テラーノベル
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―――駅の階段で
「ったく、何してんだよお前は…」
「ごめんなさい…」
私はうつむいて謝った。
そしてるいの目を見つめて言う。
「ね、許してくれるでしょ?」
「っ…」
るいは不機嫌そうな表情をしていたけど、意外にも言葉は優しくて 柔らかかった。
「……それ言われたら何も言えないからやめろよ」
そう言われた途端、笑いが込み上げた。
「あっははははははっwwww」
「な、何が面白いんだよ?」
――何って、そりゃ、その可愛い表情に決まってるじゃん〜!!
私はそんなことを言おうとして、辞めた。
すると、話を逸らすかのようにるいが話しだした。
「でもそんなんじゃあ、甘い物は奢ってやれねーなぁ〜」
「ええっ!?嫌だぁぁっ!!」
「嫌ならちゃんと着いてこいよ?」
「分かった」
るいはさり気なく、私の手を握った。
「えっ!?て、手…」
「こうでもしないと、またあんな事になるだろ?」
「でも、恥ずかしいよ…っ」
「これくらい当たり前だ」
「うえぇっ…」
そう言って早足で歩き出した。
「ま、待ってええっ!!」
るいに引っ張られ、気づけば駅のホームを抜け、繁華街へと出てきていた。
休日だからかとても混雑しており、大勢の人で賑わっている。
――だがそんな事より、フルーツのデザートが美味しそうな店にしか目はいっていなかった。
「……あれを食べたいのか?」
「うん、だってめっちゃ美味しそうじゃん!あのイチゴのかき氷、食べたいなぁ〜〜っ」
「仕方ないな、じゃあ行くぞ」
「わあ〜い!」
そう言うと、渋い顔をしたるい。
それもそのはず。
この店のかき氷は、ミニサイズなのに2000円を超える代物なのだ。
だけど断らず、連れて行ってくれるるいは優しい。
不器用な優しさを見せてくれてるんだよね。
そう考えると、なんだか温かい気持ちになった。
―――店内
店はと言うと、さっき見たかき氷からは想像もつかないような和風のお店。
老舗なのかも知れない。
ここには来たことが無いから、あるもの全てが新鮮だった。
そして目をつけたのは…
真っ赤で今にも飛び出しそうで――
そして、ふわふわな食感が食べずとも分かる、あのかき氷だった。
「うっひょ〜!」
思わずそんな声を漏らしてしまう。
メニューを間近で眺めていると、店員さんに席を案内された。
すぐさま私はメニューからかき氷を探す。
これだけが食べたい。
もうそれ以外はどうでもいい。
るいが食べるものを決める前に、私は注文ボタンを押した。
「おい、俺何も決めてねーんだけど!?」
「あ、ごめーん…頼んじゃった」
「はえーよ笑」
るいは苦笑した。
すると、待望のかき氷が席に運ばれてきた。
テーブルに置かれるまでの時間さえもが惜しくて、私はスプーンを持って待機。
店員さんも驚いた様子だったけど、ゆっくりしていってくださいと丁寧に言ってくれた。
「いっただっきま〜〜す!!!!」
スプーンを氷の山に入れると、中からイチゴ色に染まった氷が姿を現した。
「うわ〜!真っ赤っ赤じゃん!」
「…だな」
自分が食べられないことに不機嫌なるいには目もくれず、私はかき氷にかぶりつく。
その氷は想像を絶するふわふわさで、思わず食べる手を止めてしまったほどだ。
口の中に入ると、あまりの冷たさに声が出ない。
暑さで溶けそうになっていた体に、冷たさが浸透していく気がした。
「おいひ〜〜!」
満面の笑みでそう言うと、るいは初めて笑いを零した。
「良かったな」
そう言われた途端、かき氷を食べる手がまたストップした。
笑顔も消えた。
―――この時だった。
―――彼のことを、これまでとは違う目で見るようになったのは。
コメント
10件
イエーイ! 今、キャンバで動画つくってます。(意味ないけど)
応援するっ!(←全部してないわけじゃないけどww)
この作品めちゃ好きかも!🧁♡