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「ミランダ王女の暗殺事件は、確かに国民に衝撃を与えると思います。しかしながら、700年も続いた王家に終止符をうつ程のことではないでしょう。この10年で多くのことが変わり過ぎました。失礼ながら浅はかな王女の思いつきにより、ミラ国は一見豊かで強い国になったように見えました。でも同時に多くの危険を孕むこととなったのです。国民は今のミラ国王陛下の知世に不安を抱くと思います。これを機にキース王子殿下に王位を譲ってみではいかがでしょうか? 亡くなった王妃様は私の幼馴染です。私はキース王子を見る度に王妃様を思い出していました。王妃様がご存命ならば、ミラ国もこれ程極端な改革をすることもなかったのではないでしょうか。王妃様は控えめで奥ゆかしい方でしたから。微力ではございますが私がキース王子を支えながら、ミラ国のきりすぎた舵を戻していきたいと考えます」
突然の展開についていけない貴族が大半だが、ルアー公爵の提案に何人かの貴族が頷いていた。
おそらく、彼らはこの暗殺計画に絡んでいる。
「ルアー公爵、僕の母は姉上です。僕は亡くなった母上を想像する時、いつも姉上を見て想像していました。僕は生まれた時から姉上に育てられています。姉上はいつもミラ国のことを一番に考えていました。彼女の考えを浅はかだと思ったことは一度もありません。自分の利益を優先する貴族達とは違い、この小さな国を守るために尽くしてきました。僕がミラ国を治めるとしたら姉上の遺志を継ぎ、リリアン様やミラリネ出身の騎士と協力して国を守っていきたいと考えます。公爵の意見は些か出過ぎているように感じますし、姉上への侮辱は王族侮辱罪に値します。それから、姉上の暗殺に関してですが、しっかりと調査しましょう。僕はこの王女暗殺がエスパルの侵略とは無関係なものと考えています。先程から数人の貴族が、まるでルアー公爵の口裏合わせをしたかのような反応をしています。シアン侯爵、スルガ伯爵、マゼンダ子爵あなた達のことを言っています。あなた達以外の貴族は皆まだ王宮に暗殺者が潜んでいるのではないかと怯えていますよ。もしかして、暗殺者が1人だと知っていたのではないですか? 直ちにルアー公爵をはじめとする4名を王女暗殺の疑いで拘束してください」
先ほどまで顔を覆い尽くして泣いていたと思ったキースは怒りを抑えるように立ち上がり、横に控えていた騎士達に指示をした。
私は予想外の展開に驚いていた。
キースは伸び伸びと育てたから、王族としては優しすぎる純粋な子に育ってしまったと思っていた。
まだ12歳の子供だと思っていたのに、彼はよく周りの人間を見ている。
姉の死を悲しみながらも、しっかりと現状を観察する冷静さを持っていたのだ。
「キース王子殿下、誤解です。我々はミランダ王女の暗殺とは関係ありません」
ルアー公爵が必死にキースに訴えている。
その時、会議場の扉が開いた。
「ミラ国王陛下、ルアー公爵邸よりエスパルの子供を確保しました。父親と亡命してきたところを、ルアー公爵に捕まったと証言しています。息子を人質にとり、王女の暗殺を唆したものと思われます」
王宮の騎士達がエスパルの男の子を保護してやってきた。
「父ちゃんはどこだよ。この人殺し!」
エスパルの子はルアー公爵に飛びかかりそうな勢いになったところを騎士に抑えられた。
「あいつの父親を殺したのは俺です」
エスパルの子が泣き叫ぶ姿を見て、エイダンが苦しそうに顔を歪める。
「あなたは私を守るという自分の仕事をしただけです。罪悪感は持たないでください。私達もそろそろ参りましょうか」
私の合図とともに、エイダンは私を抱えて天井のタイルを外し会議場の中央部へと降り立った。
「姉上。生きていたのですか。本当によかったです」
先ほど、堂々と沙汰を下していたキースが私を見るなり泣きながら抱きついてきた。
私は愛おしさが込み上げて、彼を思わず抱きしめた。
貴族達が私が生きていたことと、私の天井からの登場に驚きだす。
「実はこの部屋の隣で、裁判官達が皆さんの証言を聞いてくださっていました。これから、貴族の皆様と国王陛下と共に王女暗殺未遂の犯人への判決を下して頂こうと思います」
私は補佐官に合図して隣の部屋から3名の裁判官を連れてきてもらった。
「ミラ国王陛下、先程ルアー公爵邸からミランダ王女暗殺計画の証拠書類が発見され証拠として提出されました。我々はこの証拠書類を採用し、人質となったエスパルの子の証言を採用します。王女暗殺未遂は極刑です。ルアー公爵、シアン侯爵、スルガ伯爵、マゼンダ子爵の領地を召し上げ、爵位を剥奪し処刑するのが妥当かと思われます」
犯行を計画した4名の貴族達は血の気が引いている。
通常裁判は何日にも渡って開催されるが、今は緊急の臨時裁判として行なっている。
ルアー公爵を中心として自分の私利私欲を優先した計画だが、王家だけでなくエスパルやミラリネを侮辱した犯行は早めに処罰を下さないと大きな問題になる。
「彼らは、罪もないリリアンにも罪を被せようとしました。擁護できる点は何1つとしてないかと思います」
私の言葉に国王陛下は大きく頷いて、王女暗殺未遂事件の処分が確定した。