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城壁都市は、混乱していた。
当然だ。
上空に、ドラゴンが現れたのだから。
「門を閉じろ!!」
「弓兵、構え!!」
怒号が飛び交う。
だが――
「やめとけ」
俺はそのまま、ゆっくりと降下する。
ドォン……!
地面に降り立つ。
その瞬間、誰も動けなくなった。
「……」
沈黙。
張り詰めた空気。
「……話をしに来た」
低く、言う。
それだけで、空気が震える。
「敵じゃない」
兵士たちは顔を見合わせる。
信じるわけがない。
それでも――攻撃は来ない。
「代表は誰だ」
数秒の沈黙の後。
一人の男が前に出た。
豪華な衣装。
「私が、この街の領主だ」
「ちょうどいい」
俺は言う。
「取引しよう」
「……ほう」
領主は目を細める。
「内容は?」
「こいつを守れ」
背中のリリスを見せる。
ざわめきが広がる。
「代わりに」
一歩踏み出す。
「奴隷商人は俺が潰す」
「……信用できんな」
当然の反応だ。
「だろうな」
あっさり認める。
「じゃあ、証明するか」
口を開く。
炎が灯る。
兵士たちが一斉に構える。
だが――
俺は、空に向けて撃った。
ゴォォォォォ!!
雲を貫き、空を裂く炎。
誰もが言葉を失う。
「……これでわかっただろ」
静かに言う。
「俺が本気出したら、この街消える」
沈黙。
そして――
領主が、息を吐いた。
「……確かに」
ゆっくりと頷く。
「その上で、交渉する気があるのか」
「ああ」
「なぜだ」
その問いに、少し考えて答える。
「気分だな」
「……は?」
「助けたいと思った。それだけだ」
領主はしばらく黙り――
やがて、小さく笑った。
「……面白い」
そして言う。
「お前は、本当に魔物か?」
その問いに、俺は笑う。
「元・社畜だよ」
意味は伝わらないだろう。
それでもいい。
「で、どうする?」
領主は答える。
「――取引成立だ」
その瞬間。
この街との関係が、始まった。