⚠️ご本人様には一切関係ありません
映画のネタバレ注意
最後注意
szk side
スマホに対するトラウマは大人になっても治ることは無かった。
僕は子供なりに自分を守ろうと、あの事を必死に忘れようとした。
大好きなあの子を失ったこと、信用していた人たちに裏切られたこと、世間が僕たちに味方してくれなかったこと、世間が僕たちを忘れてくれないこと。
でも、こんなクソみたいな世界で心の傷が治るはずもない。
sa『……チョモ、?どうしたの?』
s「……だいじょうぶ。少し、”思い出した”だけ、。」
sa『…そっか、僕に合わせて呼吸できる、?』
s「ん、…。」
電話の先のサテツの声が心にスっと入ってくる。
昔から、僕のことを見てくれたのはサテツしかいない。
大丈夫。大丈夫。
僕はひとりじゃない。
s「……ふーッ……、もう大丈夫。ありがとうサテツ。」
sa『うん。何かあったら直ぐに言ってよね。チョモは何かと隠しがちだからね。』
s「…そんな事ないし。」
sa『そんな事あるから言ってるの。チョモ、僕に秘密にしてることまだ沢山あるよね?』
心当たりがありすぎてどれのことだか全く目星が付かない。
サテツの説教モードはとてつもなくしつこいのでここらで振り切ることに決めた。
s「そんな事より、僕今大変なんだよ。なんか別世界に飛ばされた。」
sa『んぇ、???どういうこと?』
s「それは僕のセリフ。全くわかんないの。なんで飛ばされたか、どう戻るのか。」
sa『あ、もしかしてさっき電話出た人がその別世界の人?』
s「そう。今はその人たちに助けて貰ったりして何とかなってる。…けど、いざ戻るとなると方法が分からないから時間がかかるかもしれない。」
sa『ん〜〜…。わかった。僕もこっちで調べてみる。』
s「ん、助かる。…あ、飛ばされたっていうか、入れ替わったの方が正しいかも、」
sa『え、?……チョモと誰かの世界線が入れ替わったって事、?』
s「そう。僕とそっくりの顔をした人懐っこい超人気バンドのボーカルさん。」
sa『えぇ、??それまた複雑な。…そのバンド、僕たちの世界に存在するバンド?』
s「いや、それが存在してないっぽい。僕はSNSみないから分からなかったけど桐山さんが知らなかったからね。」
sa『桐山…。あぁ、あのクズか。』
サテツの声が一段と冷たくなった。
サテツは何故か桐山さんのことを嫌っている。
勿論僕もああいうSNSが生み出したクズは消えればいいと思っている。
だが、何回か言葉を交わすうちに環境さえ良ければ良き友人に慣れたのではないかと考える時がある。
そんなことをサテツに言ったらどんな反応をするのか想像も絶する。
sa『ぁ、ごめんごめん。声怖かったよね。』
直ぐにいつものサテツに戻る。
サテツは僕が嫌がることを絶対にしない。
s「別に大丈夫。てなワケで僕当分帰れないかもしれないから例の準備は一時中断で。」
sa『了解。そういえば、病院の定期検診明日だよね?僕から連絡しようか?』
s「助かる。ありがとうサテツ。」
sa『どういたしまして。じゃあ、何かあったら直ぐに連絡してね。…いや、何も無くても連絡してね。』
s「はいはいわかってるよ。サテツは心配症だなぁ。」
sa『チョモの事を大切に思ってるからだよ。』
s「………恥ずかしい奴に成長しちゃってまぁ……。」
sa『あれ、?チョモってば照れてる?』
s「うるさい。照れてないし。」
sa『照れてるじゃん。』
s「……照れてない。」
sa『…まぁそういう事にしとくよ。』
電話の向こうでクスクスと笑い声がする。
サテツのくせになんかムカつく。
気づけば先程まで痛かった心臓や苦しかった呼吸がさっぱり消えている。
…やっぱりサテツは凄い。
s「…サテツ、ありがとう。じゃあまた連絡する。」
sa『うん。身体に気をつけてね。じゃあ。』
電話を切ると少し心寂しくなった。
サテツがどれだけ僕の心の支えになっているのか実感した。
この世界は僕のことを”チョモ”として認知する人はいない。
その事実は僕の心を落ち着かせ、荒ぶらせる。
s「僕が僕じゃないみたいで、変だ……。」
誰もいない部屋でボソリと呟いた。
wki side
s「すみません、お騒がせしました。」
数十分程すぎた時に鈴木がリビングに戻ってきた。
何事も無かったようで涼ちゃんと目を合わせる。
涼ちゃんも安心した様子をみせる。
そう言えば先程よりも鈴木の顔色が良くなっている。
心身共に落ち着いているようでさらに安心する。
s「えっと……、?」
俺たちがまじまじと見ている事に不信を抱いたのか引きつった笑顔から困惑が滲み出ていた。
f「いやぁ、ほんとに元貴に似てるなぁって思ってさぁ。ふふ。ジト目とかそっくり。」
涼ちゃんナイス。
鈴木の性格上、病気やトラウマなどはあまり踏み込んで欲しくないだろう。
それを見越してか、涼ちゃんは自然な流れでテンポのいい会話にすり替えていた。
f「意識してみたら元貴に見えてきたかも。こう、何年か前の元貴に似てない?」
w「うーーーん、まぁたしかに今の元貴ってよりは少し前の元貴に似てるかも」
s「…おふたりと大森さんはバンドを組んでいるんですよね。付き合い長いんですか?」
顔をじーと見つめられるのがむず痒くなったのか少し目線を外しながら問いかける鈴木。
その頬は少しだけ赤く染っているように見えた。
w「組んで12年、デビュー10周年になるな。」
s「長いですね。」
f「まぁ長いね〜。元貴と若井と初めて会った時はまだ未成年だったもん。あ、そうそう、元貴と若井は幼なじみなんだよ〜。」
s「ッ、……。」
“幼なじみ”という言葉を聞いて鈴木の肩がピクリと反応した。
涼ちゃんもそれを見逃さなかったらしく、此方に目線を向ける。
あまり慎重過ぎても良くない。
ゆっくりと会話の軌道修正を試みる。
f「あ!そういえばこないだ若井から、僕の第一印象が最悪だって言われたんだよ〜!?”病気な木”だって!!ひどいと思わない!?」
w「んなッ、!?いや、それはさぁ、〜!」
まさかすり替える話題にそれ選ぶとは思ってなくて喉から変な声が出た。
しかも急すぎるって。
涼ちゃん、少しズレてんだよな。
鈴木は俺たちの言い合いを聞きながらくふくふと控えめな笑い声を出していた。
よかった。先程の暗い表情は無くなっている。
鈴木の笑った顔があまりにも俺たちにイタズラを仕掛る元貴に似ていて、元貴が恋しくなった。
鈴木の電話でドタバタしてしまって元貴との通話を咄嗟に切ってしまった。
もう1回かけ直すかと思ったが向こうも雰囲気が良さそうだし放置している。
元貴、今何してるんだろうな。
f「年上に失礼とか思わなかったの!?ねぇ若井ー!!!!」
まだ喚いている涼ちゃんと笑っている鈴木を横目に見ながら、愛しい元貴に思い馳せた。
o「は、離してッ、!やだッ…!助けて!!わかいッ!!、りょうちゃんッ!!」
k「……ごめん、ごめんね……大森くん。」
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