テラーノベル
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愛、ダイン、ヲノの3人はいつもの居酒屋にいた。しかしいつもの感じではなく
ヲノを真ん中にして、横並びで左右に愛とダインがいる感じで座っていた。ヲノの目の前には
「おぉ〜。こんなところがあるんですねぇ〜」
と物珍しそうに辺りを見回すヲノの兄、カヲがいた。周囲も
「カヲさんだ」
「カヲさんがいるぞ」
と少し騒ついていた。
「さて」
カヲがヲノを見る。
「まずはぁ〜…。どこから聞こう」
と言うカヲに
「…カヲ兄さん。オレがメモトゲの者だってバレないようにしてね」
とお願いするヲノ。するとカヲは一瞬不思議そうな顔をしたが
「ん?…あぁ〜。なるほど。その格好(服装)は変装ってことか」
と勝手に納得した。そんなカヲに
いや、…違うけど…
と思うヲノ。
「で、このお2方は?」
と言うカヲに
「あ、初めまして。弟さんのヲノさんにはお世話になっております。柊愛と申します」
と丁寧に挨拶し、頭を下げる愛。
「あ、ご丁寧に。ヲノの兄のカヲ・テキシ・メモトゲと申します。
うちの弟がお世話になっているみたいで。お世話になっております」
とカヲも丁寧に挨拶し頭を下げる。愛もまた頭を下げる。そして次はダインの番、というのに
ダインの声が一向に聞こえてこないのでチラッっとダインを見ると、ダインは呑気にのほほんとしていたので
愛はテーブルの下でダインの足を軽く蹴った。それで気づき、カヲが顔を上げてから
「あ、えぇ〜っと。ダインです。…」
あれ…
と一瞬自分のフルネームを忘れるダイン。その心を読んで
なんで自分の名前忘れてるの
と思う愛。
「あぁ。ダイン・ボルニ・アマキクです。えぇ〜。よろしくお願いします?」
と頭を下げるダイン。
「ヲノの兄のカヲ・テキシ・メモトゲと申します。うちの弟がお世話になっているみたいで。
お世話になっております」
と頭を下げるカヲ。
「でぇ〜…。うちの弟とはどういうご関係、といいますか」
と言うカヲに
「私は命を助けていただいたんです」
と言う愛。
「い、のちを?ヲノがですか?」
少し面食らうカヲ。
「はい。私がマナトリアに襲われそうになっているところを、お2人に助けていただいて」
「あ、ダインさんとお2人。そうですよね。あ、そうだったんですね。
ヲノが人の役に立ったなら兄として嬉しいです」
と言うカヲ。
「で、ダインさんはヲノとのご関係は…」
そう言われてダインはヲノを見る。ヲノもダインを見る。
「まかせとけ」と言わんばかりの顔をするダイン。
「ヲノはオレの弟子です!」
と胸を張ってドヤ顔で言うダイン。
「…は」
思わず声が出るヲノ。クスッっと笑う愛。キョトンとするカヲ。
「…えぇ〜…っと。ダインさんの弟子が、ヲノ?」
「はい!」
自信満々に答えるダイン。
「…。なるほど?」
表面上は納得したカヲ。
「えぇ〜…っと、…。それは…。なんの、です?先程も柊さんの話の中で「一緒にいた」と伺いましたが」
「そりゃーもちろんLimpiador(リンピアドール)のですよ!」
と言うダインに、さらにキョトンとするカヲ。
「…リンピアドールって、Alma Limpiador(アルマ リンピアドール)のことですか?」
と聞くカヲ。
「そう!それです!」
と言いつつも
正式名称ひさしぶりに聞いたな
と思うダイン。カヲは眉間に皺を寄せて、なにやら考え込んでいる様子だった。
「…ヲノが?…な、る、ほ、ど…。…うん。
…ヲノは?前からやりたかったの?Alma Limpiador(アルマ リンピアドール)」
とヲノに聞くカヲ。
「う、うぅ〜ん…。リンピアドールになりたかったというか、家の外に出てみたかったんだよ」
「家の外に?」
「うん。メモトゲの家に生まれて、欲しいものはなんでも買ってもらえて
やりたいことはほとんどさせてもらえて、何不自由なく育ってきた。
オレも兄さんたちに習って格闘技を始めてみた。
でもオレにはキリ兄さんやカヲ兄さんみたいに格闘の才能はなかった」
「僕もキリ兄さんには遠く及ばないけどね」
「それでも打ち込めてるじゃん。オレは格闘技には打ち込めなくて。
ゲームだって楽しい、マンガだってテレビだっておもしろい。でも所詮は誰かが作ったゲームを遊んでるだけ。
誰かが描いたマンガやアニメを読んで、見てるだけ。テレビだって誰かが作ったものを見てるだけ。
オレは、オレが、オレの足でどうにかしたかった。でもオレは打ち込めるものがなくて。
そんなとき部屋の窓から見えた町を行き来するヒトたちが楽しそうに見えて、羨ましくて
楽しいこと、打ち込めることを求めて城を出て町に降りて。そしたらおっちゃんに出会って
それからダインに助けられて、今まで知らなかったリンピアドールって職業を知って
ただ狩るだけじゃない。マナトリアの肉は人々の生活のためになるし
マナトリアは裏切りなどを経験し、ヒトに恨みを持ったヒトなんだって。
だからその魂を肉体と切り離すことで、魂を浄化し、生まれ変わってもらう。
だから“狩る”んじゃなくて“浄める”なんだって知って
ヒトのためになる、そしてマナトリアのためにもなる職業なんだって。
“救う”職業だって知って、これかもしれないって」
と言うヲノに小声で
「お前、「刺激を求めて」とか言ってなかったっけ?」
と言うダイン。そんなダインの足踏むヲノ。
「いった!」
と声を出すダインに対して
「どうかされました?」
少し心配そうに声をかけるカヲ。
「あぁ…いやいや」
笑顔でカヲに返してから、ヲノを睨むダイン。
「そっか。そんなこと思って過ごしてたんだね。気づいてあげられなくてごめんね」
「ううん。カヲ兄さんは悪くないよ。というか誰も悪くない。
強いていうならなににも熱中できなかった、わがままなオレが悪いんだよ…」
「ヲノ…。でもそんな短期間でなれるものなんですか?そんなことないですよね?」
とダインに聞くカヲ。
「うぅ〜ん…。ま、命懸けの仕事ではあるので。
技術的にも簡単ではないですし、精神的、覚悟的な面でも簡単にはできないですね」
「ですよね。…ちなみにヲノはどうなんですか?才能は」
と聞くカヲに、ダインはヲノを見る。ヲノもダインを見る。
「…」
「…」
ヲノは期待していた。ダインが「才能ありますね」と言ってくれると。
「まっ。ぼちぼちっすかね」
実際にダインの口から出たのはこの言葉だった。
こいつ…
と心の中で思うヲノ。
「ま、これからどんどん育っていくと思いますよ。柊さんのことも気づいたのヲノなんで」
「あ、そうなんですか?てっきりダインさんが助けて、ヲノは手伝いかと」
「お恥ずかしながら自分は気づかないで通り過ぎようとしちゃって」
「ヲノさんがいなければ今私はここにいません」
「なのでヒトを救う気持ちはもうすでに立派なリンピアドールです。技術は鍛錬で上がっても
マインドに関してはどれだけ浄めても、ただの仕事。楽しいからやってる。なんてヒトもいるくらいですから」
「なるほど。マインド大事なんですね」
「大事です大事です。あくまでリンピアドールはマナトリアを“浄める”職業。
“狩る”という気持ちやストレスの吐け口としていくと、マナトリアもヒトを憎む魂なので
同じような気持ちだとぶつかったり、向こう側に取り込まれてしまう場合もあるんですよ。
“楽しい”なんて、レジャー感覚でいくといずれ足元を掬われる、
だからやっぱりマナトリアを“浄る”っていう、救う気持ちで行かないと。
だから、ま、その点ヲノは将来有望ですね」
とダインに言われて少し嬉しくなるヲノ。それを読み取る愛。
すると遅れて、武器屋のおっちゃんことキャブがお店に来た。
「あ!おっちゃぁ〜ん!」
と手を振るダイン。
「おぉ」
と言っておっちゃんが近寄ってきた。
「ん?…あれ。カヲさんじゃねぇか」
「あ、知ってくださっているんですか」
と立ち上がるカヲ。
「大通り沿いで武器屋やらしてもらってます。キャブ・ヤッチ・ノンオという者です」
おっちゃんが頭を下げる。
「カヲ・テキシ・メモトゲと申します」
カヲも頭を下げる。
「いやぁ〜。まさかこんなところでヲノのお兄様にお会いできるとはな」
と言うおっちゃんの言葉にヲノを見るカヲ。
「さっき言った、町に降りてきて出会ったおっちゃん」
と言うヲノに「あぁ〜」と言わんばかりに頷くカヲ。
「うちの弟がお世話になってるみたいで」
と頭を下げるカヲ。
「いやいや。お世話だなんて。ま、座って乾杯でもしてから話しましょうや」
ということでみんなで乾杯をした。そしていろんなことをヲノの兄、カヲも交えていろいろ話し合った5人。
「じゃ、たぶんこれからもお世話になりますね」
「はい!お世話します!」
と言うダインに
「お世話しますじゃねぇよ」
とツッコむヲノの横で
「お世話します!」
とノる愛。
「ひ、柊さんまで?」
「ま、お世話されないように頑張るんだな」
と言うおっちゃん。そんなやり取りを見て笑うカヲ。
「よかったなヲノ。いいお友達ができて」
と言うカヲに
「…うん」
と笑って頷くヲノ。
「じゃ、帰るか」
とカヲがヲノに言う。
「え?」
「もう少し飲んでいきましょうや」
「すいません。お酒は控えていまして」
「あ、そうなのか。じゃあ申し訳なかったですね、付き合わせちゃって」
「いえ。家(うち)のパーティーでも最初からの1杯は飲むことにしておりますので
全然謝る必要かなんてないですよ。
ただ体調面、健康面、格闘技をする上でのアルコールの残り具合とかを考えて
あまり飲まないようにしておりまして。なのでむしろ私のわがままで、申し訳ない」
なんておっちゃんとカヲが話し合っている中
「オレ帰るってもなぁ〜…」
と呟くヲノに
「ひさしぶりに帰ってみてはいかがですか?」
と言う愛。
「…」
「長期間家を空けるより、ちょくちょく帰ってたほうが、ご両親も心配なさらないんじゃないでしょうか」
「…なるほど」
と納得したヲノ。
「ダイン。今日は家帰るわ」
「ん?おう。寂しくて泣くなよ?」
「泣くかよ。ひさしぶりに柔らかいベッドで寝れるわ」
と冗談を言って拳を合わせる2人。そしてカヲと一緒にお店を出た。
そしてひさしぶりに城の門をくぐり、ひさしぶりに長い階段を上がった。
城の、家の大きく高い玄関扉から中に入った。
ひさしぶりだなぁ〜…
と思いながら家の中を見回す。すると父と母がいて
「あぁ!おかえりぃ〜!」
と母が言ってくれた。父はこちらに視線を向けたものの、手を振りもせず
なにも言わずスッっと歩いて行ってしまった。
いつも通りって感じ
と思うヲノ。
「どうだった?今日の決勝は。楽しかった?」
と聞く母。
「あぁ。まあ。そうだね。キリ兄さんの圧勝だったけど、見てて楽しかったよ」
「そっかそっかぁ〜。カヲと一緒だったんだ?」
「うん。ヲノと2人でご飯食べてきた」
「そうなんだぁ〜。美味しかった?」
「美味しかったよ」
「えぇ〜いいなぁ〜。どこ?今度私も連れてってね?」
「今度があればね?」
なんて話すカヲを後ろから見ながら
みんなのこと言わないでくれたのかなぁ…
と思うヲノ。そして部屋に戻る。部屋に戻る途中、キリ正面から歩いてきた。すれ違う瞬間に
「ま、楽しかったわ。ありがとな」
と言ったキリ。そしてそのまま歩いて行った。ヲノは振り返って歩くキリの背中を見る。
「…。楽しかったはわかるけど、ありがとう?なんの感謝?」
と思うヲノ。自分の部屋に戻る。部屋の前には
「おかえりなさいませお坊っちゃま」
とヲノの専属執事、エルフ族のルノーがいた。
「ただいま。ひさしぶり」
「おひさしぶりでございます。楽しかったですか?」
「うん?」
「お友達のお家」
「あ、あぁ。うん。楽しかったよ」
「それはよかったです」
「ん。じゃ、一旦おやすみ」
「はい。おやすみなさいませ」
という会話を交わしてから扉を開けて部屋に入った。
「うわ。めっちゃひさびさ」
と呟いて部屋の明かりをつける。ベッドに腰を下ろす。
「ふかふかだ」
ダインの部屋と違って、壁紙も明るくて綺麗で、ベッドも湿り気がなく
硬くもなく、柔らかすぎもせず、高級なベッド。大きなテレビもあってゲームもある。
「ひさしぶりにゲームでもするか」
とベッドを降りてテレビの前に移動する。テレビをつけて、ゲームを起動する。
「続きから」を選び、データを選ぼうとしたら、セーブデータが2つあった。
「ん?」
いつもセーブデータは上書きしているので1つだけなはずなのだが。
不思議に思い、セーブデータの最終時刻を確認すると、最後にセーブしたのは昨日の夜だった。
「…ははぁ〜ん?ルノー、オレがいない間にやってたな?」
と思いながら自分のセーブデータでゲームをすることにした。
食いもんだと思ってくれ
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#初心者🔰
ゆあ
1,626
#イラスト
紅葉.
1,696
コメント
3件
第17話、読み終わりました!居酒屋での兄・カヲさんとの会話、ヲノが自分の思いを初めてちゃんと語るシーンがとても印象的でした。「オレの足でどうにかしたかった」—その言葉に彼の成長と覚悟がぎゅっと詰まっていて、胸が熱くなりました。ダインとの「弟子」やり取りも相変わらず微笑ましくて、でもちゃんとヲノを認めているのが伝わってくる。最後に帰宅してルノーがゲームしてたオチも含め、優しさに包まれた回でした🌷