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それから一年後。
瀬戸柚希は憧れの新島陽が通う高校に入学した。
けれど教室の中での柚希は、相変わらずひとりだった。
切れ長の瞳と整った顔立ちは「綺麗すぎて近寄りがたい」と噂され、声をかけてくるクラスメイトはいない。
本人も気にしてはいなかった。孤独は慣れていたし、人と無理に交わる必要も感じなかったからだ。
放課後、柚希は人気のない屋上へ足を運ぶ。
高い柵の向こうに広がる空を見上げるその時間が、唯一心を安らげてくれた。
――ここに来れば、誰にも干渉されない。
でも同時に、胸の奥にはひとつの期待があった。
(今日も……陽先輩を見られるだろうか)
中学の大会で目に焼きついた背番号4。
あの時からずっと追いかけ続ける存在が、同じ校舎のどこかにいる。
柚希の孤独な日々は、憧れを抱くその人によって、かろうじて輝きを保っていた。