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◻︎結婚について考える
好きで好きでたまらなくて結婚したわけではないから、結婚することがうれしかったというよりは家族になれるということがうれしかったのかもしれない。
「西野さんのご主人は、その一緒にいた男の人を殴ったんでしょ?それは、あきらかに嫉妬ですよ。多分、自分の嫁だと安心していたのに、すっと誰かに取られそうになって慌てたんじゃないかな?きっと、そういう場面にならないと西野さんのことを好きだと感じないのかも?」
岡田の意見。
「ちょっと待って、あなた。それは嫉妬とは少し違うかもしれませんよ。取られそうになって頭にくるなんて、まるで幼稚園児がおもちゃを取られて怒るのと同じじゃないですか?」
「そうか、少し違うか」
「好きな車いじりばかりをやって、普段の生活の面倒なことは奥さんにやらせて、そしてちょっと他の人と仲良くすると怒るなんて、本当に子どもだわ!」
私より、美智恵の声が大きくなる。
「言われてみるとそうかもしれません。仕事も車関係だから好きでやってるし。人当たりはいいんですよ。けど…夫としてはどうなのかなぁ?」
「西野さんはどうしたいの?」
「私?私は…ちゃんと家族になりたいです」
「どうしたらなれると思う?」
「…わからない。今も連絡もしてきてくれないし、私のことなんてなんとも思ってないのかもしれないです。きっと飽きてきたおもちゃみたいなものかも…」
そこまで言って、涙が止まらなくなった。
____こんなはずじゃなかったのに…
「家のことは心配ないんですか?」
「あ、はい、お義母さんが子供を見てるから気が済むまで1人の時間を楽しんでいいと言ってくれました」
「いいお義母さんでよかったですね。じゃ、せっかくなのでもう少し考えてみてもいいかもしれませんね。このままなし崩し的に家に戻ってもなにも解決しないと思うから」
はい、どうぞとおしぼりを渡してくれた。
____私、泣きたかったんだなぁ
「何か役に立てることがあったら連絡してくださいね」
そう言って、連絡先を教えてくれた。
「じゃあ、そろそろ……行きますね。今日は本当にありがとうございました」
岡田夫婦は深々と頭を下げ、帰って行った。
美智江の後ろ姿が、どこか亡くなった母に似ていた。
____私の結婚生活は、ポンコツだったよ、お母さん…。お母さんみたいな不幸な結婚だけはしないと思ってたのに
ふと、亡くなった母に、会いたくなった。