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時計がこの世界では1番大事。
俺の時計はこの世に一つしかない。おばあちゃんが手作りした。
俺のおばあちゃんは名前をサリアと言って、職人だった。木や石を削って作品を作る、いわゆる彫刻家みたいなもの。おばあちゃんは知る人ぞ知る素晴らしい職人として名を馳せていた。そんなおばあちゃんが作った時計は俺の“傷”と同じ形のデザインが彫られている。
その傷の話は正直したくない。
だけど、この傷を彫ってくれたおばあちゃんには感謝している。そのおかげで初めてこの傷を怪(いや)しく思わなくなったからだ。何で彫ったのか聞こうとしたけれど、おばあちゃんは既に他界した後だった。最後の作品と言って母に渡したそうだ。
母はその時計を受け取った時の衝撃は今でも忘れられないらしい。その“傷”の形が刻まれていたからだ。ショックを受けたのか暫く俺にその時計を渡した後は無気力な様子だった。
だけど俺は貰った時身体中に電流が走ったかのように今すぐにでもこの時計を身につけたいと思った。形はネックレス状になっていて、首にかけれるタイプだった。紐ではなく見たことのない金属で鎖が編まれていた。見た目もよく何より時計の針が動く時の音がよかった。カチ…ッと小さく聞こえ、23時になるとリーンッとなる。そんな不思議で、でも優しいこの時計が俺にとって1番の宝物だった。
だから、俺は名付けたんだ。シウルって。