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私は操縦桿を握りながら、眼下に広がる綿菓子のような雲を見つめていた。今日は特によく晴れた日で、青空に浮かぶ白い雲が絨毯のようにどこまでも続いていた。
「今日は風向きもいいし、最高のフライト日和だな」
独り言を呟きながら、私は高度を上げていった。雲の上に出ると、視界は一気に開けた。無限に広がる青空と、遠くに見える山々のシルエット。完璧な景色だった。
しばらく飛んでいると、前方に不思議な光景が見えてきた。雲の一部が渦を巻いているのだ。最初は小さな渦だったのが、見る間に大きくなっていく。
「あれは何だろう?」
好奇心に駆られて近づいてみると、それはただの気流ではなく、何やら神秘的な光を放っていることに気づいた。まるで雲の中に別の世界への入り口があるかのようだ。
さらに接近すると、突然強い突風が吹きつけた。機体が大きく揺れ、操作が効かなくなる。
「しまった!」
慌てて修正しようとするが、もう遅かった。突風に押し流されるまま、渦の中に吸い込まれてしまう。
次の瞬間、私は雲で出来た王国にいた。そこには色とりどりの雲で作られた建物があり、ふわふわとした生き物たちが飛び交っている。
「まさか……雲の上にこんな場所があったなんて!」
驚きと興奮で胸が高鳴る。しかし同時に、この未知の世界からの脱出方法を探す必要があることも理解していた。
まずはこの不思議な場所の住人たちとコミュニケーションを取らなければ。彼らの協力を得られれば、元の世界に戻る手がかりが見つかるかもしれない。
こうして私は、思いがけない形で始まった冒険に身を投じることになった。
雲でできたわたあめを食べたり、雲でできたドラゴンにも会った。どうやら私は夢を見ているみたいだ。雲の上の世界は自由自在だ。
しかしそんなことをしていたら、天候が変わり嵐になってしまう。さっきまでの平和だったのに、雲が真っ黒になる。雷も鳴っている。
「そろそろ帰らなくちゃ」
私は焦りを感じ始めた。雲の上の世界での素晴らしい冒険も楽しかったが、現実世界で待っている人々や責任があることを思い出した。
「みんな心配してるだろうな……」
嵐の中で壊れた飛行機を操縦するのは危険だが、ここで立ち往生するわけにはいかない。
「よし、行くぞ!」
覚悟を決めた私は、風雨の中を切り抜けて進む決意をした。雷の閃光と轟音の中、必死に操縦桿を操る。
雲の王国の住人たちは、心配そうな表情で私を見送ってくれた。彼らとの別れは寂しいものだったが、いつかまた訪れる約束をして飛び立った。
嵐の中を飛ぶのは想像以上に困難だった。激しい横風に煽られ、何度も機体が傾く。計器類も不安定になり、方向感覚が失われていく。
「落ち着け……冷静にならなきゃ」
自分に言い聞かせながら、私は集中力を研ぎ澄ませた。過去の訓練で学んだ知識と技術を総動員し、最善の判断を下していく。
長時間の苦闘の末、ついに嵐の出口が見えてきた。薄暗い雲の壁の向こうに、青空が覗いている。
「あと少しだ!」
最後の力を振り絞って加速し、一気に雲を抜け出した。
嵐から抜け出すとそこは美しい太陽に照らされ虹がかかっていた。とても美しい景色だ。
その景色に見とれていると、ふと声が聞こえた。
「早く逃げるんだ。ここは危険だ」
後ろを見るとそこには神様がいた。神様が私を助けに来てくれたみたいだ。
私は神様の言う通りに帰還することにした。これ以上ここにいても迷惑をかけてしまうだけだからだ。
雲の国を旅立ち、飛行場に向かうために飛行機の進路を変えた。後ろにはまだ虹がかかったままだった。あの雲の国はどうなるんだろう。嵐を抜けたとしても、あの不思議な世界がこれからどうなるのかが少し気になる。