テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ん―――いたぞ―――」
「つ――たぞ」
「お――着いたぞ!」
「んん……?」
「やっと起きたか…急いで降りるぞ!!」
るいはそう言って、私を無理やり引きずり下ろそうとした。
「んん、ほんと何なのぉ…?」
状況が理解できずに居た。
だから、まだずっと寝ていたくて、るいの手を引き離した。
そしてまた座っていた所に腰掛けた。
「お、おい!るな何やってんだ!急いで降りるぞっ!!」
るいは焦っている。
意味が分からなかった。
「え?」
私はこの瞬間、るいと電車に乗っていたということを思い出した。
「あっ!!」
だけど、もう遅かった。
電車のドアが閉まる。
るいはホームに降りているが、私はまだ電車の中だ。
「や、やばいっ!!」
電車は走り出し、どんどん加速していく。
――私達、離れ離れになっちゃったんだ…
「(そういえば連絡先交換してなかったし、電話もできない…)」
ここまでるいに全てを任せてやって来ていたから、私一人でさっきの駅に戻れるかは分からない。
「ほんとにどうしよう…っ」
そんなこんなで電車は次の駅に到着。
大焦りで電車を降りたのは良いものの、その後どうすれば良いかはパニックで考えられない。
「(るい、来てくれるかな…?)」
そんな期待を持ってしまった私が情けなくなる。
「ええっ…、でもどうする事も出来ないよ…」
最終的に私が下した決断は、ホームの椅子で座っておく事だった。
私は不安で不安で、一歩も動けない。
そんな中、一つ前の駅からこちらの駅に来る電車がやって来た。
「これにるい、乗ってるかな!?」
電車が到着したのを見て、思わず 椅子から立ち上がって飛び出すと、走ってきていた人にぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさいっ」
謝って相手の顔を見ると、それは見覚えのある顔だった。
「る、るいっ!」
「え、るな?」
そう、るいだった。
「るい〜〜!待ってたよぉぉっ」
そう言ってるいに飛びつくと、彼の顔は紅潮していた。
そしてすぐに手を振りほどく。
「なっ!なんで…?」
「他の人が見てるだろっ…!!」
るいは小さな声で言った。
確かに 視線を周りの人に移すと、みんなこちらを見てクスクスと笑っていた。
「…早く行くぞっ」
るいは私の手を引っ張り、早足でホームを駆けていく。
彼の耳は、まだほんのりを赤かった。
「んもうっ、恥ずかしがり屋なんだから」
「これくらい良いじゃない…」
私は、誰にも聞こえないような独り言を呟いた。