今日の気候は暖かい。
俺はいつものように海を眺める。
そう、俺の中学――私立花巻中学では絶景の海が眺められる。
大きな桜の木の下、美しい自然が毎日目に飛び込んでくる。
俺も、1年の登校初日、なんて美しい景色なんだろうと驚いた。
更に、部活終わりに見た 夕焼けに染まる空と海は最高だった。
俺はゆっくり一人で居る時間が好きなのだ。
だけど、そんな俺を毎回邪魔してくる人物がいる。
早乙女夕葉(さおとめゆうは)だ。
今日も、俺の座っているベンチに腰掛けた。
「綺麗だね〜」
「…」
俺は無視し続ける。
いつもの事だった。
「ね、無視しないでよ…?」
「ねえ」
「ねえったら…!」
「………何だよ」
俺が不機嫌気味に声を出すと、夕葉は何故か嬉しそうにした。
「やっと返事してくれた!」
「…」
俺はまた無視した。
話すのは好きじゃない。
―――でも、本当に夕葉と話さない理由はそんなことじゃない。
話したいわけじゃない。
だけど、話したくないわけでもない。
俺は複雑な気持ちになった。
「どうしたの?」
「…何でもない。俺帰る。」
俺が席を立とうとすると、ちょっと待ってと夕葉が呼び止めた。
「もうちょっと見てない?海」
「……見ねーよ」
「だって、海好きじゃん」
「俺は一人で見たい」
「____そっか。ごめん」
「…」
俺はそのまま家に帰ろうとした。
ふと振り返ると、遠くに夕葉のシルエットが浮かび上がっていた。
寂しげに揺れていた。
だけど、俺はいまさら戻れなかった。
俺はまた歩き出した。
もう振り返らないと決めて。
―――翌日の朝
俺は夕葉が居ない事を確認して、ベンチに座った。
今の季節、桜は満開だ。
鮮やかな桃色の桜___。
この桜を見ていると、いつも夕葉が俺の頭をよぎる。
「…(なんでだよ…っ)」
もう嫌なんだ。
こんな風に考えてる自分が。自分自身が。
すると、トコトコと足音が聞こえた。
その音は段々とこちらに近づいてくる。
どうせ夕葉だろう。
いつもみたいにベンチに座って___
と思っていた。
だが、俺の予想は外れた。
確かに夕葉はこちらに来た。
だけど、ベンチには腰掛けなかった。
ひとり、桜の木の下で海の方を見つめている。
「…?」
俺は不思議に思い、ずっと夕葉から目が離せなかった。
それでも振り返ってくれない。
「夕葉…?」
俺は我慢できなくて、名前を呼んだ。
返事は無かった。
こうして名前を呼んだのは初めてなのに。
すると、夕葉が突然走り出した。
校舎の方に一直線で。
俺なんかには目もくれずに―――。
「どうなってんだよ……」
俺が呟いたその言葉は、そのまま地面に落ちていく。
俺はゆっくりと歩き、夕葉のあとをつけた。
コメント
3件
了解<(`・ω・´)
やったー!新作だ〜! 夕葉ちゃん、主人公の子にかなり積極的だね〜😁これからどんな関係性に鳴っていくのかな?楽しみ((o(´∀`)o))ワクワク