気分屋投稿
なんか気分が乗らない時に書きます
猫本屋【短編集】
放課後、高校生だけがいつも立ち寄る本屋さん。
この本屋さんは、どこか不思議なオーラを纏っています。
―――
この本屋さん。
売っている本はごく普通。
古本もあれば、漫画の最新刊も揃っている。
私はマンガ大好きJK。
その名も「鹿又友依(かのまたゆい)」。
親には内緒で、放課後毎日のようにここに寄っては
気になるマンガの最新刊を爆買いしている。
今日は、マンガ「転生したら推しの彼女だった件」
の最新刊が発売される。
これは密かにウワサされているマンガで
一度読むと抜け出せない沼にハマってしまうらしい……
という話を聞きつけ
早速買ってみたマンガオタクの私。
そしたら、そりゃあもうハマってしまいまして
その言葉の意味がわかった所。
―――そしてついに最新刊発売日。
ソワソワしながら本屋にたどり着く。
古びたたたずまいのこのお店。
木製で、火事が起きたら一瞬で焼けてしまいそうな感じ。
店のカウンターには店員がおらず、黒と白の綺麗な毛並みの猫だけが
まるでこの店のボスだ、とアピールするかのように居座っている。
初めて来た時はすごく驚いた。
これではいくらでも万引きできるのでは?
そもそもどうやって会計を?と。
だけど、入ってみたら全てがわかった。
―――この店にいると、まるで異空間にいるみたいな感覚になる。
絶対おかしい。
でも、何故か自分の家みたいに安心できるんだ。
不思議に思ったけど、その日はどうしても買いたい本があり
急いで本をカウンターに置いた―――
「(……って、いつの間にか十分も過ぎちゃってる!)」
「(回想しすぎた……)」
「(よし、転カノ買うぞぉ〜〜!)」
私は例の本を手に取り、心の中でガッツポーズを決めた。
まだ残ってた…!!
んで、もうこれで用は済んだ。
早く会計して、帰ろう。
私は常連客。
きっとこの猫も覚えてくれてるはず。
私は無言でカウンターに向かう。
もちろんのこと、店員はいない。
そして自分で自分を指さし、猫相手に確認を取る。
そこで猫はうなずく。
実際うなずいてはいないが、なんだか分かってくれている気がした。
「ん、これ」
私は100円玉三枚を猫に手渡した。
猫はそれをじっくり眺め、自分の胸元へと押しやった。
そういえば、この本屋さんってめちゃくちゃ安いんだよね。
今の時代、300円でマンガを買えてしまうなんて。
そういうこともあって、私は余計ここを気に入っている。
そしてあれよこれよと猫が会計を済ませ、
「にゃ〜」
とお得意のかわいい鳴き声を披露した。
私は頭を撫でてあげる。
「ちょっと、あんた太ってきたんじゃない〜?」
「にゃ?」
「もっと動いて健康的に過ごしなさいっ!!」
「にゃぁ〜〜っ!!」
絶対嫌、と返事をした。
きっとそうに決まってる。
ふふ、かわいいんだから。
これこそ猫の特権よね。
私は一つため息をこぼし、「またね」とだけ言葉を残した。
そして店を後にした。
最後に「にゃあ」と声が聞こえたような気がしたが
振り向かずに進んだ。
「(あれ?そういやあの店の名前、なんだっけ……)」
ほぼ毎日寄っているのに、
何故か私は 毎回名前を見るのを忘れてしまう。
あの本屋さんの名前は
なんだったんだろうか。
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