
「あのさ。オレって鼻高いのかな?」
と鼻を触りがなら言う。
「ん?高いんじゃね?」
と空楽王が言う。
「うん。高いほうだと思うよ」
礼王も同意する。
「そうなんだ?」
「どしたん急に」
と聞く空楽王。
「いや、言われてさ?鼻通ってるよねって。でも自分ではあんまわかんなくてさ」
「ま、鼻高い以上にそれが気になるけどな、ふつー」
と自分の鼻の中腹を指指す空楽王。
「あぁ〜」
と言いながら自分の鼻の中腹に貼られた絆創膏を触る時守。
「それのことは言われなかったん?」
「言われなかったね」
「ま、気になっても言えんか。デリケートな話かもしれないしな」
と言う空楽王に
「めっちゃ聞いてたじゃん」
と呟く鏡。
「たしかに」
と笑う礼王。
「でも外してもよくね?そんな気にならんて」
「いやぁ〜…まあぁ〜…」
「周りがあれでも本人は気にしてる場合だってあるでしょ」
「あぁ〜。たしかにな」
なんて話をしていた。そんなこんなでお昼も終わり、午後の授業が始まった。
午前で一旦メッセージのやり取りには区切りがついていたので
時守からメッセージは来なかった。メッセージは真風菜で終わっているので
よほどのことがない限り、連続して送るのには抵抗があった。
なにげなくノートに、へのへのもへじ、を描く真風菜。
眉毛は「への字」だし、口も気を抜くと「への字」になる。…
鼻の部分の「も」の横線2本を絆創膏にしてみる
…うん。平野くんだ
また時守を見ようと動きかけた頭を止める。
また熱視線を送ってどうする
と思うが
熱視線じゃなければいいか。チラッっとなら
と謎理論を展開し、チラッっとだけ時守を見た。
すると時守はお昼ご飯を食べた満腹感で眠気に襲われてうとうとしていた。
あら。…可愛い
なんて思った。時守の綺麗な白い髪の毛が、お昼の陽射しを透過し
うとうととしているせいで、ゆらゆらと揺れる。地毛が白いわけではないのでまつ毛は黒い。
その長くて綺麗なまつ毛が、開いたり閉じたりする目に合わせて動く。
うとうともへじくんだ
勝手に「へのへの」を「うとうと」に変換して、変な呼び方を作った真風菜。
「うとうともへじ」をへのへのもへじの隣に描いてみる。
「う」の上の棒が眉毛、下の「つ」部分は眉毛と目の間の線。
「と」の上に突き出た棒をまつ毛に見立てて、閉じている目にしてみた。
うん。うとうともへじくんだ
なんてことをして遊んでいたら5時間目の授業が終わり、その後の授業も終え、その日の学校が終わった。
「んじゃ、またLIMEで打ち合わせしようねぇ〜」
と子那恋や華音、優佳絵と別れ、家へと帰った。スクールバッグを置く。
すると時守からもらってスクールバッグにつけた
三毛猫が小さなシロクマのぬいぐるみを持っているぬいぐるみキーホルダーが目に入る。
「そういえばこれ、平野くんからもらったんだよね…」
掌の上に乗せる。ふと思い出したことがあって斜め上を見る。
「…そういえば、別の取ろうとしたらこれ取れたって言ってたような…」
もう一度そのぬいぐるみキーホルダーに視線を戻す。
シロクマ…。シロクマ=平野くん 猫、…猫=私?猫がシロクマを抱っこしてる…。遠回しな愛の告白?
なんてことを思いながらも
「なあぁ〜んてね。さて着替え着替え」
と言いながら部屋着に着替える真風菜だった。
晩御飯を食べ、お風呂に入る前、洗面台の前で絆創膏を外す時守。
「外すべき?」
と呟き、絆創膏を丸めて捨てて、お風呂に入った時守だった。
コメント
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みぅ🤍🥀です、読んだよ〜 第17話、真風菜が子どもの頃の写真で時守くんと会ってたって知ってから、頭の中ぐるぐるしてる感じすごく伝わってきた…!「うとうともへじくん」って呼んで描いてるの、めっちゃ可愛くて思わず笑顔になっちゃった🫶 それに、時守くんの鼻の絆創膏がずっと気になってるのも、真風菜の視点だからこそ引っかかる伏線だよね…どんな理由があって貼ってるんだろう。授業中にLIMEで他愛もないやり取りしてるのも、距離感が近づいてる感じがしてドキドキした🩹 結愛さん、またじわっとくるエピソードありがとうございます。 次も楽しみにしてます🧸
#創作
むノー
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M.S
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#マフィア
ゆあ
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