ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第1話
ある日、夢を見た。
何処か懐かしさを感じさせるものだった。羅城門の下で笑っている私と可憐な少女。
いつか起きた出来事のように思えるが残念なことに思い出せない。少女のことを思い出そうとする度、胸が痛くなる。どうしてだろうか。変な気分に浸りながら気分転換に人里に足を向ける。
人里では豊聡耳神子が演説をしていた。私には到底理解できない内容だ。人里の人間もそれほど興味を示していないようだった。
ふと、演説台に目をやると霍青娥ー邪仙がいた。いつもならキョンシーも傍にいるはずだが見当たらなかった。私はそのキョンシーを見たことがないのだが、額に札を付けられ、「芳香ちゃん♡ 今日も腐っててステキ」と言われてる様は可哀想との事。私には青娥の趣味が理解できないが、人の趣味にとやかく言う趣味はないし、ましてや邪仙なぞに言ったらどんな目に合わされることか。
人里は特にすることもないし久しぶりに墓地に向かうことにした。
墓地はひんやりしていて気持ちがいい。いつも霊夢達に説教をして疲れた時にはここで休んでいたこともあった。墓地にある大木の傍で座り込むと風のざわめきしか聞こえず、いい休憩になるのだ。
しかし、今日は先客がいたようだ。大木の近くに何やら俳句を読んでいる人がいる。墓地に来てまで俳句を読むなんて、いい趣味してるなあと思いつつその人に近寄った。
ふと、声をかけてみた。すると……
その人は人ではなかった。
私は思わず尻もちを着きそうになってしまった。その姿はキョンシーであった。しかし、札がつけられていない。 …ということは青娥のキョンシーでは無いということだ。安心した。青娥のキョンシーに話しかけるなんて後で青娥に何をされるかわかったものじゃない。 安堵感を抱きつつ私は声をかけた。
「ねえ、貴方はどうしてここにいるの?」
…沈黙が流れた。私は戸惑いながら頭を巡らせる。もしかして喋られないのでは無いか?体が腐っているから舌もまともに動かせないのではないか?
「どうしてだろーなー。」
!っ。その陽気な声に驚きを隠せなかった。良かった。一応喋れるみたいだ。…………そのキョンシーの姿は夢に出てきた少女にそっくりだった。体は腐っているものの、服装、髪型、体型が似ていた。もしかしてこのキョンシーと私は以前あったことがあるのか?そんな考えが頭をよぎる。
「俳句を読むと何故だか昔のことを思い出せそうな気がするんだー。」
へぇ。そうなんだ。このキョンシーが私と昔あっていたことを思い出してくれれば何故羅城門の下で共に笑いあっていたのか分かるのだが…
気づいたらもう夕暮れだった。いつの間にかにあのキョンシーはいなくなっていた。
私の足元には何か文字が掘られていた。
ま…た あし…た?
また明日 と描きたかったのだろう。乱雑な字からあのキョンシーが書いたと考えられる。また、明日か…
今日はもう家に帰り、明日に向けて早めに寝ることにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コメント
1件
気軽に感想をコメントに記入してください!