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「山中、また呼ばれてるぞ」
山中「うっわ、マジかよ….」
教室の後ろでクラスメイトが笑う中、山中はわざと大きくため息をついた。
「そんなに嫌ならちゃんとやれよ」
山中「うるせー」
軽く返しながらも、内心は少し違った。
山中(…..嫌じゃないし)
むしろ、その逆だった。
放課後、誰もいなくなった教室。
それは俺にとって、特別な時間だった。
吉田「山中」
静かな教室に、低くて落ち着いた声が響く。
山中「来ましたよ」
吉田「遅い」
山中「ちゃんと時間ぴったりです」
吉田「ギリギリな」
そう言いながらも、吉田は少しだけ口元を緩めた。
その表情を見るたび、胸が少し熱くなる。
山中(…….やっぱ好きだな)
吉田「ほら座れ。今日は前より少し進めるぞ」
山中「えー…」
吉田「文句言うな」
山中「先生が厳しすぎるんですよ」
吉田「お前がサボりすぎなんだ」
山中「サボってないですって」
軽口の応酬。
でもそのやりとりが、何より心地よかった。
吉田「ここ、なんでこうなるかわかるか?」
山中「えーっと….」
わかっている問題でも、わざと少し考える。
山中「…..わかんないです」
吉田「ほんとか?」
山中「ほんとです」
吉田「嘘つけ」
山中「ひどいなあ」
吉田はため息をつきながら、ノートにペンを走らせた。
吉田「いいか、ここはなー」
説明が始まる。
距離が近い。
肩が触れそうで、俺は息を詰めてしまう。
山中(近いって…)
それだけで集中なんてできるわけがない。
吉田「山中、聞いてるか?」
山中「聞いてます」
吉田「怪しいな」
山中「ちゃんと聞いてますって」
吉田「じゃあ説明してみろ」
山中「……」
吉田「ほら」
山中「……わかんないです」
吉田「やっぱりな」
呆れた顔。
でも、その優しさが滲んでいる。
山中(この顔、好きだな)
吉田「先生って彼女いないんですか?」
ある日の授業中、山中は何気ない顔でそう聞いた。
教室が一瞬静まり返る。
吉田「は?」
吉田はチョークを持ったまま固まった。
山中「いや、なんとなく気になって」
吉田「授業中にする質問じゃないだろ」
山中「でも気になるじゃないですか」
クラスがざわつく。
吉田「いない」
山中「え、マジで?」
吉田「マジで」
山中「なんでですか?」
吉田は少しだけ考えてから、
吉田「…..縁がない」
とだけ答えた。
(絶対違うだろ)
山中は内心でツッコミを入れる。
山中「先生って鈍そうですよね」
吉田「おい」
山中「絶対気づかないタイプ」
吉田「何にだよ」
山中「…..なんでもないです」
山中(俺の気持ちとか)
そう思いながら、視線を逸らす。