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シウルって言葉の意味は祖母のサリアとの秘密だった。シウルはこの世で一つ…そんな大切な時計は不思議なところがいくつもあった。まず、壊れることがない。水に濡れても火に近付けたとしてもその時針は止まることなくカチッという音を鳴らして動く。そして、何より不思議なのは11月12日の朝3:55分に必ず音が鳴る。今日は8月の半ばだからあと3ヶ月ってところだ。そしてその音は表そうにも表せられない不思議な音…強いていうなら、雫がゆっくりとガラスに垂れる…そんな感じだ。しかも、その日は誰の誕生日な訳でも命日な訳でも特別そういう日ではない。なのに、音が鳴る。祖母が亡くなってからこの9年間。鳴らなかった日はない。だけど不思議とこの音は長く鳴る。数分ぐらい…ただ鳴る。それに鳴ってる時時間が止まったように他のものが動いている気がしない。だが、鳴り終わると何事もなかったかのように周りのものが動いてる気もするし強い睡魔が襲ってくる。だから、俺は…鳴り終わった後の数十秒の景色しか知らない。
────時は経ち。9月20日。午前。
「アリンー!おはよう」俺の名を呼ぶのは俺の恋人の癒姫華(ゆめか)。俺達は同じ歳の16歳。今日は一緒に出掛ける予定だ。癒姫華は絵を描いたり見たりするのが好きな子だ。だけど、運動や勉強が出来ないわけではなく学校の体育祭では1番を取っていた。テストでも学年1番の成績。つまり、俺の恋人はハイスペックなのだ。ちなみに、俺は訳あって学校には通ってない。
だけど、知能は他の人の倍はあると自信を持っていえる。所謂(いわゆる)、“ギフテッド”と言うものらしい。昔から不思議だった。周りの日常的なことに一切の疑問も不信も抱かなかった。この世にないものは好奇心を向けて目を輝かせていたがいざ仕組みがわかると自分で作れるまでにその知識は発達してしまう。だから、周りからの気味悪いものを見るような視線が恐くて恐くて仕方がないんだ。その中でも癒姫華だけはそんな俺に興味を持ち、話す度に笑顔が増えていく、そんな天使みたいな人だった。
でも俺はそんな癒姫華にでさえ、傷のことは隠してたんだ。聞かれても言えそうにないこの傷…でも本当は隠したくない。俺だって言いたい。だけど言ってしまえば誰かを裏切ることになると、頭の中にはあった。