賑やかな街だな、とクラピカは思った。
無事にザバン市に到着した4人。そこから夫役を務めたキリコの男にハンター試験会場まで案内をしてもらっている最中だ。
ゴンは大きな街を見たことがないのか大きな目を輝かせ、辺りを見回している。
クラピカやクロロ、レオリオは後ろからその光景を眺め、真顔で街を歩いていた。
「ねぇ、見て!!あの人カッコよくない?」
「どこー?あッ!ホントだ!やばーい!!」
甲高い声の女性が2人。何やらこちらを指で指しているようだった。
途端にレオリオは姿勢を正して歩き始める。
もちろんキメ顔も忘れずに。
…やめろその顔。無性に腹が立つ
すると女性たちがこちらに向かって歩いてきた。
「すいませーん!お兄さん、ちょーカッコイイですね!!良ければ私たちのお茶しませんかー?」
誰に言っているのだろうかと考えていると
「もっちろーん!!」
レオリオは鼻の下を伸ばしながら、女性たちに返事をする。
しかし、女性たちは困惑した表情を浮かべた。
「えぇ…?おじさんに言ってないんですけど…あそこの黒髪のイケメンに言ったつもりなんだけど…」
女性たちが指を指した先にいたのはクロロである
「あ、俺?」
とクロロは話を聞いていなかったようで、何言ってるんだコイツ?と訴えかけるような目でクラピカを見た。
「はぁ…」
ため息を吐いてしまったクラピカは悪くないだろう。
クロロに詰めよる女性たち。
話についていけないクロロ。
呆れ果てているクラピカ。
自分ではなくクロロだったという事に絶望するレオリオ。
現場は非常にカオスである。
その光景をゴンと夫役のキリコは苦笑いを浮かべ眺めていた。
「なんか凄いね。あそこ」
「そうですね…」
女性たちの誘いを断わり会場に向かったのだが、ハプニングは連続するものである。
迷子になったり、本屋に無断で立ち寄ってみたり、高齢者に絡まれたり
散々である。
ハプニングにより、予定より時間は掛かったものの、無事に会場に着くことが出来た。
目の前には立派なビルがある。
しかし、会場はその横にある小さな飲食店であるらしかった。
「え、そっち?」
誰かが呟いたその言葉に完全同意である。
4人の心境はさておき、夫役のキリコはその飲食店に入ってしまったので慌てて後を追う。
「ステーキ定食、焼き方は弱火でじっくり」
何やら店主の男に注文をしているようだ。
それ聞いた店主は4人を奥の部屋へと誘導した。
きっと何かの合言葉だったのだろう。
ゴンはステーキを楽しみにしていたようだったが、それが無いと理解すると分かりやすく落ち込んでいたので大変可愛らしかった。
4人は席に座り談笑をしていると、突然部屋が下に降り始めた。
なるほど。この部屋はエレベーターのようなものらしい。
きっとこの下に、会場があるのだろう。
4人は逸る気持ちを抑え、部屋が止まるのを待つ。
しかし、思ったよりも着かないのだ。
「なんか…長くね?」
レオリオはこの場の全員が思ったであろう言葉を口にする。
「うん!!凄く長いね!!」
続けてゴンは
「オレ、今凄くワクワクしてるんだ!!」
とまだ見ぬハンター試験に思いを馳せキラキラとした眼差しをする。
クラピカは読んでいた本を閉じると、小さく微笑んだ。
それを見たクロロは優しく微笑むと本を読み始める。
「あッ!クラピカって笑うと凄く綺麗だね!!」
「ホントだぜ。いっつも笑ってりゃいいのに」
ゴンとレオリオが言った。
「褒めても何も出ないのだよ」
そう言って何時もの表情に戻ってしまったクラピカは、閉じた本を開くと再び本を読み始めた。
下に到着するまでの間、この和やかな場所で過ごすとしよう。
───下に到着するまであと数分───
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