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年が明けて最初の休日。
白石さんと、初詣に行くことになった。
「今年はちゃんと、神様にご挨拶しないとですね」
待ち合わせ場所でそう言って微笑む彼女は、水色のコートに身を包み、いつも以上に“清楚”だった。
……この見た目から、これから向かう神社の性質など、誰が想像できるだろう。
「ここ、前から行ってみたかったんです♡」
京急線を降り、目的地へ向かう道すがら、彼女は終始ご機嫌だった。
***
金山神社の鳥居をくぐったとたん、僕は、思わず足を止めた。
……でかい。
想像の三倍は、でかい。
視界のあちこちに、誇らしげにそびえ立つ男の“アレ”の像。
ホームページを見てきたから、知識としては知っていた。ここが性の神様を祀る神社だということも。
「……うわ……」
思わず本音が漏れる。
「すごいですね」
隣を見ると、白石さんは引くどころか、むしろ感心した様子で像を眺めていた。
「立派です♡」
「……立派、ですか」
「はい。生命力あふれる感じがして、ご利益ありそう」
その言い方が妙に真面目で、余計にどう反応していいかわからなかった。……この人、やっぱりどこかズレている。
参道を歩く間も、像たちは遠慮なく自己主張してくる。僕は終始、目のやり場に困っていた。
「……なかなか個性的ですね」
恐る恐る言うと、彼女はきょとんと首を傾げる。
「そうですか? 縁結びや子宝で、すごく有名な神様なんですよ♡」
……え、そうなの?
違和感を抱えたまま、参拝の列に並ぶ。やがて順番が来て、賽銭を入れた。
僕は、そっと手を合わせた。
──神様。
白石さんと、こうして隣を歩けているだけで十分です。どうか、この関係を壊さないでください。
隣で静かに目を閉じている彼女の横顔は、真剣で、凛としていた。 しかし、彼女は同じように手を合わせながら、まったく別のことを考えていた。
***
(神様……)
ひよりは、目を閉じて願っていた。
(陽一さんが、私好みに育ちますように。枯れた本能が目覚めますように♡今年は、欲望まみれの一年になりますように♡)
もちろん口には出さない。だがその内心は、神前だろうと関係なく、完全に肉食獣だった。