【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
ワードパレットでリクエストいただいた3つの言葉(サブタイトルになってます)を本文中に使用してのお話になります
「抱きしめる 大好き 思いを込めて」
『…なぁ、何これ』
ないこから個別チャットにメッセージが送られてきたのは、ある日の午後だった。
俺はその日いつも通り会社にいて、休憩時間中に届いた通知に気づいた。
『今家に届いたんだけど』
少し機嫌が悪そうにも取れなくはない短い言葉。
いや、機嫌が悪いというよりは困惑しているのかもしれない。
…そりゃそうだ。
家にいたら急にインターホンが鳴って、覚えのない荷物が届く。
「何か頼んでたっけ」なんて思いながら出てみれば、びっくりするくらい大きな段ボールが目の前に差し出されただろうから。
「かわいいやろ」
一言だけメッセージを打ち込み、送信する。
『…いや、かわいいけどさ…』なんて送られてきた返事からはため息が聞こえてきそうだ。
…呆れている風なのにすぐその後に連投されてきたのは、今まさに撮ったばかりだろうないこの自撮り写真。
片手でギャルピし、レンズに向けての上目遣い。
その隣には驚くくらい大きな犬………の、ぬいぐるみだ。
「猫派だったはずが、犬のぬいぐるみ見かけたら買うようになっちゃった」なんてないこが配信で言っていたのはいつだっただろう。
相棒のペットキャラがリスナーに愛されるようになり、それからモチーフである犬が気になり始めたらしい。
そんな話を聞いていたから、つい先日たまたま通りかかった店で、ばかでかい犬のぬいぐるみを見つけて即買いした。
その場でないこの家に送ってもらうように手配までして。
『置く場所ねぇわこんなでっかい犬』
なんといっても、確か体長は120センチくらいはあったはずだ。
真っ白の毛がもふもふしていて、まさにあの「すしーぬ」のイメージ通りだった。
あまりのサイズと存在感には、かわいいを通り越して苦笑いしか漏れないのだろう。
「犬、大好きになったんやろ? 俺の代わりにかわいがってやって」
互いに多忙すぎてもう2週間近くろくに会えていない。
そんなメッセージを送り出すと、俺は午後の仕事へと戻った。
そんなないことのやり取りがあったのが、もう1週間も前だ。
ようやく本業の仕事も一段落し、活動により力を注げるようになった頃。
その週末の土日は休みをきちんと取れる目途がついたから、金曜の夜は残業を終えてないこの家へと向かった。
活動関係の仕事の話は通話でしていたし、チャットでのやり取りも欠かす日はなかった。
だけど顔を合わせるのは3週間ぶりだ。
日付を回りそうな時間だったから、「今から行く」なんて前もって宣言はしない。
最近疲れからか体調が本調子ではなさそうだったし、もう今日は眠っている頃かもしれない。
合い鍵を使ってそっと玄関の扉を開くと、やはり室内は真っ暗だった。
人感センサーのフットライトが俺に反応して仄かな灯りをともすだけ。
その明かりを頼りに、天井の照明はつけないまま記憶の通りに奥へと進む。
一番奥の寝室まで行って、音を立てないように扉を引いた。
間接照明が仄暗く照らす室内。
大きなベッドの真ん中で、ないこは静かな寝息を立てて眠っていた。
ただいつもと違うのは、その腕の中にあのすしーぬそっくりのばかでかいぬいぐるみを抱きしめていること。
抱き枕の代わりにでもしているのかと思ったけれど、はたとそこで思考が止まった。
…違うな。抱き枕の代わりじゃなくて、俺の代わりか。
あの時揶揄するように送った自分のメッセージを思い出して、そんなことを思った。
白くてふわふわのそれを抱きしめる横顔は、眠っているのに幸せそうにも見える。
いい夢でも見ているんだろうか。
思わず笑みを漏らして、俺もそのベッドに滑り込んだ。
すしーぬと挟む形で、ないこを後ろから抱き寄せる。
「……んぅ…」
よっぽど疲れているのか、起きる気配はないままないこは小さな声を漏らした。
…そうかと思えば、意識は未だ手離したままでころりと寝返りを打つ。
いくらぬいぐるみが柔らかくて気持ちが良かったとしても、本物の人間には敵わないのかもしれない。
俺の体温に引き寄せられるようにして、眠ったままぎゅっと抱きついてきた。
3週間ぶりの、そのぬくもり。
じわりとその温かさに浸るように目を閉じる。
…あぁ、本当ならシャワーでも浴びてすっきりしてから眠りたかったのに。
これまでに蓄積された疲労と、すぐ傍に与えられた愛しさとぬくもりには敵うわけもなく、目を閉じたその瞬間からだんだんと意識が遠のいていった。
朝日が昇る頃に目を覚まし、勝手知ったる我が家のようにキッチンでコーヒーメーカーを稼働させる。
今日くらいは惰眠を貪ろうと思っていたのに、予定よりも早く起きてしまった。
最近は忙しすぎて睡眠時間も削られていたから、朝早くに起きる習慣が身についてしまったんだろう。
こぽこぽと音を立てるその機械の前に、マグカップを2つ並べた。
青とピンクの見慣れたそれを置いた時、かたんと寝室の方から音がする。
…ないこが起きた音だ。
「……あれ、まろ? 来てたん?」
低血圧で寝起きがいい方とは言えないないこは、寝ぼけまなこを左手でこすりながら部屋から出てくる。
その右手には巨大すしーぬの耳が掴まれていて、ずるずると引きずっていた。
「いやいや、かわいそうな持ち方すんなよ。引きずるなって」
苦笑い気味に言った頃、コーヒーが出来上がったことを知らせる音が機械から響いた。
そのポット部分を手に取り、用意してあったマグカップに注ぐ。
「だってでかいじゃん。こうでもしないと持ち運べんし」
「本来は持ち運ばんでえぇんやけど。……随分気に入っとるやん」
「は?そんなんじゃねぇし」
唇を尖らせたないこは、そのままぬいぐるみをぽいとソファの上に放った。
乱暴にならない程度の力だったからか、すしーぬはそのままソファの上にちょこんと……いや、ででんと鎮座する。
「おかげでここ数日、寂しい気持ちもちょっとは紛れたやろ?」
笑いながら言って、眠気覚ましのコーヒーを注いだマグカップを手渡す。
青いカップはないこに、ピンクの方は俺に。
これを買い揃えた時からの暗黙の了解だ。
だけどないこは、受け取ったカップをそのままテーブルに置いた。
口をつけることもなく、マグカップはことんと机上で音を鳴らす。
空いた手を代わりにこちらに伸ばしてきた。
「寂しいとか、そんなわけないだろ。子どもじゃないんだよ」
そんな言葉を吐くくせに、両腕は俺の首に回される。
ぎゅっとしがみつくように抱きついてきた。
昨日巨大ぬいぐるみを抱きしめていた時よりも、もっと強く。
その言葉が本音なら、じゃあこの行動はなんなん?
そう笑い返そうとしたけれど、やめておいた。
天邪鬼なないこの「らしさ」まで愛しくなって、俺もその細い腰に腕を回す。
ぐっと力強くそのまま抱き寄せた。
会えていなかった間の、この3週間分のありったけの想いを込めて。
コメント
4件
やっぱり青桃の小説は尊いですね…お陰様で再来週の期末頑張れそうです!先が長過ぎますけどね、、、wぬいぐるみの120センチはでかいな…コストコでしか見たことがない…桃くんもやっぱりぬいぐるみより青くんのほうがいいか((もう尊すぎて心臓が…終わってしまいそう…これからも頑張ってください!!
支部の方とはまた少し内容が変わっていて好きです😭😭文句言いつつ何だかんだぬいぐるみ気に入ってる桃さん可愛いですね...ほんとに青桃に対する解像度が高いというか、何もかも解釈一致で大好きです🥲💖💖投稿ありがとうございます❕
通知きて飛んできちゃいました😊 桃さん可愛すぎますね🍀*゜ 寂しい時に好きな人が買ってくれたぬいぐるみって…流石に大事にしちゃいますよね💕︎ 塾終わりでめちゃくちゃ疲れてたんですけど青桃の尊さで一気に吹き飛んじゃいました🤭💖