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#シークレットベビー
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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画像を見るとハムスターの目が青色に変わった。
「うん。本人はたぶんクォーターかもってプロフに載せてたけど自分の過去を掘り返すのは禁止されてるみたいだから分からないって」
「なんで禁止されてるんだろう」
「さあ。うちらは子ども産むことと結婚すること以外、興味持つなってことじゃね? 次の試合、実際に見に行ったら花巻さんの良さが分かるよ」
チケットは今月はすでに完売してしまってるらしいけど、吾妻団体っていうプロレス団のファンクラブに入っていれば来月から抽選に参加できるらしい。
ファンクラブもあって、チケットは完売。
プロレスラーとしては熱狂的なファンもいるし、活躍している人なのかも。
「私、来月も参加してるから。もし行くときは連絡して。3年特進科の森苺 要っていうの。アドレスこっち」
「特進科!」
特進科って、オリンピック候補生やスポーツや学力で全国10位以内の成績を収めている、何もかも免除されているエリートしか入れないクラスだ。1から5組ある私たちのクラスとは校舎さえ別だ。
一河は足さえ怪我しなければこちらのクラスに入れていたかもしれないし、水咲も望めばこちらのクラスだ。
「特進科はお見合い免除だけどさ、超優秀な血筋だから結婚してくれるならさらに自由が許されてんの。私も結婚したから、校則フリーダム。髪の毛染めても、OKだよん」
「ほおえ。だからカーディガンも指定のじゃないんですね」
「そお。私、1年の時にテニスの女子世界ランク49位になったから特進科。でも足の故障で特進科出なきゃって時に、親同士が決めたお見合いで有名プレイヤーと結婚。結婚のおかげで特進科から出なくて良くてラッキーよ」
落ちこぼれだけどねって豪快に笑いながら、要先輩は手を振って去って行った。
特進科なんて同じ学校でも見かけることはなかったから、ちょっと驚いた。
どんな授業を受けているんだろう。
「ねえ、立崎流伽さん」
今日は私のお客が多いらしい。
教室に入ろうとしたら再び呼び止められた。
しかも相手は水咲の相手の孔一くんだ。
端正な顔立ちの長身。そして私みたいな平凡で普通過ぎる女の子にも甘く微笑んでくれる正真正銘の王子様だ。
「孔一くん。水咲ですか?」
「そう。まだ彼女、怒ってる? 様子だけ見たいんだけど、見ても怒らないかな」
「死角から見たらいいかも」
今日もワックスでばっちり固めた髪に、柑橘系の爽やかな香水。
女の子受けばっちしでモテ要素しかない彼が、私の横に立っている。
ああ、ちょっと隣に居て恥ずかしいぐらい私は平凡だ。
「あれ、あの机の上で煙出してるパソコンが水咲さんか」
「そうで――いや、パソコンかどうかは分からないです」
「ピンク色の可愛いパソコンだよ。でも『OK、グーグル』とは『ヘイ、Siri』とか俺がふざけて話しかけたから、昨日は怒っちゃってさ。謝りたいけど――そんな雰囲気じゃないね」
水咲がパソコンに見えるからってなんて酷い仕打ちなんだ。
でも可愛いピンク色のパソコンってことは、まだ少しは可能性があるのかな。
「でもなるべく早めに、本当の水咲さんを見ないとなあ。お互いの親がうるさいだろうし」
「え? 親がうるさいの? お見合いに親が口出したら駄目なんじゃあ」
「そうはいっても、親がお見合い法に携わってる政治家同士なら口は出すでしょ。俺たちは拒否権はあるけど、俺は断れないし彼女も断れない。だから頭で納得するしかないんだけどねえ」
整った顔立ちで、この人何を言っているんだろう。
王子様だって思っていたのに、一瞬で夢から覚めた。
聞いちゃいけないし、言ってほしくなくて聞かない。
聞かないけど、水咲にはこの人はやめてほしかった。
だって、親が決めた相手だから結婚するって断言してる。
水咲だから結婚するんじゃない。
「あの、今日は会わない方がいいです。お互い頭を冷やしてください」
「あー、うん。ありがとう。そうする」
あっさりと孔一くんは水咲と会うのを止めてしまった。
執着も何もない。きっと親に言われたからご機嫌伺いに来たに違いない。
彼を追い返し水咲の隣に戻る。
それでももやもやしてしまう。
私に二人のお見合いについて口出す権利はもちろんない。
ないけど、今の孔一くんだけは水咲と結婚してほしくなかった。
「やばい。エプロン忘れた」
しっかりしている水咲からそんな言葉が出てしまう始末。
どちらかと言えば私が忘れて、小言を言いながら水咲が予備を貸してくれるぐらいなのに。
「一河に借りる? 男子は午前中でしょ。終わったら貸してもらおう」
「5月からは男女ペアで料理だったっけ。良かった、4月で」
立ち上がって渋々水咲は一河にエプロンを借りに行く。
男子が群がっている一河の机の周りが、覇気のない水咲に驚きながら距離を置く。
いつもなら怖がってすぐさま退くのに、それほどまでに覇気のない水咲は、見ていられない。
そんな風に、いつもの日常を奪われてしまうぐらいなら結婚なんてしたくない。
したくないけど、水咲はお見合いをしてしまう気がする。
恋愛に夢見ていないから、恋愛結婚憧憬症候群になっていなんだもん。
恋よりも自分と相性がいい人と結婚してしまうんだろうなって思う。
そう思うと、なんだかすごく悲しくて、嫌だ。
自分で自由を放棄してほしくなんてない。
*
放課後は、一河は亜里沙先輩とお見合いセンター内でデートらしい。
自分たちで電車に乗って本格的なデートをするらしい。
亜里沙先輩は、男女ともに憧れる学園一のミステリアスな美女だと思う。
亜里沙先輩が微笑みながら一河と並んで駅に向かう姿は、お似合いだなって思ってしまう。
水咲はおじいさまに呼ばれて、隣の県に。
水咲のおじいさまは――お見合い法を成立させ、人口回復に努めた元内閣総理大臣。今もなんちゃら派の黒幕だの、なんちゃらなんちゃら……実は難しくて全く分からないけど、今も発言力が大きいと水咲は言っていた気がする。
「もう花巻さんは部屋を掃除していましたよ」
私は仲人さんの車に乗り、お見合いセンターへ向かう。
途中、空港があるが、全国からお見合いセンターに来る人達用らしい。
全国各地にもあるのだけど、やはり都内のお見合いセンターが一番楽しいのと全国スタンプラリーもあるとか。
「ブレスレットは寝ている時も外さないでくださいね」