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第1話:社長令嬢、反抗期です
「ママ、過保護すぎ」
高校の門の前で、藍音はため息をついた。
黒塗りの高級車。
その横には、スーツ姿の男性が立っている。
「お嬢様、安全のためです」
「だから“お嬢様”って呼ばないでって言ってるでしょ!」
彼の名前は 湊(みなと)。
幼い頃から藍音の世話をしてきた専属執事だ。
藍音は母・藍琉にそっくりな美少女だった。
けれど性格は少し違う。
わがままというより――
素直じゃない。
「迎えなんていらないって言ったよね」
「蒼真様からの命令です」
「パパの名前出さないで!」
ぷいっと顔を背ける。
湊は困ったように微笑んだ。
「ですが、お嬢様に何かあれば私は生きていけません」
「……大げさ」
でも。
少しだけ頬が赤くなる。
「じゃあ今日は寄り道するから帰っていい」
「承知しました。どちらへ?」
「え?」
「お供します」
「しなくていい!」
「命令違反になります」
「もう!」
藍音は足を止めた。
そして小さな声で言う。
「……友達とクレープ食べるだけ」
「では近くで待機しております」
「来るなってば!」
けれど。
本当は――
湊が来てくれることを
少しだけ嬉しいと思っていた。
その夜。
藍音の母・藍琉は楽しそうに笑っていた。
「ねえ蒼真、あの子完全に私たちと同じ道たどってない?」
「ええ。間違いありません」
「執事に恋するパターンね」
「まだ気づいていないようですが」
二人は目を合わせて笑う。
そして藍琉は言った。
「青春っていいわねぇ」
一方その頃。
自室のベッドで藍音は天井を見ていた。
(なんであの人のこと考えてるの…)
胸が少しだけ苦しい。
理由はまだ――
わからなかった。