青井から風邪を引いたと連絡が来た。移るから2~3日は家に来るなと。当然心配なので早めに退勤した後、買い物してから家に行った。
「アオセーン…寝てるかな。」
寝室に行くと苦しそうな顔をしながら寝ていた。悪い夢でも見てるのだろうか。
「すげぇ顔してる。一旦起こしたほうが良いか?…いやでもな、無理やり起こすのもあれだしな。なんか作るか。」
とりあえず額に冷えピタを貼ってキッチンに立った。意外と手際の良いつぼ浦はスマホでレシピを検索しながら雑炊、うどん、スープと料理を次々完成させていく。後片付けをしていると後ろから小さな声がした。
「誰かいる?つぼ浦?」
「起こしちまったか、すまん。アオセンすごいしかめっ面して寝てたけど大丈夫すか?」
「なんか変な夢見てたわ。風邪とかの時に毎回見る夢あるじゃん。…てか来るなって言っただろ。」
「言われてはいそーですかって素直に聞けるかっての。病院は?」
「行ったよ、風邪拗らしてんだって。」
「思ったより酷い?仕事休んで来れば良かったか。熱測ったすか?」
体温計を渡して測ってみると39.7分。ハァハァと辛そうに息が上がっている。
「こりゃ見事に拗らせてるな。なんか食べれます?一応色々作ったけど。」
「えっお前料理できんの?…今は無理かも。」
「じゃあゼリーとかプリンとかだけでも。そしたら薬飲んでください。」
「ごめんありがと。」
辛そうに体を起こす青井の背中を支えつつ、ゼリーを食べさせ薬を飲ませた。
「汗かいてると冷えるか。着替えられます?」
「えっいいよそこまでは、マジで移しちゃうし。もう帰んな?」
「こんな弱ってる人間置いてけるほど薄情じゃねぇよ。アオセンもこういう時ぐらいもっと俺頼ってください。」
「そーお?ごめんありがとね。」
服を脱がせてタオルで体を拭いて、新しい服を着せて。実に手際良くパパッとこなしていく。
「なんかお前すごいな、手際良すぎ。」
「そっすか?別に普通すよ。今熱いか寒いかで言ったらどっちすか?」
「うーん…熱いかな。」
「そしたらエアコン軽くかけとくか。よし、じゃあ俺隣の部屋いるんでなんかあったら呼んでください。」
「うん、ありがと。おやすみ。」
「おやすみ。早く元気になってくださいね。」
深夜トイレに起きるとソファで寝るつぼ浦が目に入った。落ちているブランケットをかけ直してごめん、と心の中で謝りながら頭を撫でた。
翌日目を覚ますとつぼ浦はご飯を食べているようだった。
「つぼ浦おはよー。今何時?」
「あ、起きたすか。今12時半、よく寝たすね。」
「もう昼かよ。…お腹空いたな。」
「食欲出てきたすか?雑炊とうどんと野菜スープがあるけど。」
「うどんがいいな。」
「じゃ温めてくるんでちょい待ち。」
つぼ浦の家庭的な一面に驚きつつ待っていると出汁の良い香りが漂ってきた。
「お待ちどー。ベッドで食べるすか?こっち来ます?」
「テーブルで食べようかな。」
「元気出てきたか、良かった。じゃこっちで一緒に食べるすか。たぶん美味い。」
2人で昼食を取り薬を飲んで、またベッドに戻った。熱はまだあるが体は大分楽になっていた。
「熱が下がんねーのか…またなんかあったら呼んでくださいね。」
「うん、おやすみ。」
1度寝室から出たが数分もしない内にすぐ呼ばれた。
「どーしたすか?」
「んー…なんかちょっと心細いかも。」
「あーえっとー…俺はどうすれば?」
「手繋いでてほしいな。」
「それならいくらでも。」
ベッドに座って手を取ると安心したような顔をして、すぐに寝息を立てた。早く良くなれと願いながら手をギュッと握った。
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