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二人の絆が、最悪の戦場で最上の輝きを放つ瞬間ですね。滉斗の圧倒的な強さと、それを支える元貴の祈り。
「若井滉斗! 貴様、反逆の報いは死だと思え!」
軍の指揮官たちが一斉に叫び、包囲網が狭まる。銃を構える兵士、刃を向けるかつての同門たち。その数は数百、数千。対するは、氷剣を構えた滉斗がたった一人。
背後では、元貴が膝をついていた。
先ほどまでの滉斗との死闘、そして無理な防御術の連続行使。彼の体力は限界に達し、術式の源である気力も枯渇しかけている。それでも元貴は、震える手で滉斗の軍服の裾を掴んだ。
「ひろぱ……逃げて、一人なら君は……」
「黙ってろ。……今さら一人でどこへ行けと言うんだ」
滉斗は元貴を振り返ることなく、だがその声にはかつてないほどの慈愛が混じっていた。
「お前はそこで、花でも咲かせる準備をしておけ。血生臭いのは、すぐに終わらせる」
「殺せーーッ!」
指揮官の号令と共に、火縄銃の轟音が鳴り響き、無数の弾丸が二人を目がけて放たれた。
「……遅い」
滉斗が剣を横一文字に振る。
瞬間、二人の周囲に巨大な氷の壁がそびえ立ち、弾丸をすべて弾き飛ばした。それは元貴の防御術とは違う、攻撃のための魔力を転用した力技の防壁だった。
「ひろぱ、だめだ! そんなに力を使ったら、君の体が!」
「……心配するな」
滉斗は壁を蹴り、敵陣へと突っ込んだ。
彼の動きはもはや人の域を超えていた。氷剣が空を切るたびに、大気が凍りつき、反乱軍の武器を、手足を、地面を瞬時に封じていく。
返り血を浴び、軍服が裂けても、滉斗の歩みは止まらない。
かつて「国王の剣」として育てられた技術のすべてを、今は「元貴という個人」を守るためだけに注ぎ込んでいた。
「若井……! なぜだ、なぜそこまでして、戦えぬ王を守る!」
指揮官の問いに、滉斗は冷たく、だが誇らしげに言い放つ。
「戦えぬから守るのではない。俺が守りたい男が、たまたま王だっただけだ」
戦いは熾烈を極めた。
一人で大軍を相手にする滉斗の肩には深い斬り傷が刻まれ、その呼吸も荒くなっていく。しかし、どれほど敵が押し寄せようとも、元貴がいる一点だけには、一歩も、塵ひとつ通させない。
元貴は、自らの不甲斐なさに涙を流しながらも、必死に手をかざした。
「お願い……少しだけでも……!」
消え入りそうな光が、滉斗の背中の傷をかすかに癒やす。
「元貴、もういい。術を使うな……」
「嫌だ! 君が戦うなら、僕は死んでも君を支える!」
その言葉に、滉斗はふっと口角を上げた。
かつて王邸の部屋で、共に笑い合ったあの頃と同じ笑顔。
「……ああ、そうだったな。お前は昔から、頑固だった」
滉斗は再び剣を握り直し、迫り来る第二波を見据える。
彼の周囲には、舞い散る雪のような火花が散っていた。氷剣術の奥義――命を削り、周囲一帯を永久凍土へと変える禁忌の技。それを使えば、自分も無事では済まない。
だが、滉斗に迷いはなかった。
自分の命で、この愛しい男の未来が買えるのなら、これほど安い買い物はない。
「元貴、目をつぶっていろ」
冷気が、世界のすべてを白く染め上げようとしていた。
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