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タイトル:「全部、見られた。」
「じゃあ……もうちょっとだけ、
君を俺だけのものにするね」
そうささやいて、藤澤さんの手が私の頬を撫でる。
そのまま、唇が再びゆっくりと重なり――
(また、はじまっちゃう……)
肌の上を這う彼の指先。
呼吸も、心臓も、熱を帯びていく。
(だめだって……でも、もう……)
そんな時だった。
「おーい、涼架~、昨日の資料さ~……っっっっっっ!!??」
ガチャ――!
唐突に開いたドア。
そして、室内に踏み込んできたのは、大森元貴さん。
「…………………………」
「…………………………」
一瞬、全員が固まる。
私の上にかぶさる藤澤さん。
シーツの中、肌と肌が重なっているのは明らか。
元貴さんの口が、ゆっくりと三日月型に曲がった。
「は~~~~~い、現場~ッ! 現行犯で~す!!」
「ちょっ……ま、待って!! 違……ッ!!」
私が慌てて体を起こそうとするも、
藤澤さんはまるで観念したかのように、頭をガシガシと掻いていた。
「……うわぁ……マジで入ってきたか……」
「いや、鍵くらいかけとけって!! つか、朝から情熱的すぎでしょ?!」
元貴さんはソファに倒れこみながら笑いを堪えきれず、
「ねえ、ねえ、藤澤くん? これ、なにしてんの?説明して? 言い訳する?」
と畳みかけてくる。
すると、涼架さんはゆっくりとため息をついて――
「…………そうだよ(照)」
「……へ?」
「言い訳なんか、しない。だって……ほんとに、そうだし」
一瞬、空気が静かになる。
元貴さんが少しだけ目を丸くしてから、
「……うわ、マジか。
本気でそういうやつなんだ、藤澤涼架って男は。」
そう言って、呆れたような、でもどこか微笑ましそうな声で笑った。
「……まぁ、うん。
もうここまで見たら、止めないけどさ。
せめてカーテン閉めときな?」
「……うん、それはほんと、ごめん……」
頭をぽりぽりと掻きながら、
藤澤さんはようやく布団を持ち上げて私をそっと隠してくれた。
「……で、君はどう思ってんの?」
不意に元貴さんが私に尋ねる。
「え……?」
「その顔見たらわかるけどさ、もうさ。
言わなくても“好き”って出ちゃってるけど、
……ちゃんと、そうなの?」
私が俯いて、そっと頷くと、
元貴さんはため息をつきながらニヤリと笑った。
「……はいはい。じゃあもう好きにしなよ、ふたりとも」
そう言って、部屋を出て行こうとしたその瞬間――
「ただし、次はノック無視しても入るからな」
バタン、とドアが閉まる。
静かになった部屋に、妙な余韻が残った。
「……ごめん、驚かせたね」
そう言って、藤澤さんは苦笑する。
「……でも、ちょっと嬉しいかも。
バレてよかった。そしたらもう、隠さなくていいもんね」
その言葉に、私の胸の奥がじんわり温かくなる。
「……あ、でも続きは……またあとでにしとくか」
「……や、やめて……もう恥ずかしい……」
「ふふ、恥ずかしがるのも、好きだけど」
涼架さんは、少しだけ頬を赤く染めながらも、
照れ笑いを浮かべて、私の髪をそっと撫でた。
終わり
リクエストほしいな〜なんちゃって(欲しいです)