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ラムネ 低浮上
5
【ゲーム】
🦈「うわ、またやられた」
🍵「えー、弱すぎない?」
すちが笑いながらコントローラーを揺らす。
🍵「ゲーム下手だよね」
🦈「……今のは操作が悪い」
🍵「いや腕でしょ」
🦈「違う」
🍵「腕です」
言い合いながらも、空気はゆるい。
ソファに並んで座って、テレビの画面を見つめる時間。
それだけなのに、妙に楽しい。
🦈「もう一回」
🍵「はいはい」
ゲームが再開される。
けど、すちは少しだけ考えて――
🍵「……ねぇ、こさめちゃん」
🦈「ん?」
🍵「ちょっと貸して」
🦈「なに?」
返事を待たずに、すちはすっと立ち上がって――
そのまま、こさめの後ろに回った。
🦈「え?」
🍵「こうした方が分かりやすい」
言いながら。
背後から、こさめを抱き込むように腕を回す。
🦈「っ……!?」
ぴたり、と。
背中に体温が触れる。
🦈「す、すっちー……?」
🍵「ほら、ここでジャンプ」
そのまま、こさめの手に自分の手を重ねる。
コントローラーごと、包み込むみたいに。
🍵「こうやってタイミング合わせて――」
🦈「ちょ、待って」
🍵「なに」
🦈「近い」
🍵「近い方が分かるでしょ」
🦈「そういう問題じゃなくて」
耳元で声がする。
息が、かかる。
🍵「……ここで避ける」
指が動くたびに、触れてくる。
(むり……)
ゲームどころじゃない。
画面なんて全然見えてない。
🍵「こさめちゃん、ちゃんと見てる?」
🦈「見てる……!」
見てない。
完全に嘘。
🍵「嘘でしょ」
🦈「見てるってば!」
🍵「じゃあ今の敵なに」
🦈「……」
言葉に詰まる。
🍵「ほら」
すちは少しだけ笑った。
🍵「やっぱ見てない」
🦈「だって……!」
思わず声が大きくなる。
でも、言い訳が出てこない。
(こんなの……集中できるわけないじゃん……)
心臓がうるさくて、手も少し震えてる。
なのに。
すちは、平然としている。
🍵「ほら、もう一回」
🦈「え、まだやるの」
🍵「当たり前」
さらに、ぎゅっと距離を詰める。
🍵「ちゃんとできるまで」
🦈「できない!」
🍵「なんで」
🦈「なんでって……!」
言えない。
理由なんて。
🍵「……手、力入りすぎ」
🦈「入るよ!」
🍵「リラックスして」
🦈「無理!」
完全にパニック。
それでも、すちは楽しそうで。
🍵「……こういうの、いいね」
ぽつりと呟く。
🦈「……なにが」
🍵「一緒にやってる感じする」
🦈「……っ」
その一言に、余計に意識が持っていかれる。
(なにそれ……)
ずるい。
🍵「ほら、ジャンプ」
🦈「今できない!」
🍵「なんで」
🦈「できないからできないの!」
🍵「意味分かんない」
くすっと笑う声。
🍵「……顔赤いよ」
🦈「赤くない!」
🍵「赤い」
🦈「赤くない!」
デジャヴみたいなやり取り。
でも、距離はさっきよりずっと近い。
🍵「……そんな嫌?」
ふと、すちの声が少しだけ落ちる。
その問いに、こさめは一瞬だけ固まって――
🦈「……嫌じゃない」
小さく、答える。
🍵「……ならいい」
すちはすぐにそう返して、また操作に戻る。
そのあっさりした反応に、少しだけ拍子抜けして。
でも。
🦈「……すっちー」
🍵「なに」
🦈「楽しいの?」
🍵「うん」
迷いなく答える。
🍵「めちゃくちゃ楽しい」
その声が、やけに近くて。
🦈「……ゲームが?」
🍵「それもあるけど」
少しだけ間を置いて。
🍵「こうやってやるのが」
🦈「……っ」
完全に、追い詰められる。
逃げ場がない。
🍵「……こさめちゃん」
🦈「なに……」
🍵「もうちょっとこっち向いて」
🦈「なんで」
🍵「画面見にくい」
🦈「うそでしょ」
でも。
言われるまま、少しだけ顔を動かす。
その瞬間、距離がさらに近くなる。
🍵「……ほら、いい感じ」
満足そうな声。
(よくない……)
心の中で全力否定する。
けど、体は離れない。
🍵「……次、勝つよ」
🦈「無理……」
🍵「なんで」
🦈「集中できない……」
🍵「……」
すちは少しだけ黙ってから――
ふっと笑った。
🍵「そっか」
🦈「なにその反応」
🍵「いや」
こさめの手に重ねた指に、少しだけ力を込める。
🍵「じゃあ、もっと集中できなくしてあげよっか」
🦈「へ?」
完全に悪い顔。
さっきまでの穏やかさはどこへやら。
🦈「ちょ、すっちー――」
その声は、ゲームの音にかき消される。
画面の中ではキャラがジャンプしているのに、
こさめの操作は、完全に止まっていた。
コメント
2件
尊いっすわ 、 ゲームとか...