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会議室の重い扉が閉まった瞬間、廊下の冷たい空気が肌を刺した。
私の心臓は、いまだかつてないほど激しく鐘を打ち鳴らしている。
「高瀬くん…あなた、なんてことを……」
ようやく絞り出した声が、静かな廊下に震えて響いた。
キャリア、評判、将来。
彼はそれらすべてを天秤にかけ、迷わず私の方を選んだのだ。
高瀬くんは無言のまま私の手首を掴むと、人気のない非常階段の踊り場へと私を連れて行った。
そこは、私たちが何度も言葉を交わし、秘密を共有してきた場所。
「……怒ってますか?」
振り返った彼の顔は
先ほどまでの凛々しい姿とは一変して、捨てられた子犬のように不安げに揺れていた。
「…あんなこと言ったら、あなたが今まで積み上げてきたものが、全部台無しになるかもしれないのよ? どうしてあんな無茶をしたの」
「台無しになんてなりません」
高瀬くんは私の両肩を掴み、真っ直ぐに私の瞳を覗き込んだ。
「凛さん。俺、さっき言ったこと、一文字だって嘘じゃありません。……あんたを一生、俺の隣で甘やかしたい。俺だけのものにしたいって、本気で思ってる」
逃げ場のない熱い告白。
今までの私なら、怖くなって目を逸らしていただろう。
でも、今の私の胸にあるのは、恐怖ではなく
溢れ出しそうなほどの熱い感情だった。
「……私もよ」
「え……?」
「私も……もう、佐藤課長としてあなたを見るのは限界。…高瀬くん。私、あなたを好きになってた。公私混同してしまうぐらい…あなたが、好きなの」
初めて口にした「好き」という言葉。
高瀬くんは目を見開いた後、泣き出しそうな、でも最高に幸せそうな顔で私を抱きしめた。
「…やっと、言ってくれた。……凛さん、俺も大好きです。…凛さんのこと、もう離したくないです」
力強く回された腕。
彼の心音と私の心音が、重なり合って一つになる。
「鉄の女」と呼ばれた上司と、その「有能な部下」。
その仮面は、今、この場所で完全に砕け散り
ただ愛し合うだけの男と女がそこにいた。
おまる