テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#歌詞ドッキリ
67
カンヒュ好き
1,314
#日本受け
白狐こはく@カンヒュ民
685
この物語に、政治的意図・戦争賛美の意図はありません。また、現実とは関係はありません。
旧国が出てきます。
グロテスクな描写があります。
史実・原子爆弾の描写があります。 書き手の妄想が大幅に含まれているので、史実に忠実ではない部分があります。
それでもいい人は、ご覧ください。
私が起きると、隣に勝と麗子が寝ていた。すさまじい寝相である。家ではないに加え、こんな安全かも分からないところに寝ているというのに。
…今は、この子達の為に、食料と水だな。
そんな事を思っていると、うぅ…と声がした。
「おはよ…」
「…。」
少しだけ微笑んでみる。起きたのは麗子で、ふわあ…と可愛らしくあくびをした。それに呼応するように、下からうなるような声が聞こえた後、おはよう…とかすれた声が聞こえた。麗子にしたと同様に微笑む。そうすると、えっ…と困惑の声をもらした。
「陸の…にーちゃん…うで…どうしたん…」
「…、」
私は、寝る前に回収した、千切れた腕をぷらぷらと揺らしてみせる。
「そっ、か…」
暗い顔を浮かべる勝に、私は左頬をムニッとつまむ。
お前が気にすることではない。
巻き込まれた子どもが、責任を感じるべきではない。
私が自分で決めたから、こうなっただけだ。
「ん゛〜!」
「ふふっ…ぷっくくく…」
それを見た麗子が、必死に笑いを抑えている。
私は、彼らが大丈夫そうだったため、つまんでいた左頬を離し、地面の土に指で単語を書いた。
『たべもの みず ひつよう』
「あっ…そう、だね…」
「ん゛…!」
「どっか、避難所というか…そういうの、あるんやない…?やったら、そこに…」
私は、頷き、また、地面に指を走らせた。
『どこにあるか しっている?』
二人とも、黙りこくる。どうやら、知らないらしい。
『ひろしま せきじゅうじ びょういん
ここから 1、5キロほど 』
「…遠い、ね。」
「…うん、行けない…かも…」
困り果てていた、その時。
「誰か、そこにいるのか!」
大声が聞こえる。男性のようだ。
「…!麗子ッ!俺から見える位置にいろとあれほどいっただろうが…!」
「ご、ごめん…なさい…榊(さかき)のおじちゃん…」
榊のおじちゃん、と呼ばれた男性は、麗子の方に駆け寄って来る。だが、その時に二人、傍にいることに気づいたようだ。
「坊主…と、国の化身様か…坊主、名前は」
「…田口…勝…」
「そうか、坊主。あっちにお袋がいる。行くぞ。お前は背負って連れてける。ただ…」
そう言いかけ、榊は口をつぐんだ。大体言いたいことは分かる。
『置いていけ 今回ばかりは死ぬ』
「…そうか。」
『そっちにあんたら分の食料は揃っているか』
「ああ、ちょびっとだがね。」
『なら良かった 色々と気をつけろ』
「分かってる。…優しいな、アンタは。」
私は、書いた文字を消しながら 首を振り、勝の背中を軽く叩く。
「…うっ…」
「ほら、行くぞ、坊主。麗子もだ。」
「えっ…り、陸さん…は…?」
「回復してから、行くってさ。」
「 い、いや!嘘だよ!絶対嘘でしょ!」
「…ッ」
「…事情だ。大人の事情ってのが、あるんだよ。」
榊は、麗子に圧をかける。私は、静かに頷いた。
「…ぅ…っう…」
「…ほら、行くんだ。」
彼は、勝を背負う。そして、麗子の方に手を伸ばし、握るように言った。
「うっ…ぐ…ひっぐ…いや…いやっ…!」
嫌だという麗子に、榊は、感情がぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような表情で、歯を食いしばる。
「今のうちに、さよならって言っとけって、言ってんだよ。」
「やだよぉ!死んじゃう…っ、連れて行ってよぉっ!」
私は、麗子の方を見やる。麗子は、同意を求めるような目で、こちらを見ていた。
…私は、静かに首を横に振った。
「だ…め゛だ。」
無理矢理声帯を震わせ、拒否する。
「……っ」
「先に、行きなさい。」
「…ほら。」
榊は、優しげにそう言い、手を握った。
麗子は、涙を浮かべながら、手を握り返す。
「…さようなら。」
「…ひっく…また…ね…またっ゛…ねっ…?」
確認するように、また会えるよね、とでもいうように何回も、何回も言う。
私は頷き、手を振った。
「…悪ぃな、家のお嬢が。」
「…ぃ゛や。」
「じゃあ…さようなら。」
勝は彼の背中で、じっと私を見ている。少しだけ、手を振った。
麗子は、ぐずりながら、大振りに手を振った。
ついに、彼らは見えなくなった。去り際、榊は昨日…8月9日に、長崎にも「ピカドン」が落ちたといった。それも、ここよりも強い物が。
驚いた。そんなに日にちが経っていることにも、ピカドンという兵器が複数あることにも。
…怖くて、恐ろしくてたまらない。
私が死んだ時。この国土は、元の形を保っているのだろうか。父様方は、大丈夫なのだろうか。
心配事ばかり思い浮かぶ。
…今日は、色々と疲れてしまった。
私は、そこに寝ころぶ。そうすると、疲れからか、痛みからか、はたまた出血からか…。
私の意識は、どこかに沈んでいった。
コメント
1件
読み終えて、しばらく動けませんでした。「先に、行きなさい」と静かに首を振る陸さんの姿が、ずっと胸に残ってます。巻き込まれた子どもに責任を負わせないための優しさなんだろうな、と思うと切ない…。長崎の話を聞いて震える場面も、時代の重さがぐっときました。次が気になります。