事務所の同期に、一際個性が秀でた女性がいる。綾野才さん。天衣無縫という個性で、発動すれば全ての身体機能が爆発的に向上するらしい。
「デクお疲れさま。」
「アテナもお疲れさま。」
ヒーロー名アテナとして活動する彼女は、その個性をほとんど使わずにヴィランを捕まえてしまう。だからほとんどの人が天衣無縫状態の彼女を見たことがない。
「天衣無縫って、身体の一部だけ強化することできるの??」
たまたま退社時間が一緒だった帰りに聞いてみる。
「やってみたけど、できなかった。」
「なのにヴィランを一瞬で捕まえてた。」
「近距離・対人戦闘は個性使わなくていいようにとにかく武術を身体に叩き込んだ。」
「凄いな。確かにあの動きはかなり訓練をしないとできないね。実戦で個性使ったことは??」
「今のところない。」
「ますます凄いな。」
「最近使ってないから鈍りそう…。そうだ、今度一緒に訓練してくれない??」
「僕で良ければ是非!!」
と約束をして別れた。そして、当日さまざまな訓練ができるヒーロー専用の施設にて。
「準備オッケー??」
だだっ広いフィールドで2人準備体操を念入りにして。
「オッケーだよ。じゃあまずは10分で。」
タイマーをセット、起動していざ開始。
「天衣無縫…。」
祈るように手を合わせた彼女。外見は変わらないものの。
「(凄いパワー!!30%じゃ押し負けそうだ!!)」
華奢な身体からは想像もしないパワー。そして高速で繰り出される武術の技。
「(待て待て!!空手??合気道!?毎回違う形で攻撃してくるから読めない!!)」
蹴りを防御すると何mか後ずさった。両者間合いをとる。
「次は僕が攻撃する番だね。」
彼女は自分が出す技をことごとく防御していく。
「(全く隙がないな!!)」
両者渾身の1発で相討ちになったところで終了のブザーが鳴った。
「解除…。」
彼女は呟いて力無く膝をついた。
「大丈夫!?」
「大丈夫。どんなに鍛えても負荷が凄くて…。」
かつて自分もそうだった。だからその気持ちはよく分かる。
「でも凄かったよ!!武術は何でも出来るんだね!!」
彼女に肩を貸してフィールドを出ると。
見たか!?
あのデクと互角のパワーとスピード!?
あれが噂のアテナの個性か!!
と周囲が騒然としていて、その中にもちろん。
「よぉデク。なんかおもしれーことしてんな。」
「かっちゃん、僕の同期の綾野さんだよ。」
「コスチュームで分かるわ。アテナだろ。」
「うん。」
「個性使わねーくせにちやほやされてんなって思ってたら、そういう縛りがあったんだな。」
彼女はあわてて借りていた肩を振りほどいた。
「噂のダイナマイトね。ちやほやされてるって思ったことないけど、あなたの気分を害したなら謝るわ。」
「気分害される前にてめぇなんか眼中にねぇんだわ。」
次は何を言ってやろうかと無言の火花を散らす2人をどう仲裁するか悩む。
「デクと互角なら、オレはてめぇを完膚なきまでにぶっ潰してやるぜ。」
「その言葉、そっくりそのままお返しします。」
「よぉしデク!!こいつがまたここくる時連絡しろ!!」
「なんで僕が!?」
「自分のスマホにアイツの連絡先が入るなんて反吐が出るわ!!」
「女子に免疫ないんだ、以外。」
「てめぇは黙ってろ!!」
「首洗って待ってなさい!!緑谷君、ジムでアフターケアしよ。」
「ムカつくからジムで追い込む!!」
こんな時までわざわざ同じ場所に行かなくてもと思いながら、終始火花を散らす2人に着いていく。
「今日はありがとう!!また明日。」
「こちらこそありがとう!!じゃあまた。」
ひたすら追い込むかっちゃんはさておき、自分たちは施設をあとに。
「(さっそくノートにまとめなくちゃ!!)」
彼女の個性を見れたことで感激のあまり気分が浮き足たつ帰り道。
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