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#シークレットベビー
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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うちの親はお見合い結婚だったから、もっとお見合いを押してくると思ったのに。
私の意見の方を尊重してくれるとは思わなかったから、素直に嬉しい。
「確かに人口が激減しているなら自分の生まれた国ですから、我関せずってわけにはいかないでしょ。でもだからって自分たちの子どもが法律で苦しむのは、また違うんじゃないかなってね」
「……お母さん」
「一慶くんは、法律の犠牲者。でも同情は彼の流伽への気持ちに対して不誠実よ。応援はする、見守る。強要はしない。でもね、まずは流伽が自分の気持ちを揺るがないものにしてちょうだい」
知りたい。過去にどんなことがあったのか知りたい。
一慶さん本人が知りたい。ハムスターの姿ではなく、彼の過去も全て知りたい。
今はそれだけで、でも最後に私が決めなければいけない。
難しいことではない。でも簡単なことでもない。
私は恋愛に夢を見るより先に法律に目隠しをされちゃったんだから。
「きっと流伽もだけど、一河くんも水咲ちゃんも苦労するわね。貴方たちってきっと他の子たちより背負ってるものが多すぎるわ」
困ったわねえってお母さんは笑ったんだと思う。でも笑顔になれず、口角は一度だけ上にひくついただけで硬いまま。嘘の笑顔は、作ることができなかった。
「でも私たちの時代より、お見合いの法律が浸透したせいであなた達みたいに恋愛結婚憧憬症候群って病名でるぐらい悲鳴も出ているのよねえ。流伽の好きな平成にはそんな病気、なかったのに」
「そう。ふつうはね、高校で格好いいなって思ったり、席替えで隣になった生意気な同級生が、不意に見せる優しさにきゅんと来たり、誰かを好きになれる時間だと思うの。恋愛ってきっと大事だと思うんだけどなあ」
今は、高校から子どもを産む準備期間って感じ。
男の子も女の子も、人口が少ないのだからって自分たちでなんでもやろう、って料理や家事の授業もあるけれども。
もっとそんな所帯じみた授業だけじゃなくて、運動会でフォークダンスとかキャンプファイヤーで好きな人と寄り添ったりとか。
「大切なことを忘れたら、機械になっちゃうわねえ」
機械。
その言葉に、はっと水咲の行動を思い出した。
「そういえば水咲が、孔一くんのところに殴り込みに行ったんだった。一河が一緒だから大丈夫と思うけど」
あんなに可愛い女の子である水咲が、パソコンに見えてしまう孔一くんのことだ。
水咲を傷つけないとは言い切れない。
「気になるなら連れて行こうか。流伽が帰ってきたなら食事の買い出しにも行きたいし」
「あ、あとで一慶さんも来るから、お鍋でもいいよ」
水咲に私も向かうとメッセージをしたためていたら、母の動きが突然止まった
「え? 一慶くんが?」
「そう。昨日は吾妻プロレスの合宿所でご飯を食べたから、今日はうちにおいでって」
その瞬間、母が悲鳴を上げた。きっと向こう三件、いや、商店街の奥の一河の家にまで届いたにちがいない。鶏や犬の吠える声がする中、両手で頬を押さえた。
「部屋が汚いじゃない……。ご飯も給料日前だから豪華じゃなかった。いやだわ。買い出し。肉にしましょう。良い肉にしましょう」
「お母さん? あの、孔一くんの家に行くのは?」
「そんなの後回しよ。お母さんは駅前のちょっと良いお肉屋さんに行くから、貴方は自力で行きなさい」
「そ、そんなああ」
さっきまでのゆっくりな歩きとは違い、陸上選手のようなフォームで家に帰っていった。
私、孔一くんの家なんてわからないのに。でもまあ、政治家のお家だし、ググったら見つかるかもしれない。
水咲からの返信がないまま、バス停を目指す。
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