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「どうして……殺さなかったの?」
森を抜けた後、リリスがぽつりと聞いた。
「ん?」
「だって……あの人たち、また来るかも……」
もっともな意見だ。
「まあな」
俺は空を飛びながら答える。
「でも、だからって全員焼き殺すのは違うだろ」
「違う……?」
「俺の気分的に、な」
正直、それ以上でもそれ以下でもない。
「……変なの」
「よく言われる」
リリスは少しだけ笑った。
それを見て、少し安心する。
「お前さ」
「うん?」
「なんで狙われてたか、ちゃんと話せるか?」
しばらく沈黙。
風の音だけが流れる。
やがて――
「……村にいたの」
静かに語り始めた。
「でも、魔力が強すぎて……怖がられて……」
「追い出されたのか」
「うん……」
拳を握る感覚がある。
ドラゴンの手でも、ちゃんと“怒り”は伝わる。
「そのあと、捕まって……」
「商品、ね」
「……うん」
短く答える声は、もう震えていなかった。
慣れてしまったのかもしれない。
それが、余計に腹立たしい。
「なあ」
「なに?」
「これからどうする」
「……え?」
「逃げ続けるのか、それとも」
少し考えて、言う。
「変えるか」
「変える……?」
「お前が追われる側じゃなくて、追う側になる」
「そんなの……無理だよ」
即答だった。
「無理じゃない」
俺は言う。
「力があるなら、使い方次第だ」
「でも……」
「教えてやるよ」
翼を広げ、加速する。
「全部」
そのときだった。
ズンッ、と空気が歪む。
「……またか」
前方に、魔力の塊。
さっきとは比べ物にならない。
「しつこいな」
現れたのは、一人の男。
黒いローブ。
だが、その密度が違う。
「上位魔導士ってとこか」
男は笑う。
「その娘は高額商品でね。簡単に諦めるわけにはいかない」
「だろうな」
俺は前に出る。
「リリス、掴まってろ」
「う、うん……!」
「さて」
男を見る。
「第二ラウンドだ」
戦いは、一瞬だった。
相手の魔法は強力だった。
だが――
「遅い」
俺の方が、圧倒的に上だった。
炎がすべてを焼き払い、男は地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
「これで終わりにしろ」
喉元に爪を突きつける。
「次は、加減しない」
男はしばらく睨んでいたが――
やがて、笑った。
「……化け物め」
「そうだな」
否定しない。
「でも」
少しだけ、口角が上がる。
「お前よりはマシだ」
そのまま、男を気絶させた。
「……これが」
リリスが呟く。
「力……」
「ああ」
振り返らずに言う。
「どう使うかで、意味が変わる」
そして、決めた。
「このまま街に行く」
「え!?」
「逃げてもキリがない」
翼を広げる。
「だったら、正面から潰す」
その言葉に、迷いはなかった。