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スタジオでは完全に大森が中心だった。
「ここ、もう1回合わせよう」
「涼ちゃん、この曲とこの曲の繋ぎ作ってきて」
落ち着いた声で指示を出して、全体を見渡して、音をまとめていく。
「うん」「了解」
藤澤は素直に頷いて、大森の意図を汲みながら鍵盤に向かう。
—期待に応えたい。ちゃんと元貴の思ってる音を出したい。
その一心で指が動く。
――――――
音楽をしていない時間は、空気ががらっと変わる。
「ねえ元貴〜」
楽屋のソファーに座っている大森の横に、藤澤がぴったり寄る。
「ん、なに? 」
音楽をしている時のプロの目つきとは全く違う、ちょっと藤澤を警戒しているような、でも嬉しいような表情。
「…元貴さ、ほんと可愛いよねぇ♡」
そう言ってほっぺをむにっとつまむ。
「ちょっと何?やめてよ…」
顔を赤くしながらもやっぱり嬉しそうで。
「ほらぷにぷに。可愛い〜」
「……そう、かな…///えへへっ」
照れながらもニコーっと笑う大森。
それを見て藤澤はさらに
「その笑顔反則だって。可愛すぎ♡笑」
「……涼ちゃん」
声は優しい。なのにさっきまでと何かが違う。
「なに?元貴」
藤澤は大森と目を合わせて、大森が顔は笑っているのに目が笑っていないことに気づく。
「…あんま、調子乗んないでよ?」
「……え?」
怒ってる?可愛いって言われるの嫌だったかな、と藤澤はぐるぐる考える。
次の瞬間、ぐっと距離が縮まって、
藤澤はソファーに押し倒されていた。
「も、元貴……?」
心臓がうるさく鳴る。
大森は藤澤を上から覗き込んで、低く、静かな声で言う。
「涼ちゃんの方がさ、」
「よっぽど可愛いし」
一拍置いて、視線を逸らさずに。
「……女の子の素質あるからね?」
一瞬言葉の意味が飲み込めなくて。
でも、その表情が本気ってことだけはよく伝わってくる。
「なにそれ……」
胸の奥がきゅっと熱くなる。
大森は力を抜いて立ち上がり、少し照れたように微笑んだ。
「半分冗談、半分本気、笑」
でももう藤澤の心は完全に元貴に掴まれていて。冗談だなんて思えなくて。
「ずるいよ、元貴…」
大森は優しく笑った。
「お互い、男の子でしょ」
ちょっと悲しそうな大森の表情を見て、藤澤は勝手に体が動いていた。
ソファーの傍から離れようとする大森の服の裾を引っ張って、大森を見上げた。
「……ねえ元貴」
その声がやけに柔らかくて。
「お互い男の子だけどさ、」
「元貴の前なら……」
上目遣いでちょっとだけ首を傾けて、
「女の子になれるかも」
可愛い、って言葉以外が見つからない表情だった。
大森は一瞬、言葉を失う。
心臓がドクンって鳴ったのが、自分でも分かる。
「…ほんとに?」
そう聞く声はさっきよりずっと静かで真剣で。
「じゃあさ」
「僕の……彼女になってくれる?」
藤澤はぱっと表情を明るくして、
「なれるし、なりたいっ」
ニコって笑うその顔が、あまりにも真っ直ぐで。
「ずるいよ、そんな顔」
「もう後戻りできないじゃん」
そういいながら大森も笑って。
「元貴が聞いてきたんでしょ?」
藤澤はすごく楽しそうで。
「じゃあ、僕の彼女ね?涼ちゃん」
「…うん、元貴の彼女っ」
「恋人っ」
大森の心を破壊するには充分の可愛さで。
「可愛がられる覚悟、してよ?」
「僕も元貴のこと可愛がるけどね?笑」
「でも僕は彼氏だから。涼ちゃんが可愛がられるんだよ。」
「……はいっ」
二人でにこにこしている楽屋に若井が入ってくる。
「何ふたりとも笑ってんの!」
やたらテンション高い。さすが太陽くん。
「俺も入れてよ〜!」
そう言いながら近づいてきて、ソファーに座っている藤澤の横に座る。
「ちょ、狭っ……」
藤澤が言い終わる前に若井がいつものノリで首に腕を回そうとして
「待って、若井。」
大森の声が、ぴしっと入る。
「……あの、今日から涼ちゃん、僕の彼女になったから。」
「あんまりベタベタ触んないで」
「……え?」
若井の動きが止まる。
「彼女?」
「涼ちゃんが?」
「いや、え?」
動揺が隠せない若井。
それを見て、大森は得意げに続ける。
「だってさ、涼ちゃんが上目遣いで首傾げながら」
「ちょ、元貴……」
藤澤の制止も効かず、
「『元貴の前なら女の子になれるかも』って言ってきたんだよ?」
若井の目が見開かれる。
「…それは」
大森が続ける。
「可愛すぎでしょ」
「そんなの保護するしかなくない?」
「全部話さないでよぉ〜…///」
藤澤は顔を赤らめて困ったように笑う。
若井は数秒固まったあと、
「…え、てことは」
「ふたり、付き合ったってこと!?」
「まじ!!?!?」
「ちょっと若井声でかい!」
大森が笑いながら若井を落ち着かせる。
「さっきのベタベタ触んないで、は冗談だけどね笑」
「は〜〜やば」
若井は頭を抱えながら、でも顔は笑っていて。
「これふたりが付き合ったって知ったの俺が最初?」
「そうだよ」
大森が返事する。
「え、めっちゃ嬉しい」
「おめでとうじゃん、ふたりとも!」
大森と藤澤は照れくさそうにしている。
「…で」
「俺は?」
大森と藤澤が同時に「え?」って顔をするのを見て、若井はちょっと不満そうな顔をした。
「いやいやいや」
「急に恋人同士になって、俺だけ置いてけぼりじゃん」
「若井は若井でしょ」
大森が当たり前みたいに言う。
「っそうなんだけど!!」
若井がちょっと考えて。
「じゃあさ」
「彼女の横にいてもいい、”公式に許された人”とか?」
藤澤が微笑んで、
「若井は特別でしょ」
大森も続けて、
「若井は誰よりも僕たちに近い大切な存在だから。」
若井は嬉しそうに、
「じゃあ ふたりの1番近くで騒げるポジってことで」
「それめっちゃ若井っぽいね」
藤澤が笑う。
「でしょ?」
若井が得意げな顔をする。
「彼女さん、大事にしなよ元貴。」
「めちゃくちゃ可愛いんだから。」
「言われなくても」
大森は迷いのない声で、そう言った。