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お茶漬けが完成した。
熱いのがいいやつもいれば、冷たいやつがいいやつもいる。
こんな簡単な料理(?)でも好みが分かれるんだな。
「ねえ、ナオト。一つ言っておきたいことがあるんだけど、いい?」
「ん? なんだ?」
ミノリ(吸血鬼)は既に食べ終えている。
食うの早いな、おい。
ミノリはこちらに体ごと向けて、俺の顔をじっと見つめている。
「あのね、イビルシープの毛……つまり、羊毛《ようもう》だと毛糸はできるんだけど、それだと洗濯する時、面倒なのよ」
「えっと、つまり、俺たちが集めたものは無駄だって言いたいのか?」
「無駄じゃないけど、あんたに必要なのは綿《めん》よ。だから、綿《わた》の木を探さないといけないのよ」
「そうか……。ん? じゃあ、どうしてイビルシープを捕獲したんだ?」
「この世界にも四季があるわ。冬になる前に毛糸でマフラーとか手袋を作っておけば、旅をスムーズに進められるでしょ?」
「なるほど、そういうことか。じゃあ、今から探しに行くか?」
ミノリ(吸血鬼)は首を横に振った。
「綿《わた》の花が咲いて収穫できるようになる時期は秋よ。だから、綿《わた》の木を見つけたって意味ないわ」
「うーん、ということは……生地は買った方がいいのかなー」
「……あんたがいた世界なら、そうするしかないけど、ここは魔法やモンスターが存在している世界よ。ということで、ツキネ! あんたの出番よ!!」
ツキネ(黒髪ポニテのアパートの管理人さんの姿に変身している変身型スライム)は目をパチクリさせる。
「え? 私ですか?」
「ええ、そうよ。あんたの固有魔法なら、収穫時期なんてものは関係ないし、大量生産もできるでしょ?」
「ま、まあ、それはそうですが……」
その時、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)が手を挙げた。
「ちょっといいかな?」
「え、ええ、いいわよ」
「僕の外装……このアパートと合体している亀型モンスターの中には、僕が趣味で集めた植物がたくさんあるんだよ。で、その中に綿《わた》の木があるんだけど……」
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)は目を輝かせながら、ミサキの両手をギュッと両手で包み込んだ。
「そ、それは本当か? ミサキ!!」
「うん、本当だよ。なんなら、今から見に行くかい?」
「行く! すぐ行く! 早く案内してくれ!」
「まったく、ご主人はせっかちだね。そんなに急がなくても植物は逃げないよ。まあ、たまに逃げるやつもいるけど」
ミノリ(吸血鬼)はナオトをミサキから離すと、彼にぐいと顔を近づけた。
「いい? あんたの仕事は服の生地になる原料を見に行って収穫する……ただ、それだけよ。だから、変な植物を見つけても触ったり近づいたりしたらダメよ? 分かった?」
「お、おう、分かった」
ナオトはミノリの言いつけを守らないと大量に血を吸われる可能性があるなーと悟った。