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翌日、またお昼の時間……なんだけども。
本日は一人、昨日黒沢君と一緒にご飯と食べた場所で待っていた。
向こうからメールが来て、待ち合わせにした方が目立たないかもよって相談されたので。
確 か に。
というか、こういう所でこそスマホをちゃんと使いなさいって話だよね。
昨日直接声を掛けた時、周りのクラスメイトさえも驚かせてしまっていたみたいだし。
そもそもクラス内で私が喋る事自体が殆どないので、関係ない人までこっちを見ていたくらいだ。
なんだか恥ずかしくなってしまって、移動中も黒沢君の後ろに隠れてしまったのだが……これもまた、注目を集めてしまって余計に恥ずかしかった。
私が変な事をしたせいで、黒沢君の方に変な噂とか立っていなければ良いんだけど。
散々お世話になっているのに、これ以上違う方面でもご迷惑をお掛けする訳にはいかない。
という事で、今日は一人でポツンと待っていると。
「ごめん、お待たせ白川さん。はいコレ、飲み物買って来たんだけど……お茶か甘い物、どっちが良い?」
待ち合わせ場所に顔を出した黒沢君は、笑いながら飲み物を二本差し出して来た。
わ、何か凄い。
クラス内でも見る「飲み物買って来るけど何かいる~?」みたいなアレっぽい。
友達が居なかった私は、今まであんな事した事無かったけど。
「す、すみません! ありがとうございます! え、と……それじゃ、カフェオレの方、貰っても良いですか?」
ご飯の時に甘い物を飲む習慣って、あんまり無いけど。
実家だと基本的に緑茶とかだったし、ご飯の時にジュースなど飲もうとしたら怒られたし。
お父さんは夕飯と一緒にお酒を飲むのに……何故だ、と思った事も少なくない。
お兄ちゃんの家に来てからはそんな事言われないけど、何となく習慣でお茶ばかりだったので。
「エ、エヘヘ……」
「なんか、嬉しそうだね? カフェオレ、好きなの?」
「ぁ、えと、あのっ……甘い物、好きなんですけど、あんまり飲まなくて。というか、ご飯の時とかはずっとお茶とかだったので。教育的に、そういう習慣がありまして」
何だか不思議そうな表情で覗き込まれてしまい、慌てて言い訳しながらもお弁当を準備していく。
そこで、思い出した。
今日のお弁当、早乙女さんのリクエストで、その……結構、見た目が。
もしかして、男の子だとこういうの嫌がるかな?
などとちょっとだけ緊張しつつ、相手の前にソッと差し出してみたのだが。
「もしかして白川さんの家って……結構厳しいの? お兄さんの様子を見ると、なかなか心配されてそうだなぁってのは分かるんだけど……」
ちょっとだけ心配そうな表情で、私の方を見て来る黒沢君。
今はむしろ、お弁当の蓋を開けた時の反応の方が心配です。
高校生にもなって、随分とその……お子様ランチ的なお弁当を作ってしまったので。
だ、大丈夫かなぁ……コレ。
蓋を取るのが怖いんですけど。
「実家は、まぁ……結構、キッチリしていたと言いますか。でもお兄ちゃんの所に来てからは、自由にさせてもらってますよ?」
「え? ぁ、もしかして……度々話題には上ってたけど、お兄さんと完全二人暮らしって状態? そう言えばお金の話とかになると、絶対お兄さんの話題になってたもんね」
「そうですね、今実家からは少し離れている感じです。あ、あはは……やっぱり、ちょっと変ですよね」
これまではこんな事を話す人も居なかったけど、やっぱりお家事情的な事になってしまうとちょっと気まずいと言うか。
まだ高校生の身分で、我儘言ってお兄ちゃんの所に転がり込んでしまった状態なのだ。
なのでちょっと格好悪いというか、他の人よりずっと甘えた生活をしている自分が恥ずかしいというか。
やはり反応に困ってしまい、ポリポリと頬を掻いてみれば。
「ご、ごめんね! 家の事とか、他人の俺があんまり踏み込むべきじゃないよね……でも、その。“変”って事は、無いと思う。事情なんて人それぞれだし、白川さんが気にする事じゃないって言うか。と、とにかくごめん!」
何だか相手の方にまで気を使われてしまい、思わずアハハ……と困った微笑を浮かべてしまったが。
黒沢君の方から話題を変えてくれて、「お、お弁当! 食べても良いかな?」と言ってくれたので、どうぞどうぞと勧めておいた。
家の事を話すのもちょっと気まずいけど、今現状の問題としてはコッチの方が緊張する。
どんな反応をするのか、というか。
ドン引きされたりしないかな……という心配の下、ドキドキしつつ相手がお弁当の蓋を開ける所をジッと見つめていると。
「……え?」
パカッと蓋を開けた先に広がるのは、まごう事無きお子様ランチ。
せっかく早乙女さんからのリクエストなので、ちょっと気合いを入れてしまい……本日は、普通にご飯を詰めるとかではなくてオムライスが滞在していたりする。
おかずの方も、見た目が良い物を選んで非常にカラフルだし……旗まで立てたのは、やり過ぎだっただろうか。
お弁当の蓋を閉めなくちゃだから、斜めに刺さっているけど。
コレを見て固まってしまった黒沢君。
なので完全に、「やってしまったぁぁぁ!」と心の中で叫んでいたのだが。
「え、え!? すごっ!? これ、全部白川さんが作ったの!? お店で出て来るヤツみたいじゃん!」
「そ、そんな大した物ではないんですけど……一応、全部、作りました」
「すっご! もはや食べるのが勿体ないくらいだって! 食べる前に写真撮って良い!?」
予想外な事に、物凄く喜んでくれた。
セ、セーフ……というのと。
もしかして、意外と皆“お弁当らしいお弁当”って結構好きなのかな?
実家で教わっていた時は、それこそ高級店のお弁当とか見せられて。
「これに見劣りしない物を作れる様になりなさい。この程度、出来て当然です」
くらいに言われていたので、凄く綺麗な高そうな物の方が喜ばれるのかなって思ったりしていたけど。
でも、良かった。
今では嬉しそうな表情を浮かべながら、二人分のお弁当を並べてバシャバシャ写真を撮っている黒沢君。
これだけ喜んでくれるのなら、作った甲斐があったというもの。
早乙女さんの方は、大丈夫だったかな……?
◆
「ふぁぁぁぁ!? 何これ、何これ!? 子供だったら絶対憧れるお弁当じゃない! というか大人でも嬉しいどころか、料理出来るって自慢してくる若手だってココまでしないんじゃない!?」
『ねぇぇぇぇ! 早乙女さぁぁぁん! なんで二日続けて映像共有しながら自慢してくんのぉぉ!? シックスのお兄さん、お願いします! 妹さんとオフ会させて下さい! お泊り会! お泊り会したい! 私もシックスのご飯食べたぁぁぁい!』
「相変わらず、仲良いですねぇ……お二人」
会社のオフィスで、本日も絶叫が上がっていた。
妹の作った弁当に対して、顔面の筋肉が緩み切っている早乙女さんと。
モニターには、悔しそうな表情でめっちゃこっちを覗き込んでいるseven。
他の担当サポーターでも、絶対こんな事してないだろ。
普通もっとドライなんよ、お仕事上の付き合いなんよ。
思わず溜息を零しつつ、こっちも弁当を開くと。
そこには、まごう事無きお子様プレート。
パクリと一口食べてみると、味つけの方はしっかり大人向けというか。
冷凍食品とかで簡略化してないってのがしっかり分かる程に……旨い。
とはいえ見た目は子供向けなので、色とりどりなおかずがぎっしり。
放っておくと、こういう事に一切手を抜かなくなってしまう子なので、なるべく断わっていたのだが。
でもやっぱり、夢月の作る弁当は旨い。
高校生の本分、それは“ちゃんと学生を満喫する事”だと思っている。
だからこそ最初は遊びなさい、手を抜きなさい、いっぱい我儘言って、しっかり寝なさい。
なんて言ったのだが……こればっかり言うと実家との環境の変化に追いつけず、妹が困惑気味だったので。
一旦は“勉強”の方向へとシフトさせて、それ以外は自由にして良いって方向性に変えたのだが。
やっぱ、こうして作ってもらうと俺も甘えちゃうなぁ……。
むしろゲームに夢中になり過ぎて、ご飯作るの忘れた! 寝坊した! くらいでも丁度良いかなって思っていたりするのだが。
最近は“仕事”を意識しているのか、本人も結構キッチリし始めたしなぁ。
「いやぁ……美味しぃ。ホント、生き返る……野菜美味しいって本気で思ったの、いつぶりだろう。コンビニ弁当だと“ウン……まぁそうだよね”って感じだし、サラダ買って来ても、まぁ野菜だなぁって感じしかしないもんね」
「夢月は本気を出すと、野菜どころか肉の扱いまで完璧ですよ。ツマミに角煮を作ってくれた事があったんですけど、わざわざ居酒屋で頼もうとは思わないくらいトロットロです」
「あ、決めた。今週末白川君の家で託飲みにしよう、ね? そうしましょう。大丈夫、食材とかお酒とか全部私が用意するから。そっちは妹さんだけ用意して待っててくれれば良いわ。今週は本気を出して、残業を徹底的に撲滅しましょう」
「早乙女さーん? それ以前の問題忘れてますよー? 俺、一応男ですからねー?」
『はいはいはい! 私も参加する! 皆でお泊り会にしましょう!』
「sevenさーん? 君は俺だけビジネスホテルにでも追い出す気ですかー?」
なんかすげぇ事を言い出している二人にため息を零しつつ、手近な所にあった書類をヒョイっと持ち上げた。
今度のイベントの企画書。
今回のものは賞金首達にも負担が少なく、どちらかというと……より彼等を身近な存在、というか同じプレイヤーなのだと感じてもらう為の企画。
これだけでは、本当に賞金首のファン向けサービスにしかならないのだが。
これの目玉は、そこでは無いのだ。
「賞金首の“オフショット大賞”……夢月、こういうの苦手そうなんだけどなぁ……」
「パパラッチみたいに集まって来るなら、当然賞金首側が逃げる事もOK。ユーザーと運営側の採点方式で、そんな写真は評価しませんって公表されれば、自然と“撮り方”を変えるものでしょう? 今回に関しては賞金首の全員、時間内“破壊不可能オブジェクト”として設定するつもりだから、やられる心配も無いし」
「なんかもう、思いっきり“盗撮大会”なんですけどね? 目立つ事も仕事だって言われても、嫌がる賞金首だって多いんじゃないですか?」
「それは今度の会議で色々説明してから、参加不参加の選択を与えますとも。ちなみにseven、貴女はどう思う?」
『別に良いですよー? むしろポーズ取ってあげるし。オフ会兼お泊り会許してくれるなら、お部屋でコスプレ撮影とかも許可しますよ~お兄さん。だから、ね? お家に遊びに行かせて下さいよぉぉ……』
とんでもない事を言いだしたsevenに、ブッ! と吹き出してしまったが。
撮るのはあくまでユーザーであり、撮られるのは賞金首のアバターだっての。
というか、人前に晒される事慣れ過ぎだろうこの子。
「これと同時にモデルガン系の発売と、ゲーム内での各賞金首装備パックの発売。マァジでアイドルなノリになって来ましたね。ついでにオフショット大賞には、それらが貰える各賞を設置……」
「これだけ人気が出ちゃうとねぇ……ついでに言うと、ここらで賞金首の新しい武装も考えていかないと。やっぱ新装備は話題性あるしねぇ~、賞金首達にもリクエストとか聞いておかないとだから、白川君も妹さんによろしくね? 分かってると思うけど、現実に無いモノだって有りなんだから。とにかく“我儘”を聞き出して頂戴」
そう言われましても、夢月が娯楽に触れたのなんて俺の所に来てからだからなぁ……。
今は銃に慣れる事に必死って感じで、オリジナルを考えろって言われても多分無理だろ。
他の映画やゲームを参考に、“あったら良いな”を想像させてみるか……。
そんな事を考えながらも、昼休みだけはまったりと休憩を取るのであった。
やっぱ妹の弁当があると、休むか! って気になるわぁ。
モニターに映ったsevenだけは、ずっとギャーギャー騒いでいたけど。
コメント
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みぅです🖤 今日のお弁当シーン、めっちゃ可愛かったです🥺✨ 黒沢くんが写真撮るくらい喜んでくれて、作った甲斐があったね!って思いました。お子様ランチ風のオムライスに旗まで刺さってるの、私も食べてみたい…。 お兄さんsideでも「旨い」って言ってくれてて、白川さんの料理愛が伝わってきてじんわりしました。 それにしても、次はオフショット大会とか…白川さん、苦手そうだけど大丈夫かな?笑 でもこういう日常回があるから、重くなりすぎずホッとしますね🌙