「よし、行こう。いや、早く行こう。……もう楽しみすぎるんだけど」
家を出たときから黒尾はずっとそわそわ。
普段の余裕はどこへやら、エスカレーターでも落ち着かない。
「てつくん、そんなに急がなくてもいいよ」
「いやいや、赤ちゃん用品だよ?
俺たちの子どものだよ?
テンション上がらない方がおかしいって」
売り場に入った瞬間、黒尾の目がキラッキラになる。
「ちょっと見てこれ!!この服のサイズ……小さすぎない?可愛すぎるんだけど」
ベビー服を両手で持って、声が明らかに一段高い。
「🌸、これ絶対似合うよ。いや、似合う未来しか見えない。
可愛すぎて俺どうしよう……」
あなたが笑っていると、黒尾は今度は哺乳瓶コーナーへすっ飛んでいく。
「見て!柄の種類こんなにあるの?
え、どうする?どれがいいと思う?
……いや全部買っとく?初期投資ってことで?」
テンションが追いつかず、ちょっとパニック気味。
そしてオムツ売り場で急に足が止まる。
「……なんか急に実感きた。
守らなきゃって気持ち、やばいな」
あなたのお腹にそっと手を添えて、真剣な声になる。
「ちゃんと準備しようね。🌸にも無理してほしくないし、
うちの子に“パパ頼りない”とか思われたくないし」
一瞬で表情が優しくなる黒尾。
でも――すぐにまたテンション復活。
「ほらこの抱っこ紐!絶対似合う気がする。ちょっと付けてみていい?」
試着用の抱っこ紐を付けて、得意げに胸を張る。
「てつくん、それ逆だよ」
「……え?あっ……まじか。
父親レベル、初手から試されてる気がするんだけど」
頭をかきながらも笑って、あなたの肩を軽く抱き寄せる。
「でもいいよな、こうやって準備してく時間。
なんか……家族になるって感じしてさ」
照れくさそうに言いながら、あなたの手をぎゅっと握る黒尾だった。
コメント
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話が繋がってるの好きぃ