四月二十三日……午後二時……。
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)たちは巨大な亀型モンスターと合体しているアパートの二階にある部屋のお茶の間でくつろいでいた。
「腹減ったなー。ミノリー、なんか作ってくれよー」
「お茶漬けでいいなら作るわよ」
それは料理と言えるのか?
うーん、まあ、今はそれくらいでちょうどいいかもしれないな。
「うん、じゃあ、それでいいよ」
「分かったわ。でも、自分の分はちゃんと作りなさいよ?」
「えー、さっき誰かさんに血を吸われたせいで力が出ないから無理ー」
「あたしが悪いみたいに言わないでよ。シアンだって同罪でしょ?」
シアン(擬人化したメスドラゴン)はブンブンと首を横に振っている。
ミノリ(吸血鬼)はキレなかった。今までナオトの血をたくさん吸ってきたのは自分であり、なおかつ先ほどもナオトの血をシアン以上に吸ってしまったことを知っていたからだ。
「あー、なんか力が出ないなー。辛いなー」
ナオトは床でゴロゴロしている。
わざとらしい棒読みね。
「はぁ……じゃあ、こうしましょう。あたしはあんたのお茶漬けを作って、あんたはあたしのお茶漬けを作る」
「それをすることによって、俺に何のメリットがあるんだー?」
「それをやってくれたら、あたしの体を好きにしていいわよ」
は?
「いや、それはダメだろ。というか、お前の体はお茶漬け一杯分と同価値なのか?」
「え? あー、それもそうね。えっと、じゃあ、お茶漬け一杯を作るとマッサージ一回分が無料に……」
「マッサージは勘弁してくれよ。どうせ、どさくさに紛《まぎ》れて左耳を触るつもりなんだろ? で、何度やめろと言っても気が済むまで責め続ける。そうだろ?」
ちっ! うまくいくと思ったのに!
「そ、そんなことないわよー。あんたはあたしをなんだと思ってるのー?」
「俺の血と悲鳴が大好きなゴスロリ吸血鬼」
「あ、あたしはそんなんじゃないわよ! そんなこと言ってると、もう服作りのいろはを教えてあげないわよ!」
ナオトはムクリと起き上がると、ミノリ(吸血鬼)のそばまで移動し、正座をして頭を下げた。
「それだけは勘弁してください。お願いします」
「じゃあ、まず頭を上げなさい」
「はい、分かりました」
彼が顔を上げると、ミノリ(吸血鬼)は彼の額《ひたい》にキスをした。
「い、いきなり何すんだよ!」
ミノリ(吸血鬼)は彼の両頬を両手で包み込む。
「あたしは途中で何かを投げ出したりしないわ。だから、あんたもちゃんと最後までついてきなさい。いいわね?」
「わ、分かった」
「よろしい。じゃあ、お茶漬け作るわよ。ほら、早く立ちなさい」
「わ、分かったよ! 立てばいいんだろ! 立てば!」
お茶漬けを作りに台所に向かった二人の背中をみんなは見ていた。
みんなはどっちが保護者なのか分からないなーと思っていた。