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なんだろう。今までにこんな紋章見たことあったか?
まあ、まずは錆びた短剣から見てみよう。五層目でなければ珍しくもないが、ここまでボロボロな状態のものはかえって珍しい。
副葬品でもここまでの質の悪さは見たことがない。ドロップした時のアイテムの状態は基本的に良い。
五層目の敵を倒したのだから、それなりに強力な武器を望んでいたので、少し残念だ。
まあ、ここまでボロボロだと逆に意味ありげに思えてくる。ゲーム脳かもしれないが、取っておいて損はないだろう。
さて、問題はクレストだ。
謎の既視感を覚えるこの紋章――どこかで似たような模様を見たことがある気がする。
どこだ?この五層目だったか?
・・・いや、もっと前。このダンジョンに潜りたての頃だったような気がする。
もちろんダンジョン内での話だ。
背景に彫られたこの植物の模様は現実では見覚えがない。
・・・・・そうだ!!
二層目。ダンジョンに潜ってすぐ、石櫃の中に入っていた羊皮紙。書類に押されていた印。その押印のモチーフとなっている植物と同じデザイン!
やはり階層が進んでも世界観は繋がっている。
いや、というより・・・これは――
*******
私はこれまでダンジョンにはそれぞれ『テーマ』や『コンセプト』があるのだと考えていた。
例えば、以前食料を集めに行った駅前のフィールドダンジョンでは「草原」。
他にもネットの情報では「森」や「浜辺」、「坑道」、「廃城」なんかのダンジョンがあるらしい。
そして今、私が潜っているこのダンジョンなら「地下墓地」がテーマだろう。
だがここ最近、「そんな単純な話ではないのかもしれない」と思い始めた。
――副葬品として見つかる羊皮紙や書類。
稚拙な子供の絵、地図のようなもの、書き込みだらけの本、値札らしき紙、走り書きのメモ……
――階層が進むごとに進化する技術と文化。
素材は鉄から合金、未知の物質へ。装備の装飾や色合いにも、時代ごとの流行が感じられる。
――過去とのつながりを示すアイテムたち。
試作品と完成品が並んでいたり、同一の職人によると思われる金属細工が棺からいくつも発見されることもあった。
これらは、単なるダンジョンの「『テーマ』に沿ったフレーバーアイテム」として考えるには生々しすぎる。
数々の情報に触れて、私はこう考えるようになった。
ダンジョンとは、別世界から切り取られた「文明の断片」なのではないかと
これまではアイテムの模様や種別の類似性から、各階層に連続性があると考えていた。
しかし、もしクレストが“家柄”や“属性”を表す家紋のようなものだとしたら?
それは明確な文化的・文明的な系譜を示す手がかりになり得る。
もしこのダンジョンが、「どこかの世界で存在していた一族や文明の記憶を封じ込めた墓地」とすれば――
ここにあるのは、ただの演出ではなく、“現実の歴史”の痕跡かもしれない。
これまで私は、ダンジョンを“ファンタジー的な現象”のひとつと捉えていた。
だが、もしこの仮説が正しければ、ここは「我々とは異なる世界の存在」を裏付ける証拠になり得る。
これは単に『魔法や不思議な空間・モンスターが出現した』という類の話ではない。
――ここではない”どこか”に、我々の知らない人々による文化・文明があったということなのだから。
もちろん、この仮説には飛躍もある。
このダンジョンが「文明の一部を模した超精巧な空間」にすぎない可能性も否定できない。
せめて、他のダンジョンでも時間・空間・文化的なつながりが確認できれば・・・。
今までのダンジョン出現からそれに伴う謎。
それらを紐解く糸口を見つけた気がして、興奮してしまった。
少なくともここはダンジョン内だ、完全な安全とは言い難い。
今すぐにでも帰って、インベントリ内にあるこれまでに回収した紙片や鑑定スキルを使って謎を解くカギを探したくなるが、いったんここは落ち着かねば。
*******
ふう、少し落ち着いた。未だにステータス上では
状態:興奮
となっているが、ひとまずの冷静さは取り戻した。
それによく見るとスキルの欄にあった【考古学】のレベルが3に上がっている。
さっきの紋章について思い出した際に、一気に視野が開けた気がしたのはこれのせいだろうか。
興味は尽きないが、一旦この世界の謎は置いておいて。
残念ながら最奥のスケルトンを倒しても「鍵」は見つからなかった。まあ、前提として扉を開く鍵があるのかすら分からないのが現状だ。
とりあえず、残りの3体を倒すうちに手がかりが見つかるか、すべてを倒したら扉が開くことを祈ろう。
まずは目の前の敵を倒してからだ。
********
槍使いスケルトン。こいつの問題はその武器のリーチだ。
こちらの唯一のストロングポイントである「(おそらく)聖属性の剣」は、残念ながら片手剣なのでリーチ負けしている。
だが、もし相手がまともにこちらを認識できなければ?
答えは簡単だ。
・・・結果は、勝負にすらならなかった。
剣士スケルトンを相手にした時の反省点を踏まえて、花火類は最小限にした。閉所で煙が充満すると、呼吸が必要なこちらが不利だ。
・・・今考えると前回は過剰だった。
主に使ったのは爆竹数個と、前回大活躍してくれたねずみ花火。
槍を地面の花火相手に振り回している隙に、聖属性の剣を突き刺した。
一応、前回よりも花火が少ないので、足音に気を付けて接近したが効果はあったのかどうか。
なにはともあれ、サクッと倒すことが出来た。
スケルトンからのドロップは槍の穂先が数種類と、剣士スケルトンが落としたものと似たようなクレストだった。
槍の穂先はそれぞれが何らかの効果を持ってそうな、不思議な質感だった。決して単なる付け替え用の予備では無いだろう。
紋章は中央に槍と背景に例の植物。剣士スケルトンの紋章は中央が剣だった。
背後の墓の副葬品は『義足』だった。このスケルトンは決して隻脚ではなかったので本人ではないのかもしれない。
さて、問題になったのは弓使いのスケルトン。上層以降めっきり見なくなったスケルトンだが、その分手ごわい。
なにより遠距離攻撃なのがきつい。
仕方がないので相手の射程ギリギリで花火や爆竹を焚いてみたのだが、正確にこちらを狙ってくる。たまに設置した噴出型の花火を撃ってはいるものの、明らかにこちらを認識している。
どうやらこちらを認識する手段が音や振動以外にあるようだ。
では、ここであらかじめ用意していた文明の利器二つ目を使おう!
コメント
1件
ダンジョンのテーマ装備だと思ってたものが「文明の痕跡」かも?っていう気づきの瞬間、すごく鳥肌立ちました…!クレストの既視感から記憶がつながる流れ、考古学スキルが上がるのも納得です。この世界の歴史がもっと見えてきたらいいな…花火戦術も毎回工夫されていて楽しいです🔥