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ラムネ 低浮上
5
【まだいます】
🦈「すっちぃぃぃ!!!!」
部屋に響く、こさめの悲鳴。
🍵「どうしたの!?」
慌てて駆けつけると――
🦈「む、む、む、むし!!」
ベッドの上から、震えながら指をさしている。
その先。
🍵「……あー」
小さな黒い影が、壁を這っていた。
🍵「ちょっと待ってて」
すちはため息まじりに言って、ティッシュを手に取る。
🦈「むりむりむりむり!!」
🍵「大丈夫だから」
近づいて、さっと。
――数秒。
🍵「はい、終わり」
あっさりと処分して、ゴミ箱へ。
振り返ると。
🍵「……こさめちゃん?」
なぜか、まだベッドの上で固まっている。
🦈「……どこ」
🍵「え?」
🦈「どこいったの……」
🍵「……」
その様子を見て。
すちは、ほんの一瞬だけ考えて――
🍵「……まだいる」
🦈「っっっ!?」
次の瞬間。
どんっ、と勢いよく抱きつかれる。
🦈「いやぁぁぁ!!」
🍵「ちょ、近い近い」
🦈「やだ!無理!離れない!」
がっちりと、腕にしがみつかれる。
心臓の音まで伝わってきそうな距離。
🦈「すっちー、やって!はやく!」
🍵「……うん」
(もう終わってるけど)
口には出さない。
だって。
🍵「……怖い?」
🦈「怖いに決まってるでしょ!!」
涙目で見上げてくる。
そのまま、ぎゅっとさらに抱きついてくる。
🍵「……そっか」
すちは少しだけ目を細めた。
(……これ、悪くない)
むしろ。
かなり、いい。
🦈「ねぇ、どこ!?」
🍵「そのへん」
🦈「ざっくりすぎる!!」
🍵「動いてる」
🦈「言わないで!!」
パニックのまま、顔を胸元に押しつけてくる。
🦈「無理……ほんと無理……」
🍵「……大丈夫だって」
ぽん、と軽く頭を撫でる。
その瞬間、びくっと体が震える。
🦈「いま動いた!?」
🍵「動いてない」
🦈「うそ!!」
完全に信用されてない。
でも、離れようとはしない。
むしろ。
🦈「……離れないで」
小さく、そう言う。
🍵「……離れないよ」
すちは自然にそう返す。
(まだ言わなくていいか)
この状態、もう少しだけ続けたい。
🦈「……すっちー」
🍵「なに」
🦈「ちゃんと見ててね……」
🍵「見てる」
🦈「ほんとに?」
🍵「ほんとに」
嘘だけど。
でも、声はやけに落ち着いていて。
それが余計に安心するのか、こさめは少しだけ力を抜いた。
それでも、腕は離さない。
🦈「……怖い」
🍵「うん」
🦈「なんでこんなのいるの……」
🍵「さあ」
🦈「やだ……」
また少しだけ抱きつく力が強くなる。
(……かわいい)
素直に、そう思う。
こういうときは完全に無防備で。
🦈「……ねぇ」
🍵「なに」
🦈「もういない?」
🍵「……」
少しだけ、間を置く。
🍵「……まだいるかも」
🦈「いやぁぁぁ!!」
さらに強く抱きつかれる。
🦈「ちゃんとやって!!」
🍵「やってる」
🦈「やってないでしょ!!」
🍵「やってるって」
笑いそうになるのを、なんとかこらえる。
🦈「……すっちー」
🍵「なに」
🦈「助けて……」
その一言が、やけに真っ直ぐで。
さすがに、これ以上はやりすぎかと思って。
すちは小さく息を吐いた。
🍵「……もう大丈夫」
🦈「……え?」
🍵「ずっと前に終わってる」
数秒の沈黙。
🦈「……は?」
こさめが、ゆっくり顔を上げる。
🦈「……今なんて?」
🍵「もういないって」
🦈「……」
🍵「……」
🦈「……最初のほうから?」
🍵「うん」
ぴたっと、動きが止まる。
そして――
🦈「……最低」
ぼそっと一言。
🍵「ごめん」
🦈「ごめんじゃない!!」
ばしっと軽く叩かれる。
でも、そのあとも。
腕は、離れない。
🍵「……離れないんだ」
🦈「……まだ怖いの」
🍵「もういないのに」
🦈「気持ちの問題!」
ちょっとだけむくれた顔。
でも、完全には怒ってない。
🦈「……でも」
こさめが、小さく呟く。
🦈「ちゃんと来てくれたのは、ありがと」
🍵「……うん」
🦈「……ねぇ」
🍵「なに」
🦈「もうちょっとこのままでもいい?」
🍵「……虫いないのに?」
🦈「いないからいいの!」
🍵「……そっか」
すちは軽く肩をすくめて、
🍵「じゃあ、もう少しだけ」
ぽん、ともう一度頭を撫でた。
さっきよりも、少しだけ優しく。
コメント
2件
えぇ…なにこれシチュ天才…?