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二度目の初恋 朝陽美桜
春の陽をあびて、輝く君の栗色の髪が好きだった。高校生なのに栗色なんて校則違反だって周りの友達からからかわれても、平気な顔をして笑っていた。
君の唇からこぼれる柔らかい声が、ちょっと淋しそうに伏せる瞳が好きだった。
けれど、君はいつもみんなの輪の中にいて、僕は君を遠くから見つめているだけだった。
「ねえこれ落したよ。七瀬くんのじゃない?」
「え?」
振り返ったとき、君は僕の目の前にいた。
夢かと思った―。
けれど夢じゃなかったー。
帰りの下駄箱の前で七瀬壮太は、薄汚れた靴を持ったまま振り返った。そこに君が、木梨藍がいた。壮太は思わず靴を持つ手が震えて、片方の靴が落ちて足元に転がった。その様子に藍がくすっと笑った。
「これ落としたよ」
藍がさらに一歩壮太との距離を縮めて言う。藍の手の上には青いゾウのマスコットのキーホルダーがあった。
「あっ、いつの間に落ちたんだろう」
壮太は振り返ってリックを見た。いつも持っている黒いリックのファスナーにつけているものだった。
「前から思っていたんだけど」
顔をあげたとき向かいに立つ藍と、目が合った。
何? 何を言われるんだろう。
ちょっと期待して鼓動が速くなり、不安で手が震えてもう一方の靴も落ちた。
「七瀬君の席って、私の斜め前だからいつもこの子が見えてね」
言いながら藍は手の平に載せていた青いゾウを顔の高さに上げた。
「可愛いなってずっと思っていたの。ねえ、この子どこで買えるの?」
藍が壮太の手にキーホルダーを乗せたとき藍の指先が、壮太の手に平に触れた気がして、壮太はいっそうドキドキした。
「ガチャガチャでゲットしたんだ」
「ガチャガチャ?」
ガチャガチャを知らないような瞳をして、小首を傾げる仕草がまたたまらなく可愛らしくて、壮太は藍から視線をそらして言った。そうしなければ恥ずかしくて、まともに話なんてできそうになかった。
「駅前の雑貨屋の前にあるんだ。これさ、お菓子のキャラクターなんだ。知らない? たべっこどうぶつっていうお菓子」
藍はただ頷いた。その頷き方は、知らなさそうだった。今考えてもなんでそんなことができたのか不思議だが、壮太は藍の都合も聞かずに突然手を引いて言った。
「行こう」
薄汚れた壮太のスニーカーと、綺麗に磨けれて光る藍の黒いローファーが並んで歩くのが不釣り合いで、それでも嬉しかった。
それから何度とガチャガチャに行ったし、その後は決まってコンビニで、壮太はカフェオレを藍はカルピスソーダを買って飲みながら帰える。図書室の一番奥の席で二人で試験勉強をした。それなのにどういうわけか、クラスのみんなの前ではお互い素っ気ない態度になって、微かに目を合わせては、どちらもちょっとだけ笑う。それが壮太と藍だけがわかるサインのように思えて、恥ずかしようで嬉しかった。
好きだったけど、想いを伝えることができないまま。でも同じ気持ちでいると信じていた。卒業後はそれぞれ別の大学に進学することが決まっていたが、この関係はずっと続く。大人になっても続いてほしいと壮太は願っていた。淡い願いだったかもしれない。
けれど、一度はきちんと想いを伝えようと藍と待ち合わせをした。
よく晴れた日曜日の公園で、午後一時に。
「うん。わかった。日曜日の一時にね。約束ね」
電話の向こうで、いつものように柔らかい声で藍は言った。
日曜日の一時にね…。約束ね…。
それきり藍の声を聞けなくなってしまったまま、壮太は大人になってしまった。
NAGI [さかもっさん]
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*.꒰ঌ𝕐𝕦𝕚𝕜𝕒໒꒱.*
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コメント
2件
わーいわーいわいわいっ🙌投稿がうちよりも爆速で震えますわぁ〜!
朝陽美桜さま、第1話拝読しました。 青いゾウのキーホルダーから自然に距離を縮めていく二人の空気感が繊細で、読んでいて胸がときめきました。「薄汚れたスニーカーと磨かれたローファーが並ぶ」一文に、壮太の切ない気持ちがぎゅっと詰まっているようで…最後の一文で全てが反転する切なさに、しばらく動けませんでした。続きが気になります。素敵な出会いをありがとうございます🌷